最終更新日:2024年12月19日
自賠責保険ではカバーしきれない損害補償に備えるために、任意保険があります。任意保険には、各保険会社の「自動車保険」だけでなく、特定の地域や職業、企業の組合員を対象に協同組合などの団体が運営する「自動車共済」もあります。
この記事では、任意保険への加入を検討している方に向けて「自動車共済とはなにか」「保険会社の保険と比べ補償やサービスがどう違うのか」などを中心にメリット・デメリットについて解説します。また、自動車共済における「等級制度(ノンフリート等級制度)」や「割戻金」などについてもご紹介します。
自動車共済とは、組合員やその家族の生活の安定をはかる相互扶助(助け合い)の保険です。共済事業をおこなう団体の組合員が「共済掛金」を拠出し、自動車事故の発生時にはその掛金から「共済金」が支払われるしくみになります。
利益を追求しないため、一般的な自動車保険と比べて掛金がリーズナブルな傾向にあります。
「JA共済」「こくみん共済coop(全労災)」などをはじめ、いくつもの共済で自動車共済を取り扱っています。
自動車保険と自動車共済のどちらにも、自動車事故などを補償するという役割があります。
どちらに加入すれば良いか迷う場合には、それぞれのメリットとデメリットを比較し、よりご自身にあうものを選びましょう。
自動車共済のメリットは以下の2点です。
【自動車共済のメリット】
それぞれの項目について以下で詳しくみていきましょう。
自動車共済のメリットは、一般的に自動車保険に比べて掛金(保険料)がおさえられる点です。その理由は、共済が営利を目的としないしくみであるためです。
加入者が組合員に限定されるため、不特定多数の方を対象に加入を募る自動車保険に比べると営業経費をおさえやすいとされています。
ただし、留意点もあります。自動車共済は、補償内容が小規模なものから大規模なものまで種類がさまざまです。小規模の自動車共済に加入する場合には、補償内容がご自身にとって不十分でないか確認しましょう。
自動車共済のなかには、決算で剰余金が出る場合に「割戻金」として、払込んだ掛金(保険料)の一部が加入者に返金される共済もあります。
ただし、加入の共済やタイプ、共済期間などによって割戻金の有無や割戻率は異なるため、事前に確認しておく必要があります。
自動車共済のデメリット(注意点)は以下の4点です。
【自動車共済のデメリット(注意点)】
それぞれの項目について、以下で詳しくみていきましょう。
自動車共済に加入できるのは、原則として組合員とその家族です。非組合員が自動車共済に加入する場合には出資金を支払って組合員になる必要があります。
なお、出資金の額は共済組合ごとに異なります。共済によっては脱退時に出資金が返戻されるため、加入を希望する組合の定款などをご確認ください。
ほかの自動車共済や自動車保険へ乗り換える場合、等級をそのまま引き継げないケースがあります。一般的には引き継げるケースが多いようですが、一部の共済については等級が引き継げないこともあります。
等級を引き継げないと、掛金(保険料)が上がる可能性があるため、事前に確認しておく必要があります。
契約者保護の観点で、共済組合が破綻したときにどのような体制がとられているのかについて確認しておくことも大切です。
自動車保険の場合には、ある損害保険会社が破綻したとしても、日本国内で損害保険業の免許を受けた損害保険会社全社で拠出する損害保険契約者保護機構が補償する制度があります。
しかし、共済組合には同じような保護制度がなく、破綻した場合には、損害保険契約者保護機構による救済や支援は受けられません。
そのため、自動車共済や自動車保険を比較、検討する際は、補償内容や掛金(保険料)だけでなく、それぞれの運営母体の信用度も含めて判断することをおすすめします。
自動車共済は、加入時の選択肢となるプランの数が少なく、特約の解約・追加の融通が利きにくい傾向にあります。そのため、思いどおりにプランをカスタマイズできず、ご自身にあったプランにできない場合があります。
たとえば、自動車共済は走行距離による料金の変動はないため、年間走行距離が短い方は掛金が高く感じるかもしれません。一方、自動車保険の走行距離には「3,000km以下」「3,000km超5,000km以下」といった区分が設けられているものもあり、走行距離が短い方は保険料をおさえられる場合があります。
また、必要な補償に絞って自動車保険に加入することで保険料をおさえられる可能性もあります。自動車共済と自動車保険でプラン内容や掛金(保険料)を比較し、ご自身の希望にあったものを選びましょう。
自動車保険の種類
そもそも、自動車保険には大きく分けると「自賠責保険(共済)」と「任意保険(共済)」の2種類があります。ここでは、2種類の自動車保険の特徴や違いを詳しく解説します。
自賠責保険(共済)とは、法律で加入が義務づけられている、人身事故を補償する保険です。死亡時には被害者1名あたり3,000万円、後遺障害がのこった場合は4,000万円、傷害では120万円を上限として支払われます。
なお、自賠責保険(共済)に加入せずに自動車やバイクを運転すると、法律により処罰されるため注意が必要です。
任意保険(共済)は、自動車やバイクを運転する方が任意で加入する保険です。人身事故の補償金額の上乗せや物損事故の補償など、自賠責保険だけでは不足する補償をカバーする役割があります。
任意保険(共済)のプラン内容は種類により異なりますが、おもな任意保険(共済)の補償・サービス内容は以下のようになっています。
任意保険(共済)のおもな補償・サービス
相手方への補償 |
|
ご自身への補償 |
|
事故対応 |
|
ロードサービス |
|
※上記は、保険会社・商品によって異なります。
任意保険(共済)の場合、事故時の損害補償に加えて、事故対応やロードサービスも付帯します。特約の解約・追加により、補償内容をカスタマイズできることも特徴です。
自動車共済と自動車保険の任意保険は、どちらも類似したサービスを提供する保険です。しかし、補償内容や制度には違いもあるため、加入を検討する際は、両者の違いをしっかりと理解しておきましょう。
自動車共済と自動車保険の主な違い
自動車共済 | 自動車保険 | |
---|---|---|
営利・非営利 | 非営利 | 営利 |
根拠法 | 消費生活協同組合法、農業協同組合法など、共済実施団体の根拠法に基づく | 保険業法 |
監督省庁 | 農林水産省、厚生労働省など | 金融庁 |
加入対象者 | 組合員とその家族(原則) | 特定しない(※団体扱いではない場合) |
出資金 | 必要 | 不要 |
自動車保険と自動車共済の大きな違いは、加入者が制限されていることです。自動車保険は加入対象者を特定しない(団体扱いではない場合)点に対し、自動車共済は原則として加入対象者を組合員に制限しています。そのため、根拠となる法律や監督省庁もそれぞれ異なります。
また、自動車共済と自動車保険(任意保険)では、使用している用語が異なります。たとえば、自動車共済では保険期間のことを「共済期間」、「保険料」のことを「掛金」、保険金額のことを「共済金額」としています。
JA共済など一部の共済では、自動車保険などで一般的に用いられる「補償」ではなく、「保障」を使う場合もあります。そのほかにも用語の違いはありますが、それぞれの意味はほとんど同じです。
自動車共済のもっとも大きな役割は、自動車保険の役割と同様に「自動車事故の損害を補償すること」です。
ただし、保険金額や補償内容を比較的柔軟に設定できる自動車保険に比べて、自動車共済は補償が限定されていたり、内容をカスタマイズしたりすることが難しい場合もあります。ご自身が希望する保険金額や補償内容となっているか確認のうえ加入しましょう。
自動車共済も自動車保険と同じく、掛金(保険料)の割増し率や割引率を決める等級制度(ノンフリート等級制度)を採用しています。
等級の区分は、自動車保険や多くの自動車共済では1〜20等級で設定されています。しかし、なかには1~22等級で区分されている自動車共済もあります。区分の違いがある場合もありますが、自動車共済と自動車保険で等級制度(ノンフリート等級制度)の基本的なしくみは共通です。
いずれも、新規の契約時には6等級からスタートします。なお、一定の条件を満たせば、2台目以降の新規契約を7等級からはじまる場合もあります。
また、自動車共済を使用する事故を起こさなければ、1年ごとに等級がひとつ上がって掛金(保険料)はおさえられ、等級が下がる事故を起こして自動車共済を使用すれば、等級が下がって翌年の掛金(保険料)が高くなる点も共通です。
なお、保険契約を乗り換える際に等級をほかの共済や保険会社へ引き継げるかどうかは、「加入中の共済や保険会社」と「乗り換え先の共済や保険会社」の関係によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
自動車共済には、「自賠責共済セット割引き」「農業用貨物車割引き」や「22等級までの等級制度」など、組合ごとに独自の割引き制度が設けられていることがあります。
一方、自動車保険の場合、保険会社ごとに「等級による割増し引き」「セカンドカー割引き」「継続割引き」などが導入されていることがあります。
自動車共済と自動車保険では適用される割引きサービスが異なる場合があるため、事前に割引きの内容や割引き後の掛金を確認すると良いでしょう。
自動車共済は、組合員とその家族の相互扶助を目的とした非営利の保険であり、利益を追求する必要がないため、掛金がリーズナブルに設定されている傾向にあります。加入者の募集などにかかるコストがおさえられており、余剰金(利益)が出れば割戻金として組合員に還元することも特徴です。
一方、自動車保険は営利目的で運営されているため、類似した内容の保険を契約する場合、自動車共済より保険料が高額になることは珍しくありません。しかし、その分プラン内容のカスタマイズがしやすく、不要な特約を解約すれば保険料をおさえることも可能です。
組合員を対象として非営利で運営されている自動車共済に比べると、営利目的で運営されている自動車保険は、顧客獲得のために十分な事故対応サービスを提供している場合もあります。
自動車共済の中にも、事故対応サービスを用意しているものはありますが、事前に補償以外のサービス内容についても比較するのがおすすめです。
自動車共済への加入を希望する場合、以下の流れで申込みをおこないます。
【自動車共済加入の流れ】
ここでは、各ステップでの手続きについて、詳しくみていきます。
自動車共済に加入するには、その共済組合の組合員になる必要があります。出資金を支払えば組合員になることが可能な自動車共済もあれば、特定の職場に勤務しなければ組合員になれない共済組合もあるため注意しましょう。
加入したい自動車共済が決まったら、公式サイトや窓口、郵送などでプラン内容・掛金の見積もりをおこないましょう。車検証や自動車検査証記録事項、保険証券などの書類を事前に用意したうえで情報を共有すると、見積もりを正確に出してもらいやすくなります。
見積もりに納得できたら、オンラインでの加入や相談窓口、共済代理店などで申込み、審査を通過すると契約が完了します。申込みから契約までの流れは、以下のとおりです。
【自動車共済申込から契約までの流れ】
契約後は自動車共済証書が発行されるため、大切に保管しましょう。
自動車共済に加入した後に車を買い替えた際には、車種や車両を登録しなおす必要があります。これらの変更手続きは、お客さまサービスセンターへの電話や相談窓口に直接訪問しておこないます。
また、最近では公式アプリやウェブサイトからも手続きがおこなえるようになっている場合があります。
登録車両の変更のほかにも、ライフステージの変化にともなう運転者の範囲や補償金額の変更、特約の追加・削除、解約なども、マイページからお手続きいただけます。
ただし、自動車共済によって手続き方法が異なるため、詳細については公式サイトなどで確認するようにしましょう。
自動車共済から自動車保険への乗り換えは、タイミングによって手続きが異なるため注意が必要です。
途中で共済を解約してほかの自動車保険に乗り換える場合、等級が引き継げない可能性があります。乗り換え先の保険会社によっては、等級の引継ぎに対応していないケースもあるため、事前に加入を予定している保険会社に確認しておきましょう。
なお、等級の引継ぎが可能な場合でも、20等級以上の等級制度(ノンフリート等級制度)を設けている共済から一般的な自動車保険に乗り換える際には、20等級の扱いになります。
なお、現在21等級または22等級の方が、一般的な自動車保険に乗り換える際には、20等級の扱いになります。
また、解約日以降の保険料は解約返戻金として支払われますが、掛金を月払いされている方やのこりの期間が少ない場合には支払われないこともあります。解約返戻金が支払われた場合でも、今までに支払った共済掛金よりも少額になるおそれがあることを覚えておきましょう。
一方、満期日に乗り換えると、途中解約よりも手続きが少なく、等級の引継ぎもスムーズにおこなえます。しかし、満期を迎えて更新する前に手続きを進める必要があるため、満期日の2~3ヵ月前から検討するのがおすすめです。
また、中断証明書を利用して、他社に乗り換えることもできます。中断証明書とは、契約中の保険を一時解約したい場合に発行してもらう書類のことです。中断証明書を取得していれば、発行してもらった保険会社はもちろんのこと、ほかの会社の保険や共済で加入手続きをおこなえます。
解約したときの等級も再開時にそのまま引き継げますが、中断証明書には適用条件や有効期限が設けられている点に注意しましょう。
自動車共済の補償内容や等級制度(ノンフリート等級制度)によって割引きが適用される点などは、自動車保険とほとんど変わりません。しかし、加入時に出資金が必要になることや契約者保護制度が用意されていないなどの違いもあり、人によっては補償内容が十分ではない場合もあります。
そのため、自動車共済に加入している方のなかには、自動車保険への切り替えを検討している方もいるかもしれません。
加入する自動車保険を決める際には、自動車保険の一括見積もりの活用がおすすめです。必要な情報を入力するだけで、簡単に複数の保険会社のプランを一度に比較できます。特約やサービスの種類も豊富なため、十分に比較、検討したうえでご自身にとって適切な保険を選ぶようにしましょう。
自動車共済は、組合員が拠出した掛金(保険料)で共同の財産を準備して、自動車事故などが起きた際にはその財産から共済金を支払うことで、組合員やその家族の生活安定をはかるしくみです。
したがって「自動車事故などの補償をおこなう」という役割自体は、一般的な自動車保険と共通していますが、内容を比較するとさまざまな違いもあります。
自動車共済は、自動車保険よりも掛金(保険料)をおさえられるというメリットがありますが、補償内容や等級制度(ノンフリート等級制度)が自動車保険とは異なるため、すでにほかの自動車保険に加入している場合は、商品の内容について十分確認しましょう。
また、補償内容は一般的な自動車保険とあまり変わりませんが、全く同じというわけではないため、自動車保険と自動車共済の違いを理解したうえでの検討をおすすめします。
なお、自動車一括見積もりサイトであれば、一度に複数の任意自動車保険の見積もりができます。任意の自動車保険への加入を検討している方は、保険料や補償内容、サービスなどを比較してご自身にあう保険をみつけましょう。
RAPPORT Consulting Office (ラポール・コンサルティング・オフィス)代表。名古屋大学工学部機械・航空工学科卒業。証券会社、生損保代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。お金に関する相談や記事の執筆・監修を通じ、自身のお金の問題について自ら考え、行動できるようになってもらうための活動を行う。ミニマリストでもあり、ミニマリズムとマネープランニングを融合したシンプルで豊かな暮らしを提案している。趣味はサウナ(サウナ・スパプロフェッショナル)。
https://www.rapportco.com/
【保有資格】
1級ファイナンシャルプランニング技能士、日本FP協会会員(CFP®)
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの最終更新日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2021年5月31日)
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