(最終更新日:2023年1月19日)
交通事故を起こしたとき、あるいは巻き込まれてしまったとき、相手方との交渉がスムーズに進まないことは少なくありません。過失割合でもめてしまう、保険の知識が足りず、交渉に不慣れでうまく話が進まない…など、理由はさまざまです。
では、交通事故の相手方との交渉が進まずに困ったときには、どこに相談すればよいのでしょうか?この記事では、トラブルが起きたときに、どのように解決できるか、どこに相談できるか、よく起きるトラブル例をもとにご紹介します。
どんなに気をつけて運転をしていても、起きしまう可能性がゼロではないのが交通事故。万が一の事故に備えて、自賠責保険や任意保険で事前に備えたとしても、事故の相手方とのやりとりの中でトラブルが生じることは少なくありません。そんなときには、しかるべき場所に相談するとよいでしょう。以下のように、さまざまな無料の相談窓口があります。
相談場所 | 相談できる内容 | 料金 |
---|---|---|
公益財団法人 日弁連交通事故相談センター http://www.n-tacc.or.jp/ |
交通事故の相談や示談のあっせんを弁護士に行ってもらえる。また、交通事故発生初期の段階(たとえば事故直後や治療中)でも面接相談・電話相談を無料で行っている。 | 無料 |
公益財団法人 交通事故紛争処理センター http://www.jcstad.or.jp/ |
交通事故の示談をめぐる紛争解決についての相談や和解のあっせんを、弁護士に行ってもらえる。また、和解あっせんが不調に終わった場合は、審査を申し立てることができる。 | 無料 |
一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構 http://www.jibai-adr.or.jp/ |
保険金の支払いなどに関する相談や調停を行ってもらえる。 | 無料 |
各都道府県の相談窓口 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/koutu/sosei_safety_fr1_000008.html |
各都道府県庁や市役所、また交通安全協会で、交通事故の相談ができる。 | 無料 |
自動車保険に関する相談窓口として ・そんぽADRセンター ・加入している保険会社 |
自動車保険の事故対応などについて相談できる。 | 無料 |
出典:一般社団法人日本損害保険協会 交通事故被害者のために(2022年度版)
(https://www.sonpo.or.jp/report/publish/bousai/ctuevu00000053nj-att/2022tameni_book.pdf)
どのようなときに、どのような相談窓口を利用すればよいのか、以下の4つの交通事故のトラブルを例にご紹介します。
交通事故では示談交渉が思うように進まないことがあります。たとえば、交通事故が起きてしまったけれど、相手側が任意保険に入っていなかったという場合には、賠償金をきちんと受け取れないなど交渉が進まないこともあるかもしれません。
前述のように示談交渉が思うように進まない場合には、まずは「日弁連交通事故相談センター」へ相談するとよいでしょう。日弁連交通事故相談センターは、日本弁護士連合会が設立した交通事故の相談センターで、全国約150カ所の相談所で対応しています。 弁護士が公正・中立な立場で無料相談に応じるとともに、弁護士が斡旋人となり示談交渉の成立をサポートします。 ただし、相談できる内容は、自賠責保険への加入が義務づけられている車両による国内の事故(民事関係の問題のみ)についてです。具体的には、主に以下の相談を受けつけています。
【日弁連交通事故相談センターの主な相談内容】
出典:公益財団法人日弁連交通事故相談センター ホームページより転載
(https://n-tacc.or.jp/qa#st-toc-h-4)
日弁連交通事故相談センターには、事故の被害者、加害者を問わず相談できます。 また、全国約150カ所の相談所があるため、利用しやすいといえるのではないでしょうか。ただし、民事関係の問題のみの相談となり、刑事処分、行政処分の相談は受けていません。相談方法は電話と面接で、原則5回まで無料相談に応じています。
示談交渉が進まない場合、日弁連交通事故相談センターに相談するほか、自分で直接、弁護士にも相談することができます。相談回数などを気にしたくない方は、交通事故問題の解決を得意としている弁護士に直接相談するとよいでしょう。ただし、自動車保険に加入して「弁護士費用特約」を付加していない場合、弁護士費用は自己負担する必要があります。
(※弁護士費用特約については、後述の「保険会社の弁護士費用特約を利用する」を参照)
自動車の「もらい事故」に巻き込まれた場合、被害者側の保険会社は示談交渉を行えません。もらい事故とは、自分に責任がない事故、つまり相手方に100%の過失がある事故です。具体的には、以下のような例がもらい事故にあたります。
このようなもらい事故では、保険会社に示談交渉を行ってもらえないため、ご自身で相手方と交渉することが前提となります。
相手方との交渉においては、一般的には、内容証明郵便で損害賠償請求通知書を送るといった方法があります。なお、交渉が成立しない場合には、訴訟によらず簡易かつ迅速に紛争解決を目指すADR(裁判外紛争解決手続)を利用する、相手の住所を管轄する簡易裁判所へ民事調停を申し立てる、訴訟手続きを利用するなどの方法が考えられます。
弁護士費用特約とは、自動車保険などに付加できる特約です。相手に法律上の損害賠償請求をするためにかかった弁護士費用、法律相談費用を保険会社が支払限度額内で補償してくれます。ただし、弁護士費用の範囲は保険会社により異なり、また、弁護士費用のうち、あらかじめ保険会社の同意を得た費用のみを支払うとしている保険会社もあります。弁護士費用特約を付加しておくことで、もらい事故に巻き込まれたときに弁護士費用を気にせず弁護士に相談したり、示談交渉を任せたりすることができます。
なお、自動車保険に弁護士費用特約をつけていない場合は、自費で弁護士に相談する必要があります。
なお、弁護士費用特約の補償対象となる方の主な範囲は以下のとおりです。
※対象となる人の範囲は、保険会社および保険によって異なる場合があります。
交通事故の相手側(当事者)や、相手側の保険会社から提示された後遺障害の等級や慰謝料額に納得できない場合は、公益財団法人交通事故紛争処理センターへ相談できます。
交通事故紛争処理センターの主な対応内容 | |
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法律相談 | 相談担当弁護士が申立人の主張や資料などをもとに問題点の整理をし、和解あっせんを前提とした助言を行う。 |
和解あっせん | 申立人が和解あっせんを要請し、相談担当弁護士が必要と判断した場合、申立人側、加害者側の双方に来所を要請し和解あっせんを行う。相談担当弁護士は双方の主張を聞き、公正中立な立場で和解あっせん案を提示する。 和解あっせんにより合意に至った場合は、示談書または免責証書を作成 |
審査 | 和解あっせんが不調となった場合、14日以内に審査会による審査を申し立てできる。審査会では審査員が双方の主張を聞いたうえで裁定が行われる。申立人が裁定に同意した場合、保険会社などは裁定を尊重しなければならない。 |
なお、自転車同士の事故など、加害者が自動車ではない事故、自身が契約している保険会社などとの保険金支払いに関する紛争、自賠責保険の後遺障害の等級認定などに関する紛争、相手の保険会社がわからない事故などには、交通事故紛争処理センターを利用できません。事故直後や治療中などの示談に至らない段階の場合も、利用の対象外となります。
交通事故では過失割合の判定に納得がいかないこともあります。過失割合とは、交通事故での加害者と被害者の責任の割合をいいます。その場合は、主に以下の方法で対処する方法があります。
自身で示談交渉を行う方法もあります。あるいは、自動車保険に弁護士費用特約をセットしている方は、弁護士費用特約を利用したうえで弁護士に過失割合についての交渉を依頼することもできます。専門家に依頼することで交渉をスムーズに進めやすくなります。
前述の公益財団法人日弁連交通事故相談センターによる示談のあっせん、公益財団法人交通事故紛争処理センターによる和解のあっせん、など裁判によらない紛争解決の手続きを利用することができます。
また、損保会社と過失割合で折り合いがつかない場合は、「そんぽADRセンター」へ相談することもできます。そんぽADRセンターとは、損害保険会社との間に起きたトラブルに関する苦情受付、紛争に関する解決の支援などを行っている機関です。弁護士などで構成される紛争解決委員が、公正・中立な立場で解決支援を行ってくれます。
出典:一般社団法人日本損害保険協会 相談対応、苦情・紛争の解決(そんぽADRセンター)
(https://n-tacc.or.jp/qa#st-toc-h-4)
双方の主張がぶつかり示談交渉が全く進まない場合は、民事訴訟を起こすことができます。裁判所は、双方の主張を聞いたうえで妥当な過失割合などが判断されます。民事訴訟を起こしたい方は、弁護士に相談しましょう。
交通事故に巻き込まれると、どのように対処すればよいか混乱してしまう方は少なくないことでしょう。お困りの方は、落ち着いて適切な機関へ相談しましょう。代表的な相談場所として、公益財団法人日弁連交通事故相談センター、公益財団法人交通事故紛争処理センターなどが挙げられます。また、自動車保険に加入している方は、弁護士費用特約を利用して弁護士に相談することも可能です。1人で悩まず、専門家に相談するようにしましょう。
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