2017.08.02

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.6 (1/4)

黒船ガールとバスさんぽ



日々変わり続ける大都市・東京。



知っているつもりでも発見の絶えないこの街は、

異国から来た彼女にどんな風に映るのだろう。



路線バスの発着地から終着地まで、

気ままにめぐる東京さんぽ。




赤31(赤羽駅-高円寺駅)国際興業バス・関東バス



東京都北区赤羽。

その地は昔から“東京北の玄関口”と言われ、現在、電車はJR京浜東北線、埼京線、宇都宮線、高崎線、湘南新宿ライン、赤羽線の6路線、バスも国際興業、都営バス、関東バスが乗り入れている。

また、清野とおるの人気コミック『ウヒョッ!東京都北区赤羽』や、それに触発された山田孝之が主演した深夜ドラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』が話題になるなど、このところ大きな盛り上がりを見せる街だ。


10:00 │ 赤羽駅東口/魅惑のコントラスト

バスストップ


/AKABANEEKI-HIGASHIGUCHI





陽光が照りつける夏の日。

JR赤羽駅で、黒船ガールと待ち合わせ。






ほどなくして現れたのは、ウクライナ出身のアンナ・ミッツェル。

アンナ・ミッツェル



―――こんにちは。今日は暑いですね。






一瞬にしてコントラストが生まれ、空間が歪む。



抜けるような白い肌、光沢のある金髪、麗しい緑の瞳。
清楚な水色のロングワンピースに身を包み、涼しげな笑顔を浮かべる姿は、さながら美の黄金比を体現した女神のよう。


駅を行き交う人々も、光り輝く女神様を一秒でも長く目に焼き付けるかのごとくに釘付けである。





「赤羽は初めて?」

―――初めてです。来たことないですね。なんか、賑やかで楽しい感じですよね。

「じゃあ、バスに乗る前に、ちょっと散歩してビールでも飲まない?」

―――え!?ウソ~(笑)まだ10時ですよ。飲める場所あるの?


1番街



東口から、駅前ロータリーを見て左手にある一番街商店街のアーケードをくぐる。

一番街周辺は、かつて空襲で街全体が焼失したが、復興後すぐに商店街が形成された場所で、戦後の闇市あがりの店が多い。
それゆえ、奥に進めば進むほど、昭和独特の猥雑な匂いがプンプンするし、呑兵衛にとってはパラダイスと言えるほどに、レトロで味のある居酒屋が密集している。





一番街の奥にある幌のアーケードが印象的なシルクロード商店街まで来ると、まだ午前中ということもあり、ほとんどの店のシャッターが降りていて、人通りも少ない。


こんなノスタルジックな雰囲気の商店街をメルヘンチックなルックスの美女が闊歩すると、まるで異世界を冒険するヒロインのような絵面になる。

アンナ・ミッツェル

幌のアーケードが印象的なシルクロード商店街




「こういう日本の昭和っぽい場所って、あんまり馴染みないよね?」

―――うん。でも、『ALWAYS 三丁目の夕日』ってあるでしょ?あれ、大好きな映画で何回も観てるんだけど、そんな雰囲気だね。





そんなことを話しながら、お目当ての『鯉とうなぎのまるます家 総本店』に。 


まるます家



まるます家は、朝10時から営業している老舗の大衆居酒屋で、川魚の料理を得意とする、創業67年を誇る赤羽の名店だ。


早速、鯉のあらい、鰻のかぶと焼き、鰻のかば焼きをオーダー。






―――朝からビールなんて、非日常。



そう言って、ニコニコしながらビールを流し込むアンナ。



―――鯉は、子供の頃に、漁師だったおじいちゃんがよく獲ってくれてたのを食べてたよ。

「へぇ、そうなんだ」




珍しいメニューに舌鼓を打ちながら、会話に花を咲かせる。


アンナ・ミッツェル



アンナはウクライナの首都キエフ出身。

ウクライナの大学で経済の勉強をした後、20歳でモデルの仕事で来日。
それからはずっと日本に住んでいるため日本語がペラペラで、その他、ロシア語、ウクライナ語、英語と計4ヶ国語を使いこなすクワドリンガルというから、才色兼備の度合いが凄まじい。





「なんで日本に来ようと思ったの?」

―――日本は、アメリカやヨーロッパとも違う、特別な国っていうイメージだった。着物とか、桜とか、ハイテクノロジーの電化製品とか。小学校でも、日本は小さい国なのに成功して、そんな国は世界的にも珍しいって教わって。印象がとても良かったの。




彼女は少女時代にソ連のペレストロイカを経験している。
ウクライナが社会主義国家だった頃は、国全体が閉鎖的で貧しかったが、1991年にソビエトから独立した後は、外部から様々な情報が入ってくるようになり、異国の文化に触れる機会も増え、さらに身の周りのモノがどんどん豊かになるという大変化の中で、多くの刺激を受けたという。

そうして、とにかく違う国を見てみたいという想いが日に日に強くなり、大人になって初めて訪れた外国が日本だった。

アンナ・ミッツェル

微妙な苦味はあるが柔らかくて美味しい、鰻のかぶと焼き



―――日本に着いた瞬間、私は今どこにいるんだ?って思ったくらい、近代的で驚いたの。まず道が整備されていて綺麗。高層ビルや電気の量がスゴい。あと、何より安全。そういうところは今でもスゴいと思ってる。あと、日本で売ってるモノってやっぱり質が高い。2年に1回は必ずウクライナに帰ってるんだけど、親戚に日本のモノをたくさんお土産として持って帰るのね。家電とか、梅酒とか、お菓子とか。とっても喜ばれるよ。




そんな話を聴きながら、ふと、ジャパン・アズ・ナンバーワンが脳裏をかすめるのであった。



アンナ・ミッツェル

高円寺までのバス旅、いよいよスタート





まるます家を後にした我々は、赤羽駅前からバスに乗車。

東十条に向かって、ゆっくりと進んでいく。






―――バスにはたまに乗るけど、電車に比べて景色が近くて好き。ゆっくり、のんびり、目的地に向かうっていうのがいいよね。


アンナ・ミッツェル





さあ、次の街では、どんなことが待っているだろうか。






◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ




ANNA MITZEL

アンナ・ミッツェル

ウクライナ出身。37歳。2000年に来日し、モデルとして数々の媒体やカタログに起用される。直近は「マクドナルド」のCMで“問いつめる女”を好演。


アンナ・ミッツェル

McDonald’sより







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