(公開日:2024年8月29日)
弁護士費用特約(弁護士特約)は、自動車保険に任意で付帯できる特約のひとつです。弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯していると、法律上の損害賠償請求をする場合の弁護士費用や法律相談の費用を補償でカバーできます。
自動車保険への加入を検討している方のなかには弁護士費用特約(弁護士特約)の使い方や必要性がわからず、特約を付帯すべきか迷っている方もいるでしょう。
この記事では、弁護士費用特約(弁護士特約)の概要や役立つシーン、付帯させるメリットとデメリットなどを解説します。
弁護士費用特約(弁護士特約)は、自動車事故や日常で発生した事故の被害に遭った際に役立つ特約です。
自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯している場合、事故で負ったケガ、ものや車の損害に対する賠償請求について弁護士に相談(依頼)する際にかかる費用が補償の対象となります。
本来、弁護士に相談や依頼をする場合、法律相談料や着手金などのさまざまな費用が発生します。しかし自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯していれば、事故に遭った際に自己負担なしで弁護士によるサポートを受けられる可能性があります。
また、損失を受けた側の過失がない「もらい事故」ではとくに弁護士費用特約(弁護士特約)が役立ちます。もらい事故は法律の関係上、保険会社が示談交渉に介入できず、ご自身で示談交渉をおこなわなければなりません。
こうした状況では法律に詳しい弁護士に示談交渉を委任したいところですが、経済的な理由から弁護士への相談が難しい場合もあるかと思われます。そんなときに、弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯していれば、相談料などの費用を心配することなく弁護士を頼れるでしょう。
ただし、事故が起きた際にご自身の過失割合が100%の場合は、事故の相手方に損害賠償請求ができないため、弁護士費用特約(弁護士特約)も利用できません。
弁護士費用特約(弁護士特約)とは?
弁護士費用特約(弁護士特約)の名称は、保険会社によって異なり「弁護士費用等補償特約」や「弁護士費用特約」と呼ばれる場合もあるので覚えておきましょう。
弁護士費用特約(弁護士特約)は、一般的に「自動車事故型」と「日常生活・自動車事故型」の2種類にわけられ、以下のようにそれぞれ補償範囲が異なります。
弁護士費用特約(弁護士特約)のタイプ | ||
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タイプの名称 | 補償範囲 | 補償対象者の例 |
自動車事故型 |
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日常生活・自動車事故型 |
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自動車事故型は「車に追突されてケガをした」「車に追突されて所有物(自宅の塀)を壊された」などの車の事故のみを補償対象とします。一方、日常生活・自動車事故型では「歩行中に自転車にぶつかってケガをした」「所有物が盗難された」などの日常生活で生じた事故も補償の対象です。
なお、補償タイプの名称は保険会社によって異なります。補償内容をもとにご自身に合った特約を選択しましょう。
もらい事故の当事者になったとき、相手が無保険だったときなど、弁護士費用特約(弁護士特約)はさまざまなシーンで役立つ特約です。ここでは、弁護士費用特約(弁護士特約)が役立つ代表的なシーンをいくつか紹介します。
もらい事故とは、相手方に100%の過失がある自動車事故のことです。例としては「信号待ちで停車しているときにうしろから追突された」「駐車場で停車中に相手方の車が接触した」などといったケースがあげられます。
もらい事故の例
※上記はもらい事故の1例です。実際の事故の状況により過失割合は変わり、もらい事故とならない場合もあります。
前述したように、もらい事故は法律の関係上、保険会社側で示談交渉をおこなうことができません。相手との交渉は当事者がみずからおこなう、または弁護士に依頼する必要があります。
弁護士への依頼は経済的な負担がネックになりやすいですが、弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯していれば費用を気にすることなく示談交渉を依頼できます。
自動車を運転する場合、自賠責保険に加入することが義務とされています。加えて任意保険に加入するケースもあります。そして事故を起こした際は、相手が加入している任意保険の保険会社を通して損害賠償に関する交渉を進めるのが一般的です。
しかし、相手が自動車保険に加入していない無保険の場合は、当事者が相手方に対して直接賠償金を請求しなければいけません。
任意保険の加入有無による事故時の対応の違い
当事者が法律に詳しくない場合、賠償金請求の交渉をスムーズにおこなうことができないケースがあります。また、相手に経済的な余裕がない場合は、支払い能力が乏しく、賠償金を支払ってもらえないケースも考えられます。
示談交渉や賠償金請求をより確実におこなうためにも、相手が無保険だった場合は弁護士への依頼がおすすめです。弁護士費用特約があれば、弁護士費用をご自身が負担しないで済む可能性もあります。
事故で受けた被害が小さい場合にも弁護士費用特約(弁護士特約)が役立ちます。たとえば「事故で負ったケガの治療期間が短い場合」や「事故で負ったケガが打撲のみの場合」といったケースがあげられます。
こうした事故は、被害が小さいことを理由に「相手方が相場より低い賠償金を提示してくる」などのトラブルに発展する可能性も考えられるため、賠償金の請求はみずから交渉するよりも、弁護士へ依頼したほうが良いでしょう。
しかし、事故で受けた被害が小さい場合、相手に請求できる損害賠償額は低額になりやすく、賠償金よりも弁護士費用が高くなってしまう可能性があります。こうした状況でも、自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)が付帯されていれば、弁護士費用を気にせずに賠償金請求の依頼ができます。
相手方が適正な賠償金を支払ってくれないときなど、示談交渉が上手く進まない場合は訴訟に発展する可能性もあります。
訴訟によって適正な賠償金を受け取るには、民事裁判や民事調停、交通事故紛争処理センターなどでさまざまな手続きをおこなう必要があります。
弁護士に依頼した場合はこうした各種手続きを代理でおこなってくれるため、訴訟に必要な手間を大きく省けます。さらに、弁護士費用特約(弁護士特約)を活用すれば、依頼や相談にかかる費用の心配もありません。
弁護士費用特約(弁護士特約)には、弁護士費用の補償をはじめとしたさまざまなメリットがあります。ここからは、自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯させるメリットを紹介します。
弁護士費用特約(弁護士特約)の大きなメリットは、上限額の範囲内であれば費用の心配をせずに弁護士に相談や依頼ができる点にあります。
上限額は保険会社によって異なりますが、弁護士費用は300万円まで、法律相談料は10万円までの設定にしている保険会社が多いです。弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯することで費用面での不利益を避けつつ、法律の専門家のアドバイスや交渉により、適切な賠償金を受け取ることができます。
弁護士費用特約(弁護士特約)によっては、契約者本人だけでなく家族も特約を利用できる場合があります。一般的な弁護士費用特約(弁護士特約)の適用範囲は以下のように設定されており、条件さえ満たしていれば家族も補償してくれる保険会社もあります。
【弁護士費用特約(弁護士特約)の適用範囲】
上記の家族がそれぞれ違う車に乗っていても、複数所有している車のうち1台の自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)が付帯されていれば、家族も補償の範囲内です。
つまり、弁護士費用に関する特約を車1台にセットすれば、家族が乗っている車ごとに弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯させる必要はありません。もし家族がそれぞれ違う保険会社の自動車保険に加入している場合は、保険料をおさえるためにも補償の重複に注意してください。
なお、家族がそれぞれ違う保険会社の自動車保険に加入している場合も、記名被保険者本人の保険に付帯する弁護士費用特約(弁護士特約)を利用可能です。
たとえば、夫が弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯しているA社の保険に加入しており、妻がB社の保険に加入しているケースでも、A社の弁護士費用特約(弁護士特約)を妻も利用することができます。
自動車保険の等級とは、契約期間中の事故の有無に応じて翌年度の等級が決まり、保険料の割引きや割増しがされる制度で、ノンフリート等級とも呼ばれます。
通常、自動車による事故で保険を利用すると等級が下がってしまいます。
しかし、弁護士費用特約(弁護士特約)のみを利用した場合の事故は「ノーカウント事故」とみなされるため、保険の等級に影響がありません。そのため、保険料が上がる心配をせずに特約を利用できます。
弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯させるデメリットは、保険会社に支払う保険料が上がる点です。具体的な保険料は保険会社によって異なりますが、弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯する場合は追加で年間数千円の保険料がかかるのが一般的です。
保険料は上がってしまうものの、年間数千円の支出で万が一事故が起きた場合の弁護士費用を心配せずに済む点を考えると、弁護士費用特約(弁護士特約)は有益でしょう。そのため、追加の保険料が経済的な負担にならないのであれば、弁護士費用特約(弁護士特約)は付帯しておくことをおすすめします。
ここからは、自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯させる際におさえておきたいポイントを紹介します。弁護士費用特約(弁護士特約)の付帯を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
先述したように、弁護士費用特約(弁護士特約)の補償額上限は弁護士費用が300万円まで、法律相談料は10万円までと設定している保険会社が多いです。なお、弁護士費用や法律相談料が上限額を超えるケースはほとんどありません。
ただし、重い後遺障害がのこった場合や死亡事故など数千万円の損害賠償金が発生するような事故では、上限額を超える可能性があるため注意してください。
弁護士費用特約(弁護士特約)は、全ての事故が補償対象ではない点に注意しましょう。事故内容が以下のいずれかに該当する場合、弁護士費用特約(弁護士特約)は基本的に利用できません。
【弁護士費用特約(弁護士特約)を利用できないケース】
なお、上記のケースは一例で、利用の可否は保険会社によって変わる可能性があります。弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯する際は、パンフレットや約款、各保険会社のウェブサイトなどから特約が利用できないケースについてよく確認してください。
弁護士費用特約(弁護士特約)を利用するためには、事故が起きた時点で弁護士費用特約(弁護士特約)が付帯されている保険に加入している必要があります。つまり、事故が起きた後に弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯しても、特約による補償は受けられないため注意してください。
ただし、家族が弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯した自動車保険に加入している場合は、起きてしまった事故に対してその家族の特約を使える可能性があります。ご自身が弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯していない状態で事故を起こした際は、家族が加入している保険の補償内容を確認しましょう。
保険会社によっては、弁護士費用特約(弁護士特約)の利用に事前承認を必要としているケースがあります。
事故が起きた後、保険会社へ事前承認をせずそのまますぐに弁護士へ相談や依頼をすると、弁護士費用特約(弁護士特約)の保険金が支払われない可能性があるため注意してください。事故を起こした際はいきなり弁護士を頼らずに、まず保険会社に連絡して弁護士費用特約(弁護士特約)を利用したい旨を伝えましょう。
弁護士費用特約(弁護士特約)の付帯を検討するうえで、特約を付帯できる自動車保険に変えたり、特約の内容がよりご自身に合った保険に変えたりと、現在加入している自動車保険の見直しを考える方もいるでしょう。自動車保険の見直しをおこなう際は、自動車保険の一括見積もりが便利です。
自動車保険の一括見積もりを利用すると、複数の保険会社の見積もりを一括で依頼できます。また、必要な情報を送ると見積もり結果がメールや郵送で届くしくみになっており、送られた見積もり結果をもとに複数の保険を比較しながら見直しをおこなうことができます。
また、補償内容の見直しだけでなく、保険料をおさえた自動車保険に変えたい場合も役立ちます。保険料だけではなく特約を含めた補償内容にも注目することでご自身に合った自動車保険を見つけることができるでしょう。自動車保険の乗り換えを考えている方は、一括見積もりをぜひ活用してください。
自動車保険に弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯すると、事故を起こした際に費用の心配をせず弁護士へ依頼や相談ができるようになります。万が一の事故への備えを考えているのなら、ぜひ付帯しておきたい特約です。
また、保険会社によっては所有している複数の車のうち1台のみに弁護士費用特約(弁護士特約)が付帯していれば、家族全員で同じ特約を利用できる場合もあります。補償内容の重複を避けるためにも、弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯する際は家族の保険加入状況を事前に確認することをおすすめします。
なお、弁護士費用特約(弁護士特約)を付帯すると追加の保険料がかかります。保険料が経済的な負担にならないか心配な方は、付帯前に追加料金をよく確認しておきましょう。
ただし、保険料だけで選ぶと必要な補償が受けられなくなる可能性もあります。保険料をおさえつつ、希望の補償内容がある自動車保険に変更したい場合は、一括見積もりでご自身の状況に適した自動車保険を探してみてください。
ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定※を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年8月29日)
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