2016.02.05

【新世紀の逆オイルショック】石油価格の下落はイノベーションを迫る警鐘か?


新年のご挨拶が遅れましたが、本年も宜しくお願い致します。
経済何でも伝道師、ピタゴラです。


今年も、前を見て、ただ前を見て進んで行こうと思います。


さてさて、2016年第1弾はですね、昨年末あたりから何かと市場を賑わせる、新時代のオイルショックとも言える「逆オイルショック」を取り上げようという次第であります。

幅広い石油(オイル)の恩恵


まずは、おさらいがてら、石油(オイル)というものが、私たちの生活のどういった場面で重宝されているか、石油のおよその利用先割合を見てみましょう。


■工場や家庭などの熱源:4割
■自動車や船舶、飛行機などの動力源:4割
■洗剤・プラスチックなどの化学製品の原料:2割


もはや私たちの暮らしは石油なしでは営めない程に、人間の生活のあらゆる分野で石油が寄与しているということは、ここで改めて意識しておきましょう。

石油は当然スゴイ。が、その採掘や生産がシンドイ。


ところで、人間の生活にこれだけ大きく貢献している原料が、どのように発見されたかご存知でしょうか?


その歴史は数億年前まで遡ります。

そもそも、石油がどう生成されるかを流れで説明すると、古代の生物たちの死骸が海底や湖底に堆積し、その大部分が化石と化し、ケロジェン(※化学構造は不定)と呼ばれる物質となり、長い間、地熱と地圧の影響を受け続けて熟成された末に、ようやく石油に変化していくのです。
ということは当然、それはものすごい深い地中にある訳で、特に昔は採掘技術もそれほど進歩していなかったので、石油の最初の発見というのは地質に染み出したものを、軽く目視した程度だという説が有力です。
その後、時を経るにしたがって、探索・採掘活動自体の質も年々上がっていき、現代においては、最新の技術を駆使して人工衛星で地表の様子を探り、音波探査や地震探査を行い地層の様子を調べたうえで、コンピュータにかけて分析するほどまでになっています。

ちなみに、井戸を1本掘るのに、陸上からでは5~10億円、海上からであれば30~50億円ものコストがかかると言われています。
そして、仮に100本掘ったところで、石油が出るのは2~3本だとも言われていますので、相当な投資金額が必要になってくることが分かりますよね。


普段、何気なく利用されている石油は、そうそう簡単に生産されているものではないということは押さえておきたいところです。

1970年代に起きたオイルショック


では、1970年代に世界中を混乱の渦に巻き込んだオイルショックを振り返ってみます。

オイルショックというのは、平たく、石油の価格が高騰してしまう事象を言いますが、基本的にテクノロジーの進化も手伝えば、石油の採掘量は増えていき、供給が増えて、価格は下落傾向に移っていくはずですが、逆に価格が高騰してしまうというのはどういうことなのでしょうか。

普通に考えると、有限な資源で採れる量が限定されている(需要に対して供給が少ない)から、価格が上がってしまうというイメージですが、事はそう単純ではありません。


その裏には、戦争(国どうしの利害対立)が絡んでいた訳ですね。

1973年に第四次中東戦争(→イスラエルとエジプトやシリアをはじめとするアラブ諸国との間で行われた中東戦争のひとつ)が勃発し、これを受けて、石油輸出国機構<OPEC>加盟産油国のうち、ペルシア湾岸の6カ国が原油公示価格を引き上げることを発表しました。
また、アラブ石油輸出国機構<OAPEC>が、石油戦略の一環で原油生産の段階的削減を決定したのも、このタイミングです。
さらに、OAPEC諸国は、イスラエルが占領地から撤退するまで、イスラエル支持国(アメリカ合衆国やオランダなどの欧米諸国)への石油禁輸という経済制裁を実施することを決定し、最終的には、1974年1月より原油価格を5.12ドルから11.65ドルへ引き上げることになった訳です。

なんと値段がいきなり倍ですよ、倍。
石油輸入国はたまったもんじゃありませんね。

いくら戦争が絡んでいるとはいえ、こういったケースにおいて、持たざるものは圧倒的に不利な立場に立たされます。
先進諸国を中心に、石油をふんだんに用いてきたそれまでの生活レベルを保つのに、2倍のコストが掛かるということですね。
例に漏れず、当時の日本もそうでした。
石油不足の影響で物資が失われることを消費者が懸念し、“トイレットペーパー騒動”などのトラブルも引き起こされました。
“トイレットペーパー騒動”は教科書に載るほど有名な事例で、2時間のうちにトイレットペーパー500個が売り切れたと言います。

そして、現在は石油の価格が下落している。なんで?


日々の経済ニュースをチェックしている方であればご存知かと思いますが、現在は石油価格の下落が続いていますよね。
流れとしては、オイルショックの逆ですね。
言わば、逆オイルショックです。

これは単純に考えて、石油の供給量が需要量を上回っているから価格が下がっていく訳ですが、その内情もそこまでシンプルではありません。

先程も示したように、石油を取り巻く経済環境は、ただ単に石油のみの効用内でのお話に収まっておらず、国の利害が広く絡んでいます。


今回の石油価格下落というのは、中国やインドをはじめとする新興国の経済発展により、世界中の原油需要が増加していく中で、リーマンショック後も上昇し続ける石油の価格高騰に対応するために、アメリカなどの石油需要側が、石油以外の燃料への代替が困難な航空機や自動車分野を除いて、比較的価格が安定していた石炭や天然ガスへの転換を進めたことに、端を発しています。

さらに、航空機や自動車分野においても省エネルギー技術の開発が進んだことから、先進国の石油需要が減少に転じていき、中でも例えば、主にアメリカで開発生産されているシェールオイルの勢いが顕著であり、2008年には約500万バレル/日だったものが、6年後の2014年には約800万バレル/日にまで拡大し、アメリカは半ば石油の自給が可能な国になった訳ですね。《※1バレル=約160リットル》
これが、俗にいう『シェール革命』です。

つまるところ、アメリカが石油依存から脱却する動きを見せているという意味で、中東VSアメリカ(その他先進諸国)の構図が垣間見えますね。

そして、こういったトレンドが勢いを殺すことなく続けばどうなるかというと、石油の供給過多です。
よって、石油価格が下がってきているということになります。

これが、現在の石油価格下落のおおまかなカラクリです。

最後に

石油の今後


皆さんもご存知の通り、中東にはサウジアラビアやイランなどの石油産出国が多くあって、基本的には中東全域での戦争や政治経済の行方が石油の今後を大きく左右するというのは疑う余地のない事実です。
そもそもの石油資源の価値が相対的に落ちてきているということもありますが、まずは中東の情勢がしっかり落ち着くまでは価格下落が続くとの見方が強いです。


一方で、新エネルギーの発展と活用がどう関与するかも注目すべきで、単純に移動分野だけを考えても、電力・水素自動車、ドローン、リニアモーターなど、交通インフラは徐々に石油に頼らない様相を呈してきていますね。

冒頭でも述べたように、石油は数億年前から地底に積もって出来た資源ということもあって、そんないつ失われるか分からないものを原動力として生活基盤に据えるのは大きなリスクが伴いますし、また、石油をフックに中東諸国に強気な交渉を続けられてしまうような構造が国際経済的にはリスクそのものだということを、アメリカをはじめとした先進諸国はとっくに気付いている、ということは容易に想像できますよね。


いずれにせよ、新世紀に突入してからというもの、石油が産業の主役を担う時代は終焉しているように見えなくもないですが、逆に人工石油を大々的に製造販売できるようになった場合などは、また新時代を牽引するリーディング・カントリーが生まれることになるかもしれません。
このあたりはイノベーションが起こる分野と角度次第だといったところでしょうか。



総じて、石油というのは世界経済を揺るがす大因子でもあるので、石油とその周辺の動向をキャッチアップすれば、ワールドワイドな経済動向も掴みやすくなることが多いと思います。
是非とも注視してみてください。



今回は、以上で。
ピタゴラでした。





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