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東京都荒川区は日暮里。
そこは、ほのかに郷愁を誘い、文化花開く街。
“一日中過ごしても飽きない里”という意味で、日暮里(日暮らしの里)と名付けられたほどに、江戸時代には高台からの景観がすこぶる評判の景勝地となり、花見、月見、夕景を嗜み、虫の音を聞く文人たちが集ったという。
/NIPPORI-EKIMAE
すっかり秋めいて涼風の心地良い日暮里駅で、黒船ガールを待つ。
やがて姿を見せたのは、176cmの長身にプラチナブロンドのショートカット、ブラック&ゴールドのスタイリッシュなグラスが印象的な、ケイリーン・フォールズ。
ミネソタ州出身の北欧系アメリカ人で、年齢は26歳。
―――ケイリーンです。よろしくお願いします。
赤いアイシャドウに縁取られた知的な眼差しは、清涼感があり親しげである。
「日暮里は初めて?」
―――はい!日本の古い文化が好きなので、楽しみにしてきました!
「じゃあ、とりあえず谷中かな」
早速、日暮里駅の西口から谷中方面へ歩く道すがら、大きなガラスのショーケースに並べられた金魚鉢のような煎餅入れが一際目を引く、老舗の煎餅屋に遭遇。
そこで、ざらめ煎餅に、海苔煎餅に、ごま煎餅にと、ケイリーンが五月雨式に目を輝かせたので、有無を言わさず何枚か購入。
それらをホクホク顔でボリボリ頬張りながら、すぐ近くにあった佃煮屋もすかさず覗く。
―――佃煮って、おせちみたいな味ですか?
「まあ、そうだね。魚とか貝とか海草を、砂糖と醤油とみりんで煮詰める感じ」
―――私、今年のお正月に、おせち作ったんですよ。
「お、スゴいね。和食好きなの?」
―――大好きです。一番好きな食材はタコで、たこわさとか作りますよ。
「うわ、最高」
そんな具合で、他愛ないことを話しながら、谷中商店街をプラプラ。
全長170mほどの短い通りだが、昔ながらの個人商店を中心に約70店舗がギッチリと軒を連ねている。
―――あ、猫がいますよ!
見上げると、屋根の上、ところどころに猫の置物が。
―――可愛いですよね。今もロシアンブルー1匹と一緒に暮らしてます。
お店の人に聞いたところ、谷中銀座は猫の街としても高名らしく、2008年には猫のストリートファニチャーが商店街のいたるところに設置され、観光地化にも一役買ったのだとか。
こりゃ猫様様でごわす、みたいな流れで、夕日を拝む名所として知られる階段“夕焼けだんだん”を昇り降り。
そこから谷中銀座方向を見ると、ずいぶん清らかな夕焼けが拝めるという谷中の定番スポットである。
なお、階段の名前は一般公募で選ばれたもの。
それから少し歩を進め、吸い込まれるようにして入ったのは、軽食屋の『花家』。
―――レトロで素敵ですね。
「渋いよね。ていうか、ラーメン、あんみつ、ジャンボ餃子って、メニューが割とカオス」
さて、すいかじゅーすでリフレッシュする彼女の日本在住暦は、およそ3年半。
ミネソタ大学でイラストとデザインを学び、卒業後はアルバイトで日本に行く資金を貯めつつ、インターネットで日本のデザイン事務所の就職口を見つけてやってきたという。
現在は、東京のデザイン会社で働きながら、タレント活動も行っている。
「なんで日本に来ようと思ったの?」
―――高校生の頃に『花より男子』のドラマにハマっちゃって。嵐の松本潤、マツジュンの大ファンだったんです(笑)そこから、ドラマに出てくる日本文化にも惹かれて、独学で日本語を勉強して、もう絶対行くぞっていう意気で来ました。
「デザイン事務所では、どんな仕事を?」
―――主に商品のロゴやパッケージをデザインしています。イラストを描くこともありますよ。
「クリエイターだ」
―――自分で何かを創るのが好きなんです。
「芸能活動を始めたきっかけは?」
―――テレビ番組が日本に来た外国人に取材したいって言ってるけど出ない?って、たまたま友人が誘ってくれて、実際出てみたら、とても楽しかったことがきっかけですね。それで、テレビの仕事をもっとやりたいと思って事務所のオーディションを受けて、所属して、という流れです。
「なるほど。どう、二足のわらじは」
―――まあ、楽しいですよ。デザインの仕事も好きだし、タレントの仕事も好き。もう毎日、時間が足りないって感じですけど、会社の理解もあって実現できているので、社長や同僚の皆さんに感謝ですね。
てなことで、働き方にもガッツリ未来を感じたところで、日暮里駅前からバスへと乗り込み、次なるレトロモダンへ。
向かうは、東京最古のコリアンタウン、三河島である。
◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ
アメリカ、ミネソタ州出身。デザイン事務所で働く傍ら、タレントとしてテレビ番組などに出演。その他、ドラマ台本の英文翻訳も手掛けている。