公開日:2024年11月13日
自動車保険の契約時など、車両保険の付帯を検討する際には、免責事項や免責金額など「免責」という言葉がよく出てきます。「免責」と名のつく用語は保険金の支払いに直接関係する重要な用語であるため、しっかりと理解することが重要です。しかし、初めて自動車保険に加入する方だと、「難しい」と感じることもあるでしょう。
この記事では、車両保険における免責や免責金額とは何か、免責金額はいくらに設定するべきかなどについて解説します。
免責とは「責任の追求を免れること」を指す言葉です。
保険商品において使用される免責という言葉は、「損害が発生した際に保険会社が保険金を支払う責任を負わないこと」を意味します。
本来、保険会社は損害が発生した場合、契約内容に基づいて保険金を支払う義務を負います。しかし、特定の事項に該当する事故の場合は、保険金を支払う責任を負いません。
どういった状況下で免責が適用されるのかは、保険会社が定める「免責事項」から確認できます。免責事項とは保険金が支払われない範囲のことで、例として「戦争や地震による被害」「噴火などによる車の損害」「詐欺や横領による損害」などがあげられます。
事故内容がこれらの免責事項に該当する場合、保険商品による補償は受けられません。
車両保険には、免責事項のほかに「免責金額」も定められています。免責金額とは、保険会社が支払う責任を負わない金額、つまり車の修理費などの自己負担額です。車両保険を契約している車に損害が生じた際は、免責金額を設定していない場合に支払われる保険金から免責金額を差し引いた金額が支払われるしくみとなっています。
たとえば、10万円の免責金額を設定している車両保険を付帯している状態で、事故によって車の修理費が30万円かかったとします。この場合、免責金額として設定している10万円は自己負担額となり、免責金額の10万円を差し引いた20万円が保険金として支払われます。
ただし、車が全損している場合は、保険金支払いの際に免責金額は差し引かれません。
設定できる免責事項の範囲は、保険会社によってさまざまです。免責金額に関してもご自身で設定する場合と保険会社であらかじめ設定されている場合に分かれるため、事前に確認しましょう。
なお、修理費が免責金額より低い場合や同額の場合は、自己負担分のみで修理できるため、保険金は支払われません。
さらに、免責金額は車両保険だけでなく、対物賠償責任保険への加入時にも設定が必要な場合があります。
それでは、免責金額はどのように選び、いくらに設定するべきでしょうか。以下では、車両保険の免責金額に関する内容をより詳しく解説します。
車両保険は衝突事故や接触事故、いたずらなどでご自身の車に損害が生じた場合の修理費を補償する保険です。車両保険の保険金の上限額は車の型式や年式などによって決められ、車に損害が生じた際は損害額から免責金額を差し引いた金額が保険金として支払われます。
車両保険は、あらかじめ免責金額が設定されている商品と、契約時にご自身で免責金額を設定できる商品に分かれています。また、契約時に設定できる場合は、「増額方式」と「定額方式」の2パターンから免責金額を選ぶことが可能です。
【車両保険の免責金額の設定方法】
以下では増額方式と定額方式の各特徴をご紹介します。
増額方式とは、1回目の事故と2回目以降の事故で免責金額が変わるタイプの方式です。
たとえば、保険証券上に免責金額が「5-10万円」などと表記されていることがありますが、前者が1回目の事故、後者は2回目以降の事故における車両保険の免責金額を示しています。具体的には、1回目の事故で5万円、2回目の事故では10万円の自己負担額が発生することを意味します。
増額方式では、1回目の事故での自己負担をおさえられるため、車を購入したばかりで運転に慣れていない方や、事故への不安が大きい方に向いています。
増額方式の免責金額のなかには「0-5万円」「0-10万円」などと、1回目の事故に限り免責金額を0円とすることができる保険会社もあり、事故時の自己負担額を可能な限りおさえたい方におすすめです。
特約として上記のような免責金額の設定が可能になる保険会社もあります。具体的には、ほかの車との衝突や接触事故があった場合に適用される「車対車免責ゼロ特約」が代表的です。ただし、特約の名称は保険会社や商品によって異なる点には注意しましょう。
一方、定額方式は事故の回数にかかわらず一定額の自己負担額が適用される方式です。保険証券上には「5-5万円」「10-10万円」などと、前者(1回目の事故の免責額)と後者(2回目以降の事故の免責額)で同じ金額が表記されます。たとえば「10-10万円」の定額方式を選んだ場合は、何度事故を起こしても10万円分の自己負担が発生します。
増額方式とは異なり1回目の事故の自己負担額を軽減できないものの、定額方式には保険料をおさえやすいという特徴があります。詳しくは後述しますが、設定した免責金額は保険会社に支払う保険料に影響します。定額方式で高い免責金額を設定している場合は、その分の保険料をおさえやすくなります。
よって、保険料の負担をおさえたい方には定額方式がおすすめです。また、少額の修理費ならご自身で負担しても問題ないという方にも向いています。
ご自身で免責金額を設定する際には選べる金額の選択肢が多いため、いくらに設定するべきか悩む方もいるでしょう。その場合は、保険料への影響を考慮した設定をおすすめします。
前述のように、車両保険に設定できる免責金額は保険会社に支払う保険料の金額に影響します。一般的な車両保険は、免責金額が高いほど保険料をおさえやすくなり、免責金額が低いほど保険料が高くなるしくみです。
そのため、保険料の負担を軽減したい場合や少額の修理費なら自己負担でも構わないと考える方は、免責金額を高めに設定すると良いでしょう。
一方で、事故時の自己負担をおさえたい場合や運転に自信がない場合は、免責金額を低く設定すると安心です。保険料だけで考えるのではなく、事故時にどのくらいの負担が発生するかを考えながら免責金額を設定することが大切です。
自動車保険には、事故歴に応じて保険料の割引きや割増しを適用する等級制度(ノンフリート等級制度)が設けられています。
1年間無事故の場合には次年度に等級が1等級上がり、保険料により大きい割引き率が適用されます。一方で、保険金を受け取る事故が発生した場合は翌年の等級が下がり、前年に比べて割増しされた保険料が適用されるしくみです。
たとえば、3等級ダウン事故で車両保険を利用した場合は等級が3つ下がり、事故有係数適用期間(事故があった場合の割引きや割増し率を適用する期間)が3年間増えます。数万円程度の損害額で車両保険を利用すると、等級が下がって翌年度以降の保険料の値上がりが損害額以上となる場合があるため注意してください。
なお、等級を下げたくない場合は、免責金額を高く設定するのもひとつの方法です。事故時の修理費が免責金額以下の場合は保険金が支払われないので、等級が下がらず、翌年度の保険料も高くなりません。
車両保険を契約している車に損害が生じた場合、一般的には設定されている免責金額を保険会社に対してではなく、車の修理が完了した際に修理工場へ直接支払います。
なお、具体的な支払い方法は修理工場によって異なるため、心配な方は事前に確認すると良いでしょう。
車両保険の免責金額を設定していても、状況次第では自己負担なしで補償される場合があります。以下では、代表的なケースを紹介します。
損害が生じた車の修理が物理的に不可能な場合や、修理費が事故時点の車両の市場価格を上回っている場合は「全損」の扱いです。たとえば、以下のケースに該当する車は全損とみなされます。
【全損とみなされるケース】
なお、車両保険を契約している車が全損の状態にある場合、支払われる保険金から免責金額は差し引かれません。
衝突や接触事故など相手がいる事故で、かつ事故の相手にも過失がある場合には、相手側から賠償金が支払われます。支払われた賠償金は免責金額に充当されるため、賠償金が免責金額を上回る場合は自己負担不要で補償を受けられます。
たとえば、10万円の免責金額を設定している状態で起きた事故で車に40万円の損害が発生し、こちら側に40%、相手方に60%の過失割合があったとします。この場合、相手方からは40万円の損害のうち60%にあたる24万円が賠償金として支払われ、残りの金額はご自身の車両保険から支払われます。
上記のケースでは賠償金が免責金額を14万円分上回っているため、自己負担なしで車を修理できます。
自動車保険の加入時に車両保険も付帯したいけれど、保険料の負担が気になるという場合は、複数の自動車保険を比較して決めるとよいでしょう。また、すでに自動車保険に加入している方でも、車両保険を付帯していて保険料をもう少しおさえたいという場合には、保険の見直しをするのもひとつの方法です。
自動車保険にはさまざまな種類がありますが、複数の保険からご自身にあう商品を探す際は、自動車保険の一括見積もりが役立ちます。見積もり結果をもとに、複数の自動車保険の保険料や補償内容を比較できるため、ご自身のニーズに適した保険を効率的に探せるでしょう。
車両保険の免責金額は、支払う保険料とのバランスを考慮して設定することが大切です。また、免責金額は自己負担での修理が可能かどうかや事故への不安の度合いによっても適した方式や金額が変わります。
免責金額の選択肢は保険会社によって異なるため、事前によく見比べることも重要です。具体的な金額や特約の有無などを確認し、ご自身の状況にあわせて免責金額を設定しましょう。
よりご自身にあった車両保険がついた自動車保険に切り替えたい場合は、複数の保険を手軽に比較できる保険の一括見積もりサイトをぜひ活用してください。
ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定※を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。
【資格情報】 日本FP協会会員(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年11月13日)
2410545-2510
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