2017.09.29

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.7 (3/4)




 BACK NUMBER



14:30 │ 哲学堂公園入口/やんごとなき魑魅魍魎ゾーン

バスストップ


/TETSUGAKUDÔKÔEN-IRIGUCHI




バスは南長崎三丁目から西へと走り、豊島区から中野区に入る。


目的地は、哲学堂公園。
その名もさることながら、かつてトキワ荘で暮らした漫画アーティストたち、手塚治虫や藤子不二雄も、創作活動に煮詰まれば散歩に出向いたという、幾分ノーブルな公園である。






哲学堂公園入口に到着し、園内に入ると早速、池の真ん中に佇む奇妙な鬼の像、鬼燈(きとう)を発見。

サブリナ



―――コレ何ですか?鬼?面白い顔してる。



鬼燈の説明書きには、『唯物園の狸燈に対した燈籠で、人の心中に宿る鬼にも良心の光明は存することを寓している』とある。

なるほど、ややこしいが、納得感は凄まじい。




さて、この公園は、東洋大学の創始者でもある哲学者、井上円了博士が明治39年に作ったもの。
井上博士は日本有数の妖怪研究家としても有名で、「明治維新の妖怪博士」の異名を持つ人物であり、“世間の人々が哲学を学ぶための場を作る”と奮起し、全財産を投じて開設したという。


なお、雰囲気としては、とにかく広大な割に人は少なく、空間は極めて平穏としている。
ベンチの上で昼寝をしている猫がいたりと、一見すると、ごく普通の朗らかな公園だ。

サブリナ

昼寝中の野良猫を猫可愛がる




だが一方で、井上博士が駒込に住んでいた際に、その下に幽霊が出ると大騒ぎになったいわくつきの木、幽霊梅らしきものがあったり、“夜中に心中した男女の霊が出る”“血を流す桜の木がある”といったような噂が多数ある都内有数の心霊スポットでもあり、オカルト的要素を持ち合わせる公園なのだ。




ここで、そもそもサブリナはその手のやつを信じているのだろうかと、ふと思う。



「トルコに幽霊っていう概念はあるの?」

―――ありますけど、日本ほどは浸透してないです。トルコでは幽霊が怖いとかよりも、人から呪われるのを防ぐような魔除けの風習の方がポピュラーだったりしますね。

「藁人形を作って人を呪うみたいな日本文化はあるけど、そんな感じ?」

―――そうですね、呪いを書いた紙を呪いたい家にこっそり置いたりするんですよ。ムスカと言われるものなんですけど。





くわばらな談話を引き連れ、やがて、公園の正門となる哲理門に。

サブリナ



ここは通称“妖怪門”と呼ばれていて、片方に天狗、もう片方に幽霊の木彫の像が置かれている。

ちなみに、天狗は物質界、幽霊は精神界の象徴として不思議や不可解を表しているのだとか。

妖怪門にある幽霊像

園内NO.1オカルトスポットの妖怪門にある幽霊像



すると期せずして、幽霊像を興味深げに撮影していたサブリナが絶叫。





―――ギャ!!

「え、どうしたの?」

―――なんか今、イヤな空気感じた!幽霊像が怒ったのかも!ごめんなさい!もう撮らないから怒らないで!

サブリナ



やや頬を緩ませつつ歩いていると、すぐに“恐怖百物語”という貼り紙に出くわし、公園でそういった催しがあったことを知る。




そこでサブリナは一転、静かに呟いた。


―――私、過去にお寺で行われた百物語のイベントに参加したことあります。話を聞いてるうちに、どんどん冷たくなってきて。今も、鳥肌が立ってきちゃいました。

「幽霊像でも何か感じてたし、霊感が強いのかもね」

―――かもしれない!初めて行った場所で、なんかイヤだって思ったこと結構ありますから。





まあ、霊感的なものがあるかないかで言えば、彼女は完全にありそうではある。
アリ寄りのアリ、もしくはアリ寄りのナシであり、ナシ寄りではないだろう。

というような、哲学とは縁遠い佗しい感想を置き土産に、哲学堂公園をあとにした。


15:40 │ 新井薬師口/ 艶っぽく酔いしれて

バスストップ


/ARAIYAKUSHIGUCHI




哲学堂公園入口から、新井薬師口へ。


次なる目的は、薬師あいロード商店街の散策。
昭和の香りを残す懐かしい店舗から、平成カルチャーを感じさせる若者向けの新しい店舗まで、約130店が連なる愉快な商店街を歩く。





まもなく、サブリナのアンテナがピーンと反応。




―――“着物どれでも千円”って書いてますよ!!

サブリナ

薬師あいロードで超お値打ち価格の着物を発見



そう言って、呉服屋の軒先に置いてあった着物を熱心にディグり始めるサブリナ。

その結果、扇子の絵柄が艶めかしい灰色の着物を選び取り、試着させてもらう運びに。






したらば、映えること映えること。

入り組んだ色気が、そこはかとなく匂い立つ。

何よりも、セーラームーン風からのギャップが、ものすごい。

サブリナ



―――帯は二千円?


サブリナは着物を決めると、躊躇なく帯を選び出した。
お店の方々も、その流れるような言動に驚いている様子。





あとでサブリナに聞いてみると、着物の着付けはさすがにできないものの、浴衣であれば自力でサクっと着られるほどだという。



―――この前、所属してるアイドルグループのライブがあったんですけど、そこで浴衣を着ることがあって、メンバーの誰よりも私が一番用意が早かったですね。逆に着れていないコを手伝って、着せてあげましたよ。

「いや、ホント日本の文化に精通してるよね」

―――ありがとう。じゃあ、茶道も好きだし、着付けも本格的に勉強しようかなぁ。

サブリナ




やれやれ、この美形オタク、まことに只者ならず。






◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ




SABRINA SAYIN

サブリナ・サイン

トルコ出身。中学生の頃にアニメ『美少女戦士セーラームーン』を観て衝撃を受け、高校卒業後の2011年に来日。2015年からはアイドルグループ“恥じらいレスキューJPN”のメンバーとして約2年間活動。その後もモデルや女優として活躍の場を広げている。Journeys in Japan(NHK)、「キシリクリスタル」CMなど出演実績多数。







NEXT/STORY