(最終更新日:2022年12月28日)
自動車保険は途中解約が可能であり、場合によっては契約満期までののこり期間に応じた解約返戻金が受け取れる場合もあります。しかし、解約後に別の自動車保険に加入する場合、前の自動車保険を解約するタイミングによっては、等級アップが遅れるなどといったデメリットも発生します。途中解約にあたっては注意点もしっかり押さえておきましょう。
この記事では、自動車保険を途中解約する方法や最適なタイミング、等級や解約返戻金に関する注意点を解説します。自動車保険の解約や乗り換えを検討中の方は、参考にしてください。
自動車保険の解約や他の保険会社への乗り換えは、自動車保険が満期になるのを待った方が手間がかからずスムーズですが、「別の保険会社に乗り換えたい」「自動車を手放すことになった」など、さまざまな理由で自動車保険を途中解約することもあるでしょう。
自動車保険は、満期を待たずに期間の途中での解約も可能であり、契約期間の途中で解約しても、違約金は発生しません。ですが、途中解約をする場合はタイミングに気をつけなければ、等級アップが遅れてしまったり、保険の空白期間が発生したりといったリスクやデメリットがあります。
また、そのほかにも、途中解約する場合「すでに支払った保険料はどうなるのか」という点について気になる方もいるでしょう。途中解約の場合には解約返戻金が受け取れるケースもありますので、解約の前に確認しておく必要があります。まずは解約返戻金について解説していきましょう。
自動車保険の途中解約のときには、解約返戻金(解約払戻金ともいいます)を受け取れる場合があります。解約返戻金とは、契約を解約したときに、保険会社から契約者に払い戻されるお金のことです。
自動車保険の保険料を払い込む方法は、月払いや年払いなど、保険会社によっていくつかのケースがあります。
保険料を月払いにしている場合の途中解約であれば、解約したあとの月の保険料を支払う必要はありません。しかし、保険料の日割り精算は基本的には行われないため、解約返戻金の支払いもないと覚えておきましょう。また、解約手続きを忘れて次の月を迎えてしまうと、1ヵ月分の保険料が発生します。
一方、保険料を年払いにしている場合には、一般的に、自動車保険の解約返戻金の計算式は、以下のとおりです。
【一般的な年払いの自動車保険での解約返戻金の求め方】
たとえば、契約期間満了までののこり期間が6ヵ月あるからといって、6ヵ月分相当の保険料が戻ってくるわけではありません。解約返戻金はのこりの期間分に相当する保険料よりも少なくなる点に注意しましょう。
自動車保険を途中解約する場合には、いくつか注意しなくてはなりません。
具体的な注意点について、詳しく解説していきましょう。
自動車保険には、以下のように1等級から20等級まで区分された等級制度が設けられています。
等級が上がるほど保険料の割引率が高くなる
現在加入中の自動車保険を解約して別の新しい保険に乗り換える場合には、新しい保険では等級が引継がれます。そして、保険を使う事故がなければ等級は1年ごとに上がっていきます。
しかし、等級が上がる直前で解約すると、新しい保険では上がる前の等級からスタートします。そのため、乗り換え先の保険で更に1年経過するまで、等級アップが遅れます。
交通事故などで保険請求があった場合には、内容に応じて等級が下がります。具体的には、事故内容によって3等級ダウンする場合、1等級ダウンする場合、そしてノーカウント事故とみなされ等級が下がらない場合にわかれています。
たとえば、他人を死傷させた、他人の物を傷つけた場合など、多くが「3等級ダウン事故」とみなされます。一方で、契約車両が盗難や落書き、災害による被害を受けた場合などは「1等級ダウン事故」とみなされます。そして、人身傷害保険や搭乗者傷害特約、個人賠償特約だけの補償を受ける事故の場合は「ノーカウント事故」となり、等級が下がることはありません。
自動車保険に新規で加入する場合、通常は6等級からスタートします※。しかし、現在加入している自動車保険を解約して他の自動車保険へ乗り換える場合には前契約の等級にかかわらず、それまでの等級が引継がれます。仮に自動車事故などで5等級以下に下がった場合でも、下がった等級をリセットして別の自動車保険で6等級から再契約することはできません。
自動車保険を含む損害保険には、「1~5等級・割増料率適用対象契約情報交換制度」があり、登録している保険会社は、前年に契約のなかった方からの契約申し出があった場合、前年度の実績や等級などの情報を確認できます。したがって、乗り換え先の保険契約時に事故歴を隠したり、等級引継ぎできる期間経過後に新しい保険に加入したりしても、下がった等級を戻すことはできません。具体的には、現在1~5等級の方が、新たに保険に入りなおしたからといって、6等級以上にはできないことを理解しておきましょう。
保険の解約日と、新しい保険の始期日(補償開始日)に間があると、その間は保険に加入していない「無保険期間」となります。無保険期間に事故を起こしてしまっても、自動車保険の補償は受けられません。こうしたリスクがあるため、前の保険の解約日と新しい保険の始期日は一致させましょう。
また、補償される期間が重なる「重複契約」も、余計な保険料を支払うことになります。補償期間が重なっていても、事故の際に両方の保険から補償を受けられるわけではありません。「重複契約に関する保険契約確認制度」があり、保険会社が重複契約を確認して、適正な契約を結ぶための制度も存在します。
自動車保険の乗り換え時には、日付に注意して無保険状態や重複契約とならないよう注意しましょう。
現在契約している自動車保険から新しい自動車保険へ乗り換えるために解約する場合は、解約後すぐに新しい保険の補償がはじまるように準備することで、補償の空白と重複を防げます。
注意すべき自動車保険解約のタイミング
自動車保険の乗り換え時には、等級の引継ぎも可能です。等級は無事故で1年を経過するごとに1等級上がるしくみで、1年を経過する前(満期日前)に解約してしまうと等級は引継ぎのタイミングで上がりません※。新しく加入する自動車保険に等級を引継ぐ場合、前契約の解約時の等級からスタートし、そこから無事故で1年経たないと等級は上がりません。したがって、効率よく等級を上げるには、途中解約をせずに乗り換えた方がよいでしょう。
ただし、等級が上がることによる割引額よりも保険の乗り換えによる保険料削減額が大きい、あるいは補償額が増えるといった場合は、満期ではないタイミングでの解約もひとつの選択肢です。補償内容や保険料など、メリット・デメリットを考えて総合的に判断しましょう。
自動車保険の無保険期間と重複期間
解約時には、加入している自動車保険がどのような契約内容であるか、契約期間はいつまでなのかを確認し、解約手続きの要・不要もチェックしましょう。解約手続きを忘れて自動更新されると、保険料の負担が発生します。あらかじめ解約時に必要な手続きを把握し、解約し忘れて余計な保険料を支払わないようにしましょう。
また、何らかの理由で車を手放したものの解約を忘れ、手放した期日にさかのぼって自動車保険を途中解約ができないかと考える方もいるかもしれません。しかし、そのような場合であっても過去にさかのぼって解約することはできないため注意が必要です。
「海外転勤で数年、車を使わない期間ができる」「病気療養のためしばらく運転できないが、回復したらまた車に乗りたい」のように、諸事情により車を一時的に手放したり、運転できなくなったりした場合は、中断証明書の発行が可能です。
中断証明書とは、記名被保険者が申請した場合に保険会社から発行される証明書です。通常は解約と同時に新たな契約を結ばないと等級は引継げませんが、中断証明書を発行することで現在の等級を10年間保持できます。
発行には条件がありますが、再度自動車保険に加入する可能性がある場合は、途中解約をする前に中断証明書の発行を検討してみてはいかがでしょうか。
ここでは、主に自動車の任意保険の解約について説明してきましたが、車を手放す場合には、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の名義変更や解約も必要になります。車を所有すると強制加入となる自賠責保険も、車の譲渡や抹消登録(公道を走行しない車にする手続き)をするときは、途中解約が可能です。
ただし、任意で加入する自動車保険とは異なり、譲渡や抹消登録したことを証明できる書類が必要になります。保険会社に確認し、必要書類を用意したうえで手続きしましょう。
自動車保険の解約手続きは、途中解約の場合と契約満了を待って解約する場合で異なりますので、それぞれについて、説明します。
保険契約の満期日を待たずに途中解約する場合には、一般的には、保険会社のお問い合わせ窓口や代理店などに解約の旨を申し出る必要があります。電話やメール、ウェブサイトから保険解約の旨を保険会社に伝えると、解約書類が送られてくるため、必要事項を記入して返送します。返送期限が設けられている場合もあるため、書類が届いたら速やかに内容を確認し、提出しましょう。
自動車保険は電話だけでは解約できず、保険会社の所定の手順に沿って解約の手続きを進める必要があるため、ある程度時間に余裕を持ったうえで手続きを進めることをおすすめします。
なお、保険会社によっては会員サイトから解約手続きができる場合もありますので、ご自身が加入している自動車保険について確認するとよいでしょう。
自動車保険のなかには、更新忘れを防ぐために自動更新の特約が付帯している商品もあります。
自動更新の特約があると、クレジットカードや口座振替によって保険料が徴収され、自動的に契約更新されます。保険会社に契約更新しない旨を伝え、必要な手続きを取りましょう。
自動更新されない保険であれば、更新手続きをしなければ契約は終了しますが、更新忘れを考慮して保険会社から確認の連絡が入る場合があります。詳細は加入している保険会社に確認することをおすすめします。
自動車保険もさまざまな商品があり、保険料だけでなく補償内容も商品ごとに違います。最適な保険を選ぶためにも、複数の保険商品を比較・検討しましょう。
しかし、個別に保険商品の内容を調べるのは手間がかかります。そんなときは、保険の一括見積もりサイトが便利です。自動車保険の一括見積もりサイトでは、補償内容の違いや保険料などを一覧で見ることができ、ご自身の希望に合う自動車保険を比較・検討できます。
自動車保険の乗り換えなどで途中解約する場合は、空白期間や重複契約に注意し、新しい保険で等級を引継げるようにしましょう。また、途中解約の場合には解約返戻金を受け取れる可能性があります。ただし、のこり期間の保険料相当分がすべて戻ってくるわけではないため注意しましょう。前契約の解約日と新契約の始期日が一致していないと、無保険リスクを抱えるだけでなく、等級の引継ぎができない場合があります。解約日と始期日を一致させるようにしましょう。
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。趣味はサウナ(サウナ・スパプロフェッショナル)。
https://www.rapportco.com/
【保有資格】
1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問合せください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度に基づくもので、すべての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
( 掲載開始日:2022年10月24日 )
2212882-2401
最短5分から
1番安い自動車保険を見つけよう!