(最終更新日:2022年12月28日)
子どものライフイベントは保険見直しの絶好のチャンスです。自動車保険に関していえば、子どもが運転免許を取得したり、就職して独立したり、結婚する場合などで、補償内容やプランの見直しは必須です。そこで今回は、子どもと自動車保険の見直し方法について、わかりやすく解説します。
子どもが18歳になって「運転免許を取りたい」という希望を口にすることはよくあります。親としては成長をうれしく思う反面、子が車を運転するとなると心配になるもの。経験の浅い新米ドライバーであることや、駐車場の問題、10代~20代の事故率の高さを踏まえ、子どもがたまに運転する程度であれば、車を新しく買うのではなくまずは親の車を借りて子どもが乗る形から始めて様子を見るのが一般的です。
ただし、親子で一台の車を運転するときは、親の自動車保険の見直しもお忘れなく。親だけが乗っていたときのままでいると、子どもが運転して起こした事故が“補償対象外”になる危険性があるからです。確認すべきポイントは主に2つあります。
1つめの要注意ポイントは、現在加入中の自動車保険に「運転者限定特約」が付いているときです。
※上記の範囲は保険会社によって異なります。
本人限定 | 本人・配偶者限定 | 家族限定 | 限定なし | |
---|---|---|---|---|
(1)記名被保険者 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
(2)記名被保険者の配偶者 | × | 〇 | 〇 | 〇 |
(3)(1)または(2)の同居の親族 | × | × | 〇 | 〇 |
(4)(1)または(2)の別居の未婚の子 | × | × | 〇 | 〇 |
(5)(1)または(2)の別居の既婚の子 | × | × | × | 〇 |
(6)上記以外(友人・知人など) | × | × | × | 〇 |
【補償される運転者の範囲】の表を見ると、「本人限定」あるいは「夫婦限定」では子どもが運転したときに対象外になってしまうことがわかります。従って、「本人限定」「夫婦限定」が付いているときは「限定なし」に変更しておくと安心です。
なお、「家族限定」に切り替えれば補償範囲も適切で保険料水準も手頃で合理的ですが、残念ながら、今現在は「家族限定」を廃止した保険会社が増えています。今の契約先の保険会社で「家族限定」を取り扱っていなければ、取り扱いがある保険会社を探して乗り換えるか、「限定なし」に変更しておきましょう。
要注意ポイントの2つ目は、子どもが同居している場合の「年齢条件」の見直しです。「全年齢補償」のほか、「21歳」「26歳」「30歳」「35歳」といった年齢以上を補償する区分が用意されていて、対象の年齢幅が狭いほど保険料の割引が受けられるしくみになっているからです。
区分は保険会社ごとに異なるのですが、たとえば、「全年齢補償」、「21歳以上補償」、「26歳以上補償」の3区分の場合は以下のようなイメージになります。
出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況2022年度(2021年度統計)」より抜粋
若い人は事故率が高い傾向にあるため、たとえば「全年齢補償」と「26歳以上補償」とでは、保険料に3倍近くの差が生じます。そのため、親だけが運転しているご家庭では、何らかの「年齢条件」を設定しているのが一般的です。
逆にいえば、子どもが運転することになった場合は、子どもの年齢に合わせて適切な条件に変更することがとても重要です。
子どもが免許を取得したことを機に「運転者限定特約」や「年齢条件」を変更すると、保険料負担は現状よりも大幅にアップする可能性があります。これらはいずれも保険会社によってバリエーションや割引率が異なるため、一括見積もりサイトなどで他社と相見積もりを取り、より良い条件のところに乗り換えるのも一策です。
さて、ご家庭によっては、親と子が別々の車を運転することもありますね。考えられるパターンには主に以下の2つがあります。
シンプルに考えれば、パターン1がわかりやすく理想的に思われるかもしれませんが、実は、自動車保険料の関係でパターン2を選ぶご家庭も少なくありません。
免許を取り立ての人が多い10代は特に、事故率が高いものです。自動車保険料の見積もりを取ってみたら年間20万円を超える試算が出ることもあります。とくに学生の間は、子どものアルバイト代で自動車保険料を払い続けるには無理があるため、親が2契約分とも負担するケースを多く見かけます。
となると、実は、親子が同居の場合であればパターン2の乗り方をすることによって、パターン1よりも自動車保険料を抑えるテクニックが使えます。せっかく買った新車には親が乗って、親の古い車に乗る子どもを見かける背景には、「事故率が高い免許を取り立ての子どもに新車を運転させるのは怖い」という親の気持ちの他、自動車保険料が大きく関係しています。
自動車保険料の決まり方をざっくりいうと、安全運転歴が長いベテランドライバーほど安く、年齢が若い初心者ドライバーほど高くなるしくみになっています。そこで、親の車と自動車保険を子どもに譲ることで、子どもの自動車保険を低く抑え、2契約分の自動車保険料をトータルで安くすることができるのです。
ここで、自動車保険料について、もう少し深堀りしてみましょう。耳慣れない人もいるかと思いますが、安全運転歴が長いベテランドライバーほど安くなるという自動車保険料の特徴は「ノンフリート等級」という制度に基づいています。ノンフリートという言葉は、保有・使用する自動車数が10台以上(フリート)ではないという意味です。
一般家庭の車の台数はたいてい9台以下のため、ノンフリート等級の適用を受けます。スタートは、初めての契約の場合は6等級からで、1年間無事故であれば次年度の契約は1等級アップした等級(契約2年目なら7等級)が適用されます。逆に、事故を起こした次年度は1回の事故につき3等級ダウンの等級が適用されます。
等級が上がるほど保険料の割引率が高くなる
図にあるように、等級が上がるほど割引率が大きくなるため保険料は安くなります。一方、等級が下がるほど割引率が小さくなったり割増しされて保険料が高くなったりします。更に、事故ありの場合と無事故の場合では、同じ等級でも割引・割増率に差があります。
そのため、安全運転を長く続けてきた親の等級を、保険料が高額となる子どもに引き継ぎ高い割引率を適用させて、親は自動車保険を新規で契約することで、2契約分の保険料の総額を抑えることができるのです。
同居の親子間における等級の引継ぎ
なお、等級の引継ぎは、親子では同居の場合に使えますが、別居の場合は使えない点はよく理解しておきたいところです。たとえば、子どもが進学で下宿しているケースでは、たとえ住民票を移していなかったとしても実態として別居しているため、等級の引継ぎはできません。
言い方を変えれば、将来的に別居の予定がある場合は、同居のうちに等級の引継ぎをしておくのが合理的です。
新車の契約の際に「セカンドカー割引」を利用することも視野に入れておきたいところです。これは、普通なら6等級から始まるノンフリート等級が、1つ進んだ7等級からの契約にできるという割引制度です。1台目の自動車保険が他社で契約したものであっても大丈夫なので、前向きな検討がおすすめです。
まとめると、セカンドカー割引はパターン1の場合も条件を満たせば利用できますが、親子で別の車に乗る際に自動車保険料の総額をできるだけ抑えるなら、パターン2にあるように、親子間の保険契約譲渡(等級の引継ぎ)をした上で、セカンドカー割引を組み合わせるのが効果的です。
等級の引継ぎにあたっては、契約者(保険料を支払うなど保険契約の当事者になる人)や記名被保険者(契約車両を主に運転する人)などの変更手続きも必要になるため、親子で別の車に乗る方針が決まったら、契約先の保険会社に早めに相談しておくと安心です。
初心者ドライバーの保険料は高くなりがちではありますが、裏を返せば、それだけ事故が多い現状があります。
「車庫入れを失敗した」「ポールやガードレールにぶつかった」といった比較的軽い事故のほか、「運転操作を誤って自宅の塀にぶつけた」「山道で運転操作を誤り谷へ転落した」といった重大事故などの自損事故も気がかりという人が多いです。
そのため、自動車保険で自損事故までカバーしたい人は、車両保険は「一般条件」での契約がおすすめです。【車両保険の種類と補償範囲の違いの例】にあるように、車対車+A(エコノミー型)などの「限定条件」で契約すると自損事故は補償されないことは注意しておきましょう。
車両保険の種類と補償範囲の違いの例
車両保険 (一般型) |
車対車+A (エコノミー型) |
|
---|---|---|
他人の自動車との接触や衝突 | 〇 | 〇 |
火災・爆発・台風・洪水・高潮・騒擾(じょう) | 〇 | 〇 |
飛来中または落下中の物との衝突 | 〇 | 〇 |
落書きやいたずら | 〇 | 〇 |
盗難 | 〇 | 〇 |
単独事故(自損事故) | 〇 | × |
当て逃げ | 〇 | × |
地震・噴火・津波 | × | × |
また、自損事故は貯蓄で修理するという方針であれば、車両保険を付けないという選択肢も。考え方は人それぞれですが、車両保険は原則として保険期間の途中で追加はできません。
子どもが家の車を運転する可能性が出てきて必要かもしれないと思ったら、他社への契約見直しや、契約更新のタイミングで「一般条件」または「限定条件」で付けておくのも手です。車両保険が付いていれば、期間の途中での「一般条件」と「限定条件」の変更は可能です。
子どもの免許取得のタイミングで自動車保険を見直す際は、補償内容や補償範囲について丁寧に見直してみてください。
子どもが大学生になって下宿となったり、あるいは、子どもが社会人になって一人暮らしを始めたりという場合にも、自動車保険の見直しは重要です。
たとえば、年末年始やお盆、ゴールデンウィークなどに帰省してきた子どもが、親の車を借りて運転するということは珍しくありません。
けれども、子どもの免許取得に合わせた自動車保険の見直しをしていないなら、子どもが運転するのはNGです。子どもが起こした事故が自動車保険の補償対象外となって保険金がおりない可能性があります。
そのため、別居の子どもがいつ帰ってきて運転しても大丈夫なように自動車保険を見直しておきたいという場合は、前述の「運転者限定」を「限定なし」または「家族限定」にしておけば大丈夫です。「年齢条件」については、あくまで同居の場合に適用される割引制度のため、別居の場合は影響を受けません。
ちなみに、自動車保険でいうところの「同居」「別居」は、住民票の記載や、同一生計であるかどうか、扶養関係があるかどうかは関係なく、あくまで生活の本拠がどこにあるかによって判断されるのが一般的です。
最近では、「1日自動車保険」を子どもが利用するケースが増えてきたように感じます。親の自動車保険を特に見直す必要はなく、子どもの運転中の事故について半日~1日単位で補償を得られるので便利です。子ども自身が、帰省前にコンビニエンスストアやウェブサイトで契約するケースが多いです。
ただし、取り扱っている保険会社はまだまだ限られています。また、対象となる親の車が自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、自家用軽四輪乗用車に限られ、自家用小型貨物車や自家用軽四輪貨物車では利用できないことが多い状況です。親の車の車種が理由で1日自動車保険が利用できないときは、親の保険を見直す形で対応しておきましょう。
また、もともと親の車を運転する予定がなかったのに、緊急時にやむなく親の車を運転することになったという話はよく聞きます。子どもの帰省は祝祭日や週末のことも多く、親の保険の補償内容を速やかに変更するのが難しいことも多いですが、1日自動車保険なら手軽にスピーディに契約できるので、もしもの事故時も安心です。
なお、1日自動車保険は1日当たり800~3,500円程度(プランによって異なる)が相場のため、頻繁に帰省するようなら親の保険を見直した方が合理的です。
子どもが結婚するとなると式の準備や新生活準備でバタバタしがちですが、そんな中やはり忘れてはいけないのが自動車保険の見直しです。補償をしっかり確保し、余計な保険料を負担しなくて済むように、このタイミングで早めに自動車保険の中身を確認して見直しを始めておくことが重要です。
いくつかのケースが考えられますが、まずケース1として、「親子で使用していた車を親のみが使用して、子どもは使用しなくなる場合」について見ておくと、「限定なし」あるいは「家族限定」にしていた「運転者限定」をもとの「本人限定」や「夫婦限定」に戻せば保険料負担が軽くなります。
合わせて「年齢条件」は別居の既婚の子どもは適用範囲に含まれないため、親だけに年齢条件を狭めれば保険料負担を軽くできます。
もしも、結婚した子どもが帰省の際などに親の車を運転するといった場合には、前述の1日自動車保険を子どもに入ってもらうように割り切ると良いでしょう。
続いてケース2として「親子で使用していた車を結婚した子どもが持っていって使用する(親は使用しない)場合」もありますね。この場合は、等級の引継ぎを視野に入れておくのがおすすめです。
親のノンフリート等級を引継ぐことができれば、子どもの自動車保険料を大幅に抑えることができ、毎年の自動車保険料に大きな差が生じます。
要注意なのは、親子が同居中でなければ等級の引継ぎができない点です。結婚式の前で忙しいタイミングかもしれませんが、同居中に自動車保険の等級の引継ぎは済ませておきましょう。
ケース3として、「子どもの結婚を機に、車を手放す場合」には、契約中の自動車保険の等級が7等級以上であれば中断証明書を発行しておくのがおすすめです。
中断から最大で10年間等級を保管しておくことができ、中断前のノンフリート等級を引継いで自動車保険を契約できるので、もしものときに安心です。
ただし、中断証明書の発行条件は保険会社ごとに異なるため、事前に保険会社に確認を行うなどの注意が必要です。
子どもが免許を取ると、一人前になったようでうれしく思う反面、もしもの事故のことを考えると不安が心をよぎります。自動車保険でしっかり備えていればひとまず安心なのですが、見直しの必要性を認識していなかったばかりに、子どもが事故を起こしてから後悔したご家庭も少なくありません。
「自動車保険は難しくてよくわからない」という理由で同一内容の契約を継続してきたという人も、子どもが運転するようになるタイミングで、早めに、保険会社に相談してみるのがおすすめです。なぜなら、子どもが運転することになった事実は保険会社では把握していないため、契約者自身が能動的に動かない限り、子どもの補償が抜け落ちてしまいがちだからです。
子どもの免許取得や独立・結婚は、自動車保険を見直す絶好のチャンスでもあります。これを機会に、補償内容や自動車保険のしくみへの理解を深めてみてはいかがでしょうか。
慶応義塾大学にて保険学を専攻。損害保険会社・生命保険会社勤務を経て1998年FPとして独立、現在に至る。今は個人のコンサルティングを主軸に、講演、執筆を行う。主な保険分野の著書に『「保険に入ろうかな」と思ったときにまず読む本』『知らないと損をする!間違えない保険選びのツボ』日本経済新聞出版社、『1時間でわかる やれば得する! 保険の見直し100の鉄則』技術評論社、『世界一シンプルな保険選び』日本文芸社などがある。
https://www.office-takeshita.com
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問合せください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度に基づくもので、すべての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
( 掲載開始日:2021年12月28日 )
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