2017.10.06

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.7 (4/4)




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16:30 │ 中野駅/ポップカルチャーのプリズム

バスストップ


/NAKANOEKI





池袋を威勢よく発進したバスは、終着地の中野駅へと往く。







―――あ!中野サンプラザだ!あそこって、よくアイドルがコンサートしてるよね?



バスの中から中野のシンボルタワーである中野サンプラザを見つけ、サブリナがはしゃぎ出す。

中野サンプラザ

中野サンプラザは2022年に解体される予定



「ハロープロジェクトのアイドルのコンサートとか、結構やってるよね」

―――そうだよね!!私、アニメ『しゅごキャラ!』のテーマソングを歌ってた、ハロープロジェクト所属のBuono! が大好きで、それでアイドルになりたいと思って日本に来たくらいだから。

「じゃあ、サブリナにとっては聖地だね、ここ」


サブリナ



それから、中野駅に来着した我々は中野ブロードウェイを見据え、JR中野駅北口正面に伸びるサンモール商店街を突っ切って進む。



中野ブロードウェイとは、1966年に中野駅北口開発の一環として開業した複合施設で、1970年代初頭には東洋一のビルとも称され、居住スペースには、ジュリーこと沢田研二や元東京都知事の青島幸男、個性派俳優の岸辺一徳などの著名人が住んでいたことでも知られる。






―――何ここ!面白い!ゴチャゴチャしてて、いろんなモノがある!




“まんだらけ”のおかげで、サブカルのイメージが強い場所だが、実際はヘアサロン、ブティック、スーパーマーケットなど、生活用品を取り扱う店舗も多く、地下1階から地上4階まで、種々のショップが彩度高くギッシリ入っている。


中野ブロードウェイ



1960年代開業時以来の個人商店から、ビットコイン交換所といった超現代的なサービス事業者までが混在する、実に多様なカオス空間。
半世紀の歴史を有しながらも丸ごと改装することはなく、現代アートやテクノロジーをも取り込みながら、昭和の趣をしっかり感じさせる離れ業はあっぱれだ。
現在ではマニアはもとより、外国人の人気観光スポットになっていて、年間来客数は約1,000万人という繁盛っぷりである。






さて、キョロキョロと落ち着きのないサブリナと共に、セーラームーンのグッズがたくさん取り揃えられているという、“MANDARAKEぷらすちっく”を目指して4階へ。



すると、サイバーチックな店内に、ダウンライトに照らされた赤い鳥居があるのを発見。

サブリナ

鳥居は中野ブロードウェイの新名物



この鳥居は、“MANDARAKE 変や”という、アニメ、漫画、特撮ヒーロージャンルのヴィンテージグッズ専門店のもの。

そこでは、ウルトラマン、仮面ライダー、鉄人28号、オバケのQ太郎、ゲゲゲの鬼太郎にDr.スランプなど、根強く圧倒的な人気を誇るキャラクターグッズをこれでもかと拝むことができる。





そして、いよいよお目当ての、MANDARAKEぷらすちっく。

サブリナ



ここで、サブリナは本領を発揮し、狂騒スタート。



―――うわ!これ持ってない!!欲しいよ~!!!でも高い~!!!!





叫ぶ、喜ぶ、悩む。
喜ぶ、悩む、叫ぶ。
悩む、叫ぶ、喜ぶ。
叫び、喜び、悩み、ショーケースにへばりつくこと、小一時間。





彼女の爆買いモードの制御が不能だったことは、言うに及ばず。


サブリナ



ひとしきりの買い物を完遂したサブリナと、建物内のレトロな喫茶店で休憩。




「戦利品はどんな感じ?」

―――セーラームーンのコンパクトと時計買った!あとね、『カードキャプターさくら』のグッズもゲット!日本のオタ友にあげるんだ~。


中野ブロードウェイ



「中野ブロードウェイは、日本一セーラームーンのグッズが揃ってる場所だと思うよ」

―――そうだよね!いいとこ教えてもらった!ありがとう!これから通っちゃいそう!




悦に入りながらメロンソーダを吸い上げるサブリナだったが、さらに面白いことがあったと報告してきた。




―――今日の私のファッション、セーラームーンのTシャツにスカートじゃないですか。そのせいで、店にいたフランス人の女の子に睨まれちゃいました(笑)

「そのTシャツが欲しかったのかな」

―――羨ましさと、私の方がセーラームーン好きなのにっていうライバル心じゃないかな(笑)

「にしても、海外のお客さんが多かったね」

―――多かったし、皆、買いまくってましたね。なかなか来るチャンスないから、必死なんですよ。気持ちはスゴい分かります。




なるほど、こういった異国の者同士のショッピング小競り合いは割とよくあることで、非日常の場で買い物欲に火を点けられたら最後、闘争本能も剥き出しになりがちである。

まあ何にせよ、日本のポップカルチャーがグローバルに受け入れられていることは、非常に喜ばしい。
一方で内心、このご時勢、何がヒットするか分からんねぇ、そもそもポップなカルチャーって何じゃ、というところが強めに引っ掛かるのだが、あえて目をつぶるとする。




そんなことで、中野ブロードウェイを後にして帰途につく最中、サブリナに聞いておきたかった質問を投げかける。

サブリナ



「いずれは、トルコに帰ろうと思う?」

―――ううん、思わない。日本にずっと住み続けるつもり。トルコの家族にも、将来日本に呼び寄せるからねって話してるの。東京から1,2時間あたりのところに一軒家でも買って、家族で住むのが目標。

「なんでそこまで?」

―――日本が好きだから。それだけ。もうここしかないって感じ。もちろん故郷も大事だけど、それ以上に日本が好きって気持ちが強いから。

「じゃあ、とりあえずはこのままタレント活動だよね」

―――そう。まあ、トルコがテロに遭ったときに、“今トルコがヤバいからトルコ人を出演させるのはちょっと……”とかって言われて仕事がダメになる、みたいな理不尽なこともあったけど、とにかく表現することが好きだから。日本で一番有名なトルコ人タレントになれるように頑張るよ。


サブリナ




そう言って、たくましく大手を振り、麗しのオタクは雑踏の中に消えていった。




Be anything you wanna be.
And be many things.

一瞬そんな言葉が、脳裏をかすめるのであった。






◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ





SABRINA SAYIN

サブリナ・サイン

トルコ出身。中学生の頃にアニメ『美少女戦士セーラームーン』を観て衝撃を受け、高校卒業後の2011年に来日。2015年からはアイドルグループ“恥じらいレスキューJPN”のメンバーとして約2年間活動。その後もモデルや女優として活躍の場を広げている。Journeys in Japan(NHK)、「キシリクリスタル」CMなど出演実績多数。







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