最終更新日:2025年1月30日
自動車保険には保険会社が提供するさまざまな特約・付帯サービスがありますが、そのひとつが「運転者限定特約」です。運転者限定特約とは、補償される運転者の範囲を限定する特約です。運転者の範囲を狭くするほど保険料が割引きされるため、正しく設定することにより保険料をおさえられるという特徴があります。
この記事では、車の保険に付帯する運転者限定特約の概要や設定できる運転者の範囲をわかりやすく解説します。さらに、運転者限定特約の範囲外の方が補償を受ける方法、運転者限定特約と併用できる運転者年齢条件特約もご紹介します。
運転者限定特約とは、自動車保険の任意保険に付帯できる特約のひとつです。付帯すると、「本人だけ」「配偶者だけ」「家族だけ」などのように、自動車保険で補償される運転者の範囲が限定されます。
運転者の範囲を限定するほど事故のリスクが低くなるため、この特約を付帯することで保険料の割引きを受けられます。また、設定できる運転者の範囲はいくつかの区分にわかれており、その区分によって異なる割引き率が適用されます。
なお、自動車保険の任意保険の概要や補償内容は以下の記事で解説しています。
運転者限定特約で補償される範囲の区分は保険会社によって異なりますが、一般的には「本人限定」「配偶者限定」「家族限定」「限定なし」の4つの区分にわかれます。
具体的には、運転者を記名被保険者だけに限定する「本人限定」がもっとも割引き率が高く、運転者の範囲を限定しない「限定なし」がもっとも割引き率が低くなります。
補償される運転者の範囲
※上記の分類は保険会社によって異なります。
ただし、運転者を限定すると、補償範囲外の方が契約者の自動車を運転して事故を起こした場合、補償を受けられないため注意してください。
「本人限定(本人型)」とは、先述した4つの区分のうち補償範囲がもっとも狭く、自動車保険の補償範囲を本人(記名被保険者)に限定するものです。
「本人限定」は、記名被保険者(車をおもに運転する方)が運転する場合しか補償されないため、仮に家族が車を運転して事故を起こしてしまっても補償の対象とはなりません。
しかし、補償範囲が狭くなることによってリスクが低くなり、保険料をもっともおさえることができます。したがって、記名被保険者だけが車を運転する場合は「本人限定」区分がおすすめです。
「配偶者限定(夫婦型)」とは、自動車保険の補償範囲を記名被保険者とその配偶者に限定するもので、「本人限定」の次に運転者の範囲が狭い区分です。
配偶者とは、内縁関係も含みます(ただし、各保険会社で定められた一定の条件を満たしている場合に限ります)。また、保険会社のなかには、同性パートナーも配偶者に含んでいるところもあります。
ただし、「配偶者限定」を選択すると、子どもなどほかの家族が運転して事故を起こしても、補償の対象とはなりません。配偶者以外の方が運転する可能性がないか、事前に確かめてから選択しましょう。
「家族限定(家族型)」とは、自動車保険の補償範囲を記名被保険者とその家族に限定するものです。具体的には、記名被保険者、その配偶者、同居の親族、別居の未婚の子が該当します。
一般的に同居の家族とは、同一住居に居住している親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)で、生計の同一性や扶養関係は問われません。
「運転者限定なし」は、自動車保険の補償範囲を限定しません。そのため、同居していない親族や友人などの他人であっても補償を受けられます。このような方が車を運転する可能性がある場合は、運転者の範囲として「限定なし」を選択するのが良いでしょう。
一方、運転者を限定しない場合は保険料の割引きが適用されないため、記名被保険者や記名被保険者の配偶者、保険会社が定める家族しか運転しない場合にはおすすめしません。車の使用者にあわせて、運転者の範囲を設定しましょう。
家族限定の範囲
運転者限定特約は保険料をおさえるために上手に使いましょう
運転者限定特約を設定することで、保険料をおさえられる可能性があります。上手に活用するためにも、それぞれの設定の範囲をよく理解し、普段、家族の中で誰が車をおもに運転するのか、他人に車を貸す場合があるのかを確認しましょう。
たとえば、夫婦で免許を持っているが妻はまったく運転しない場合、まずは夫のみの「本人限定」にしておき、子どもが産まれて子育てをするにあたって妻も自動車の運転が必要になったら、「配偶者限定」に変更するなど、ライフスタイルにあわせて臨機応変に運転者限定特約の範囲を変更しましょう。
運転者限定特約の割引き率は、補償の範囲を広げるほど低く、補償の範囲を狭めるほど高くなる傾向にあります。ただし、具体的な割引き率は保険会社によって異なるため一概には言えません。
具体的な割引き率を調べたい場合は、複数の保険会社を比較しながら検討できる、自動車保険の一括見積もりサイトの利用をおすすめします。
運転者限定特約で運転者の範囲を限定すると保険料をおさえられますが、範囲外の方が補償されなくなる点には注意が必要です。
たとえば、運転者の範囲を「本人限定」で設定したのちに、補償範囲に含まれない本人以外の方が一時的に運転する必要が出た、という場合があるかもしれません。
そのような場合、以下のような方法を検討すると良いでしょう。
「本人限定」の補償範囲に含まれない方が一時的に運転をする必要が出た場合は、運転者の範囲を実際の状況にあわせて一時的に変更することが可能です。
たとえば「子どもが一時的に帰省する」といった場合は、自動車保険の運転者限定特約を一時的に限定解除したり、「本人限定」から「家族限定」に変更したりするなど、加入している保険会社に連絡をして手続きをおこないましょう。
また、保険期間の途中でも運転者限定特約は解除することができ、その場合のこりの保険期間分の保険料は、日割りで差額を支払います。
保険会社によっては、「限定なし」の期間が終わった後に再度限定ありに戻すことで、保険料が戻ってくる場合もあります。しかし、限定ありに戻すのを忘れると、運転者限定特約による割引きが適用されないままになってしまうため、運転者の範囲を変更した後は、忘れずに戻しておきましょう。
本人限定の補償範囲に含まれない方が一時的に運転をする必要が出た場合、短期で加入できる自動車保険に入ることも方法のひとつです。
「ドライバー保険(自動車運転者損害賠償責任保険)」は、自動車を所有していない方が、他人の自動車を借りて運転している間に起こした事故に対して保険金を支払う保険です。
1年単位での加入が一般的なため、記名被保険者以外の方が年間に何度も運転する場合は向いているかもしれません。補償内容はおもに「対人賠償」「対物賠償」「自損事故」などです。
ただし、借りた自動車に対する損害賠償や、同居の親族が所有する自動車を運転しているときに発生した損害および傷害などは補償の対象にはなりません。そのため、友人・知人などが運転する場合に適しているでしょう。
本人限定の補償範囲に含まれない方が一時的に運転をする必要が出た場合、短期で加入できる自動車保険として、②ではドライバー保険をご紹介しました。そのほか、短期で加入できる自動車保険として「1日自動車保険(1日単位で契約できる自動車保険)」もあります(名称は保険会社により異なります)。
補償内容は、「対人賠償」「対物賠償」「自損事故」のほか、「車両保険」も選ぶことができるケースがあります。別居で既婚の子どもが帰省して、親の車を運転する場合などに活用できるでしょう。
なお、1日自動車保険に車両補償をつけるには、利用開始日の7~8日以上前の申込みを必要としている保険会社もあるため、利用条件をチェックしておきましょう。
「他車運転特約」は他人から借りた車で事故を起こした場合に、運転者本人が加入する自動車保険による補償を受けられる特約です。
自動車保険は車に対する保険のため、事故を起こした場合は運転者が加入する保険ではなく、基本的には車の保険による補償が適用されます。
しかし、自動車保険に他車運転特約が付帯している場合、他人の車で起こした事故であっても、車ではなく運転者ご自身が加入する保険の補償を受けられます。
他車運転特約は、補償範囲に含まれない方が契約者の車を運転する際に便利です。補償範囲外の運転者が、他車運転特約が付帯されている自動車保険に加入している場合、運転者はご自身が加入する自動車保険の補償を受けられるため、車の所有者である契約者本人が補償の心配をする必要がありません。
ちなみに、他車運転特約における「他車」とは、友人や知人、他人から臨時で借りた車、レンタカー、修理工場の代車などが含まれます。家族から借りた車や常時借りている車は、補償の対象外となる場合があるため注意してください。
また、他車運転特約の補償範囲は、記名被保険者や記名被保険者の配偶者、同居の親族などです。
ただし、自動車保険に運転者限定特約が付帯されている場合は、運転者限定特約による補償範囲が適用されます。
お酒を飲んで頼んだ運転代行者が事故を起こしたら、補償はどうなる?
運転者限定特約を一度設定してしまうと、記名被保険者以外の方が運転して事故を起こしたときに補償の対象にならないため、上記のような対処方法を覚えておきましょう。
なお、お酒を飲んだときなどに運転を「代行」に依頼し、運転代行業者が事故を起こしてしまった場合は、自動車保険の補償対象にはなりません。しかし、基本的に運転代行業者は、法律で保険に加入することが義務づけられているため、運転代行業者が事故を起こした場合は、運転代行業者の保険で対応することになります。
なお、国土交通省が定める補償基準は、対人8,000万円以上、車両・対物200万円以上です。事故によっては、基準より多くの補償を必要とする場合があるため、利用する運転代行業者が加入している保険内容も確認することが重要です。
運転者限定特約を見直す最適なタイミングとして、家族のライフステージが変わったときなどがあげられます。
家族が運転免許を取得して車を運転する方が増えたとき、家族が独立して車を運転する方が減ったときなどに見直すと、それぞれの場合で必要な補償を受けられ、過剰に保険料を払う必要がなくなります。
具体的には、以下のようなケースがあげられます。設定している限定範囲が、現在の状況とあっているか確認してみましょう。
運転者限定特約の見直しのタイミング
見直しのタイミング | 見直し後の設定例 | |
---|---|---|
自分が結婚をした | (例)自分に加え、配偶者も運転するようになった | 本人限定⇒夫婦限定 |
家族が免許を取得した | (例)夫婦に加え、子どもも運転するようになった | 夫婦限定⇒家族限定 |
家族が同居した | (例)夫婦に加え、同居の父母も運転するようになった | 夫婦限定⇒家族限定 |
家族が別居した | (例)父母と別居し、夫婦だけで運転するようになった | 家族限定⇒夫婦限定 |
家族が結婚した | (例)子どもが結婚して、夫婦だけで運転するようになった | 家族限定⇒夫婦限定 |
別居の親族や友人・知人が車を運転するようになった | (例)結婚し別居している息子が、実家の車を運転するようになった | 家族限定⇒限定なし |
運転者限定特約の範囲として「家族限定」を設定する場合は、その範囲がどこまでになるのかを確認しておきましょう。「家族限定」の範囲は、一般的に記名被保険者、その配偶者、同居の親族、別居の未婚の子です。
同居の家族とは、同一住居に居住している親族(6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族)です。ただし、保険会社によっては限定できる範囲が異なる場合があります。
別居の未婚の子とは、別の住所に住んでいる未婚の子どもです。ここでいう「未婚」は、婚姻歴がないことを意味し、離婚歴がある子どもは未婚の子に含まれません。
つまり、現在は結婚していなくても、婚姻歴がある場合は運転者限定特約が定める家族の対象外です。別居の未婚の子が範囲に含まれる保険会社で「家族限定」を選ぶ場合は婚姻歴の有無についても注意しましょう。
同居の親族も「家族限定」の範囲に含まれ、一般的に、生計の同一性や扶養関係は問われません。ただし、二世帯住宅の場合は、住宅の構造により同居と判断されるケースと別居と判断されるケースにわかれます。保険会社が判断するため、個別の確認が必要です。
なお、集合住宅(マンション・アパートなど)で別々の住戸に住んでいる親族は別居とみなされ、運転者限定特約が定める家族の範囲には含まれません。
廃止の流れが進む「家族限定(家族型)」
前述のとおり「家族限定」の補償範囲は、保険会社によって異なるため設定する前によく確認しておきましょう。なお、2019年1月の保険改定により「家族限定」を廃止する保険会社が複数社でてきました。この背景には、単身世帯や核家族化により、「家族限定」の需要が少なくなっている傾向にあることが考えられます。
したがって、加入する保険会社によっては「家族限定」ではなく「本人限定」や「配偶者限定」で運転者の範囲を限定し、保険料をおさえる方法を検討することになります。
また、最近ではさまざまな場面にあわせた自動車保険があるため、普段は「本人限定」に設定しておき、子どもが帰省したときなどはコンビニやスマートフォンで簡単に加入できる1日保険に一時的に加入するなど、必要に応じて保険に加入するという方法もあります。
なお、運転者限定の範囲を見直すタイミングは、自動車保険の更新時期でなくても可能なので、ライフステージの変化に応じて随時見直しすることをおすすめします。
運転者限定特約は「運転者年齢条件特約」との併用が可能です。運転者年齢条件特約とは、運転する方の年齢を限定することによって保険料が割引きされる特約です。
設定できる年齢は「年齢を問わず補償」「21歳以上補償」「26歳以上補償」「30歳以上補償」「35歳以上補償」などと区分されており、設定した年齢が高いほど割引き率が高くなります。
なお、運転者年齢条件特約で設定する年齢は、基本的に家族(運転者)のなかでもっとも若い方の年齢にあわせて決めます。また、年齢条件が適用されるのは記名被保険者・配偶者・同居の親族のみとなるため、別居の子どもが帰省する場合などは年齢条件を変更する必要がありません。
運転者限定特約と運転者年齢条件特約を併用するとそれぞれの割引きが適用されるため、保険料を軽減しやすくなります。
たとえば、車の運転者が35歳の夫婦2人に限られる場合、運転者限定特約を「配偶者限定」に設定し、「35歳以上補償」の運転者年齢条件特約を付帯すると、どちらか一方のみを付帯するときよりも自動車保険の保険料をおさえられます。
ただし、運転者限定特約と運転者年齢条件特約を併用する際は、補償を受けられる範囲が2段階で限定されます。
20歳の子どもと同居している場合、年齢条件を30歳以上に設定していると子どもが補償範囲から外れるなどの注意例もあるので、必要な補償範囲を見極めて設定しましょう。
保険料をおさえたい場合は、この機会に加入している自動車保険を見直すことをおすすめします。
自動車保険の一括見積もりサイトなら、複数の自動車保険の保険料や補償内容を比較しながらご自身に適した保険を探せます。また、見積もりに必要な情報の入力が一度で済むため、保険商品ごとに情報を入力する手間がかかりません。
「運転者限定特約」は、補償される運転者の範囲を限定することで、保険料の割引きがおこなわれます。選択できる運転者の範囲は保険会社によって異なりますが、基本は「本人限定」「配偶者限定」「家族限定」「限定なし」の4つから選択できます。
この特約を設定する際は「特約をつけると、どのような場合に補償されなくなるのか」をしっかり理解することが重要です。
なぜなら、選択した範囲から外れる運転者は補償を受けられなくなってしまうからです。単純に保険料をおさえられるからといって割引きの大きい特約を設定しても、大きな負担がかかる場合があるかもしれません。実際の車の利用状況にあわせて、必要な特約を正しく選択しましょう。
また、運転者限定特約と運転者年齢条件特約を併用すると、保険料をよりおさえることができます。ただし、併用する場合は補償の範囲がさらに限定される点に注意してください。
生命保険会社に約8年勤務後、住宅建築の建設会社に19年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。また、ファイナンシャルプランナーとして、ライフプランをもとにした教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスを行う。主婦・母・自営業の嫁・親の介護の経験を活かし、相談を受けている。
(地域密着型・お客様に寄り添うFP)
https://takasugi-fp.com
【保有資格】
CFP®(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においては Financial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
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( 掲載開始日:2021年7月9日 )
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