(最終更新日:2022年12月28日)
自動車保険の保険料に影響する要素の1つが「運転者年齢条件(年齢条件)」です。運転者の年齢によって、保険料の割引率が変わるため、正しく設定すれば保険料を抑えることができます。すでに自動車保険に加入している方は、運転者年齢条件が正しく設定されているかを確認しましょう。この記事では、年齢ごとの保険料の割引率の違いや、正しく設定するポイント、契約期間中でも変更がきるかなどについてわかりやすく解説します。
自動車保険の「運転者年齢条件」とは、補償の対象になる運転者の範囲を年齢で制限するしくみです。運転者の範囲を年齢で制限することでリスクを抑え、保険料の割引を受けることができます。自動車保険には、自動車の使用目的や走行距離など、保険料の割引に関するしくみがいくつかあります。この中の1つが、運転者年齢条件です。
運転者の範囲を年齢で制限することにより、なぜ保険料が割引されることがあるのでしょうか。それは、運転者の年齢によって事故のリスクが異なってくるためです。限定される範囲は保険会社によって違いがありますが、一般的に運転者の年齢が若いほど事故を起こすリスクは高くなるので保険料も高くなると考えられています。
例えば、以下の図のような「全年齢補償」、「21歳以上補償」、「26歳以上補償」の3区分の場合、その他の条件が引受保険会社も含めて同じであれば「全年齢補償」の保険料が最も高く、「26歳以上補償」の保険料が最も安くなるのです。
運転者の年齢範囲に応じた区分
出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況2022年度(2021年度統計)」より抜粋
自動車保険の保険料率は、「運転者の年齢」のほか「記名被保険者の年齢」によっても区分されます(個人契約の場合)。
記名被保険者とは、ご契約の自動車(契約自動車)を主に使用される方のことです。一方、保険契約者とは、自動車保険を保険会社と契約し、保険料を支払う方です。「保険契約者=記名被保険者」となることが多いですが、必ずしもそうなるわけではありません。保険料を支払う方と主に自動車を運転する方が異なる場合は「保険契約者=記名被保険者」とはなりません。
記名被保険者の年齢層の区分は、「26歳以上補償」の部分がさらに6区分に分かれます。具体的には、以下の図のように、「全年齢補償」、「21歳以上補償」、「26歳以上補償」で「26歳以上補償」については「30歳未満」、「30歳以上40歳未満」、「40歳以上50歳未満」、「50歳以上60歳未満」、「60歳以上70歳未満」、「70歳以上」に区分されます。
そもそも、「運転者の年齢」と「記名被保険者の年齢」の2つに年齢条件を分けている理由は、記名被保険者の年齢層によるリスクの違いを保険料に反映させるためです。一般的に年齢を重ねるとともに交通事故の件数は減少しますが、60歳を超え、高齢者となると増加に転じます。この点を保険料に反映するため、運転者の年齢区分とは別に記名被保険者の年齢区分を設けているのです。
記名被保険者の年齢層は6つに区分される
出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況2022年度(2021年度統計)」より抜粋
自動車保険の保険料は、「運転者の年齢」と「記名被保険者の年齢」によって大きな影響を受けます。記名被保険者(契約の車を主に使用する人)の年齢を思い通りに変更することはできませんが、「運転者の年齢区分」で補償対象となる運転者の年齢を限定することで、保険料負担を軽くすることができます。
一般に、免許を取りたての10~20歳代は事故率が高く、アクセルとブレーキの踏み間違いといった判断能力の低下がみられる60歳代以降は1事故あたりの損害額が大きい傾向が見られます。そのため、運転者の年齢区分を同じ「30歳以上補償」としたプランでも、記名被保険者の年齢が30歳代なのか70歳代なのかといった違いで、同じ補償内容であっても保険料は異なります。保険料の傾向としては「記名被保険者の年齢区分」が50歳代が最も割安で、10~20歳代と60歳代以降は同等に割高になるイメージです。
なお、具体的な年齢区分の設定や保険料の割引率は保険会社によって異なります。
運転者年齢条件を適切に設定するためには、まず「運転者の範囲」が正しく設定されているかを確認する必要があります。そのうえで、車を運転する「最も若い方の年齢」に合わせて設定することがポイントです。
【設定例1】運転者を本人と配偶者に限定する場合は、夫婦の若い方に年齢条件を設定する。
【設定例2】運転者を家族に限定する場合は、本人、配偶者、同居の子・親族の中で自動車を運転する最も若い方に合わせて年齢条件を設定する。
なお、運転者の範囲については、一般的に「運転者限定特約」として以下のように「本人限定」「夫婦限定」「家族限定」「限定なし」の4つに分類されています。
補償される運転者の範囲の分類
※上記の分類は保険会社によって異なります。
運転者限定特約とは、補償の対象になる運転者の範囲を制限することで割引を受けられる特約です。 運転者を制限するほど事故のリスクは低くなるので、保険料は「本人限定」が最も安く「(運転者の)限定なし」が最も高くなります。範囲外の方は補償の対象外となるので運転者の範囲は慎重に設定しなければなりません。
なお、運転者年齢条件が適用されるのは、記名被保険者、記名被保険者の配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族(子どもを含む)とこれらの方の業務(家事を除く)に従事している使用人です。別居の子や別居の親族には、運転者年齢条件は適用されません。なお、「同居」や「別居」については、住民票に記載されているかどうかではなく、実態として同居しているか判断のポイントとなります。
別居の未婚の子や別居の親族、友人や知人には、運転者年齢条件が適用されません。別居の未婚の子に該当する条件には注意が必要です。自動車保険では、法律上の婚姻歴がない子どもを未婚の子としています。離婚して独身になった子は、法律上の婚姻歴があるため未婚の子に該当しません。別居は一般的な意味の別居ですが、同一敷地内の別家屋や二世帯住宅などで暮らしている場合は扱いが異なることがあります。生活設備の共有をもって同居として扱うなどの条件が定められていることもあるので、年齢条件を設定する前に対象になる方を確認しておきましょう。
上の図のとおり、別居の未婚の子や別居の親族、友人や知人などは、運転者年齢条件が適用されません。ただし、運転者の範囲を限定していなければ、これらの方は設定した運転者年齢条件にかかわらず補償の対象になります。そのため、別居の未婚の子が一時的に帰省したときに自動車を運転することがあるとしても、別居の未婚の子の年齢を気にせず年齢条件を設定できます。例えば、夫婦に合わせて契約した「26歳以上補償」の自動車保険であっても、帰省時に自動車を運転する22歳の別居の未婚の子は補償の対象になります。
前述のとおり、運転者年齢条件は、最も若い方に合わせて設定します。例えば、夫婦と同居している子が運転するのであれば、運転者の範囲を「家族限定」とし、年齢条件は同居している子に合わせます。また、既婚の別居の子や別居の親族、友人も運転するのであれば、運転者の範囲は限定せず、運転者年齢条件は同居している夫婦(親族も含む)のうち最も若い人に設定します。具体例は以下の通りです。
運転者年齢条件設定の具体例 | ||
---|---|---|
運転者の範囲 | 運転者年齢条件の設定 | |
自分のみ | 本人限定 | 自分(本人)の年齢に基づいて運転者年齢条件を設定する。 |
夫婦のみ | 夫婦限定 | 夫婦(本人・配偶者)のうち若い方の年齢に基づいて運転者年齢条件を設定する。 |
夫婦 + 同居の子や親族 |
家族限定 | 夫婦(本人・配偶者)・同居の子のうち最も若い方の年齢に基づいて運転者年齢条件を設定する。 |
夫婦 + 別居の未婚の子や親族 |
家族限定 | 別居の未婚の子や別居の親族には運転者年齢条件は適用されない。そのため、夫婦(本人・配偶者)のうち若い方の年齢に基づいて運転者年齢条件を設定する。 |
夫婦 + 別居の既婚の子・親族・友人 |
限定なし※ | 別居の既婚の子や別居の親族・友人は運転者年齢条件は適用されない。そのため、夫婦(本人・配偶者)のうち若い方の年齢に基づいて運転者年齢条件を設定する。 |
※結婚すると「家族限定」には含まれなくなります。仮に離婚して現在は独身だとしても婚姻歴があれば一般的には「未婚の子」にはあたりませんのでご注意ください。 |
(出典)一般社団法人 日本損害保険協会「損害保険Q&A」をもとに加工して作成
別居の子どもが”一時的”に帰省しているときだけ実家の自動車を運転したい、という場合には「運転者年齢条件」を変更する必要はありません。ただし、既婚・未婚を問わず運転者限定範囲を「運転者限定なし」とすることが重要です。
また、「孫」「同棲(内縁関係)」「友達」「従業員」などで運転者年齢条件の設定において判断に迷うケースの場合は、いざというときに補償対象から外れてしまうことがないように、自動車保険を契約する保険会社・代理店に相談・問い合わせをするのが安心です。
なお、運転者年齢条件の変更は、契約更新時だけでなく、保険期間の途中でも可能です。契約内容によって差額が生じますので、保険料の返還を受けたり追加保険料を支払う形で調整されます。
ちなみに、「自家用小型貨物車」および「自家用軽四輪貨物車」は、運転者年齢条件の適用をするかどうかが保険会社・プランによって対応が分かれていますので、ご自身に有利なところを調べてみると良いでしょう。
運転者年齢条件は保険期間中であればいつでも変更できます。補償の対象になっている最も若い方の年齢が誕生日を迎えひとつ上の区分になったタイミングで変更するとよいでしょう。
あるいは、未婚の子どもが別居する、別居していた子どもが戻ってきて同居する場合なども年齢条件を変更するタイミングです。保険料を抑えながら、適切な補償を受けるために、現在の状況に合わせて、更新や変更を行うことがポイントです。
運転者年齢条件の基準日は、運転者の誕生日(満年齢)です。
運転者年齢条件を途中変更する場合、保険会社によって、手続きした当日からというところもあれば翌日からなど、対応が異なっています。いつから適用になるのかは、必ず確認しておきたいポイントです。
なお、一定期間だけのつもりで年齢条件を変更した場合、元の契約内容に戻すためには保険会社に再度連絡して手続きをすることが必要です。もしも、年齢条件を変更を完了しないまま事故に遭うと、運転者年齢条件の範囲外の方であれば補償対象外となるのが一般的なため要注意です。
ちなみに、保険証券(承認書)が手元に届くまでの間に事故に遭ってしまった場合でも、変更手続き自体が済んでいれば補償されますのでご安心を。
自動車保険の運転者年齢条件とは、運転者の範囲を年齢で制限することで割引を受けられるしくみです。保険料は、一般的に運転者の年齢が若いほど高くなります。若年層ほど事故を起こしやすいと考えられているからです。年齢条件は、自動車を運転する最も若い人に合わせて設定します。運転者の年齢が変わったタイミングで見直しを行うと保険料を安く抑えることができる可能性があります。ただし、設定を誤ると、運転者年齢条件から外れる方は補償の対象外となってしまいます。運転者年齢条件は内容を理解してから慎重に設定しましょう。
慶応義塾大学にて保険学を専攻。損害保険会社・生命保険会社勤務を経て1998年FPとして独立、現在に至る。今は個人のコンサルティングを主軸に、講演、執筆を行う。主な保険分野の著書に『「保険に入ろうかな」と思ったときにまず読む本』『知らないと損をする!間違えない保険選びのツボ』日本経済新聞出版社、『1時間でわかる やれば得する! 保険の見直し100の鉄則』技術評論社、『世界一シンプルな保険選び』日本文芸社などがある。
https://www.office-takeshita.com
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