2017.06.09

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.5 (4/4)




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15:10 │ 明星学園入口/新緑の森を抜けて

バスストップ


/MYÔJYÔGAKUEN-IRIGUCHI


マリナ




明星学園入口で下車すると、吉祥寺通りの横に、井の頭恩賜公園の緑が広がっていた。



井の頭恩賜公園は、日本で最初の郊外公園として開園。
2017年5月1日に開園100周年を迎えた、都民の憩いの場だ。

この一帯では、かつて代々の徳川将軍が鷹狩りを行っていたそうで、神田川の水源となっている公園内の井の頭池は、江戸っ子たちの水道の役割を果たしていたという。
そして、この地に鷹狩りに訪れた家光は、湧き水がこんこんと溢れているのを見て、“井戸の頭”という意味で、“井の頭”と名付けたらしい。

ちなみに、中央線には「寺」のつく駅名が多いのだが、「吉祥寺」というお寺は文京区本駒込にある。




―――私、吉祥寺に住んでたことがあるんです。

マリナ



やはり、東京の住みたい街ランキングの上位常連である吉祥寺は、ベラルーシ人にとっても魅力的な街なのだろうか。

と思いきや、そんなランキングがあることを知っていたわけではなさそうで、そんなことよりも外国人が日本で部屋を借りることの大変さと、敷金、礼金、仲介手数料、家賃の前払い、などなど引っ越す際にかかる高額な出費に、ほとほとうんざりしているようだった。




「ところで、東日本大震災がきっかけで日本に来たんだよね?」

―――最初のきっかけは、そうですね。ベラルーシはチェルノブイリの原発事故で大きな被害を受けたんですけど、放射能汚染を経験した国ということで、震災後、福島から視察団が定期的に来てたんです。私の日本語の先生がそのとき通訳を担当してたんだけど、視察団は一度に30人とか40人ぐらいは来るから、その度に私たち学生がアシスタントをしてたの。そしたら今度はベラルーシ側が福島に招いてもらうことになって、2013年に初めて日本に来た。福島市に行って感動したのは、放射能汚染が怖くて引っ越してしまった人もたくさんいたけど、地元が好きで地元のために頑張ってるような人も多くいたこと。ベラルーシと似たような問題を抱えてるだけに、いろいろ勉強になりました。


マリナ

商店街を次々とバスが行き交う、吉祥寺駅南口



「チェルノブイリの原発事故をリアルタイムでは知らないけど、ベラルーシの人だからこそ、福島の状況を見て、何か感じることがあるんだよね」

―――そうですね。その次の年に、今度は留学するために日本に来たんですが、福島とのご縁は続いてて、今も毎年行ってますよ。現地で友だちもできたし、役所の人も歓迎してくれて、ベラルーシの留学生を囲む会をやってくれたりするんです。仲良くなったお婆さんからは、部屋が空いてるから福島に来たらいつでも泊まってねって言われてますし。





公園でのんびり過ごす人たちを見ていると、2011年3月に起こったことが幻のような感覚に陥る。

あのとき、日本を離れてしまった外国人は多かったが、震災をきっかけにこうやって日本にやってきた彼女のような外国人もたくさんいるのだろう。


マリナ



16:20 │ 吉祥寺駅(南口)/思い出の詰まった街

バスストップ


/KICHIJYÔJI-EKI-MINAMIGUCHI




井の頭公園を抜け、吉祥寺の喧騒の中へ。





―――北口の方に、たい焼き屋さんがあるんですけど、行ってみます?



勝手知ったる街といった感じで先導してくれるマリナ。

こちらが案内するつもりが、いつの間にかゲストに案内されているのが、なんだかおかしい。


マリナ

吉祥寺に住んでいた頃よく通ったという、たい焼き屋。久々の味に頬がゆるむ




たい焼きで小腹を満たし、続いて老舗焼き鳥屋の「いせや総本店」へ。





―――私の友だち、居酒屋トークで日本語を覚えたんですよ。


マリナ

井の頭公園で出遭った猫と見つめ合う



たしかに、居酒屋は外国人にとって、生きた日本語が学べる貴重な場かもしれない。

では、我々も焼き鳥を頬張りながら、居酒屋トークをするとしよう。





「マリナは将来、どんなことしたいの?」

―――これっていうハッキリしたことはまだないんだけど、マーケティングとかメディアのPRみたいな仕事に最近興味があって。それと、いろんな国のフェスティバルが公園とかで開催されてるじゃないですか。ああいうやつのベラルーシ版をやってみたいんですよね。

「あぁ、スゴくいいね。ベラルーシ・フェスティバル、行ってみたいかも」

―――日本に住んでるベラルーシ人はそんなに多くないし、そういうイベントをやろうとすると難しい問題もいろいろ出てくるんだけど、日本にいる間に何かしらの形で実現させたいって思ってる。

「ということは、いつかは日本を離れるつもり?」


やきとり



―――それはまだ分からない。少なくとも、あと1年はいて、それからどうするか決めるつもり。若いうちはいろんな経験をしたいから、日本にこだわらなくてもいいかなとは思ってる。まあ、日本で恋人ができたり、やりたいことが他に見つかったりしたら、考えは変わるかもしれないけど。

「日本の男性、どう?」

―――正直言うと、変な緊張感があってちょっと話しにくい(笑)。なんか、日本の若い男の子は草食系が多いって言われるけど、私自身も草食系っぽいところがあるから、付き合ったら、ものすごい受け身カップルになっちゃいそう。


マリナ



クールで繊細。
他方、キュートで朗らか。



こんなベラルーシ美女、日本男児は好きだろう、きっと。






 17:40
 吉祥寺にて





◇写真:鈴木清美
◇構成:石井ミノル




MARYNA ARABEI

マリナ・アラベイ

ベラルーシ出身。23歳。2014年に来日。長身を活かしたスタイルで、数多くの広告やカタログにて起用され、テレビ番組にも出演。日本に最初に来たのは、東日本大震災後の福島原発の視察団の一員として。ベラルーシはチェルノブイリ原発事故の影響を受ける国で、そこから日本に興味を持つようになった。






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