2016.12.08

【シートベルト】車に乗る人を守ってくれるやつ

私は「調べる女」:シートベルトについても血眼で調べ上げる。どんだけスベろうとも。


私は「調べる女」。

『知らない』という言葉が大嫌いで、子供の頃から何でも調べたがる性分だった。
“あの子は物知りだ”と言われるのがとてつもなく嬉しくて、高尚な人種になった気がして、とにかく『知らない』というのを潰しにかかる子供だった。

ところが、周囲から半ば冷たい視線を向けられるようになったのが中学生になった頃。
あまりに知識の吸収に熱心で、度が過ぎていたのか、両親まで緩めに引きはじめた。
自分たちの子ではないのではないか?みたいな空気すら漂っていた。

そんなこんなで、ありとあらゆる苦難を乗り越えながら、とことんマイウェイを邁進し、私は通称「調べる女」と呼ばれるほどに街と学校で有名人になったのである。

そして大学生になり、初彼ができた。
類は友を呼ぶとはよく言ったもので、彼もウンチクが大好きだった。
二人の関係は恋仲というよりは、毎日議論ばかりで、お互いの知識をひけらかし合う戦友のような関係だった。
そうやって極めて充実した日々を過ごしていたわけだが、一点だけ、どうしても許せないことがあった。
彼は車を運転する時にシートベルトを着用しようとしないクセがあったのだ。

いくら諭しても、彼は同じことを繰り返す。
だから私は最終手段に出た。
もうシートベルトについて調べて、調べ上げて、シートベルトがいかに重要かというのを思い知らせてやる、と。


なぜならば、私は「調べる女」だから。
それ以上でも以下でもない。


もうこの段階で一番伝えたいメッセージ言うけど、『シートベルトはめっちゃ重要』。はい、時間ない人はここまででOK。お疲れ様でした。


ということで、時間ある人は続きを見ていきましょう。


今更説明するのも畏れ多いですが、シートベルトは衝突事故などを起こした場合、乗員に掛かる衝撃をコントロールしてくれる、シートにあるベルトですね。

急ブレーキもしくは追突時に強い衝撃を受けるなどした際に、瞬時にベルトをロックさせる機構を基本とする“プリテンショナー式”や、拘束力を一定に保ちつつベルトに掛かる負荷を軽減する“フォースリミッター式”が、シートベルトの仕様としては一般的です。
さらに近年では、ベルトの動きを感知し内部モーターが駆動する、“モータライズド・シートベルト”みたいなものも開発されています。


そんなシートベルトですが、現在では不可欠な機能としてどんな車にも標準搭載され、着用が義務化されたにも関わらず、未使用のまま運転する人は後を絶ちません。
それではあまりに寒く好ましくない状態なので、ここでシートベルトの重要性に触れておきましょう、ということになります。

シートベルトの歴史

シートベルト


Round 1

まずは重めのパンチをお見舞いする意味も込めて、シートベルトの歴史を用意。
興味がないものの歴史を聞かされたら、必ずや戦意が喪失するはずで、出鼻が肝心だ。

ネット、本屋、図書館で拾った情報をフル活用し、自動車メーカーのサポートセンターにも3時間ほど電話し、徹底的にシートベルトの歴史について調べ上げた。

そして、東京から箱根に向かうドライブの間、車内の話題はシートベルトの歴史のみ。
彼を追い詰めるにはそこまで極端にやるしかないのだ。


しかしながら情にほだされ、しばらく何も言わずに彼を観察していると猛烈に眠くなり、知らず知らずのうちに深めに落ちてしまい、箱根に着くまでとうとう彼がシートベルトを着用しているかどうかを確認できなかった。

どうやら第一ラウンドは完敗のようだ。
彼の不戦勝である。



◆ ◆ ◆




さて、シートベルトはフランスの技術者であるギュスターヴ・ルボーが開発したものが原型と言われ、最初は“自動車等防御用ベルト”と、割とそのまんまの呼称でした。
その後普及に至ったのは、1966年7月1日に施行されたアメリカの連邦交通車両安全法の影響で、安全基準の観点から自動車に搭載することが推し進められ、1967年から本格的に標準装備が広がります。

なお当初のシートベルトは2点式が主流でしたが、1959年にスウェーデンのボルボ社が3点式シートベルトを開発して特許を取得して以来、同社は販売権利を得たものの、人々の安全を守る装置として、無償でその技術を全メーカーに公開しました。
結果、3点式シートベルトが現在に続く自動車標準仕様となり、あらゆる交通事故から乗員を守る機能として重要な役割を果たすようになっていきました。


そして、日本の道路交通法においては、後部座席も含めたシートベルト着用が義務付けられたのが、平成20年6月からです。
仮にシートベルト未着用の状態で車を運転し事故を起こした場合、当然死亡確率も跳ね上がり、衝突時に車外へ投げ出される確率も着用時の20倍以上と言われますので、もしもの時にしっかり助かりたいのであれば正しい着用を心掛けましょう。

シートベルト未着用で罰則や反則金は発生する?

シートベルト未着用で罰則や反則金は発生する?


Round 2

今度はこちらがしっかり主導権を握るためにも、シートベルト未着用運転の場合の罰金について語るのがいいだろうと思ったのだが、結論から言うと、シートベルト未着用でも反則金は発生しないのである。

この辺をおもいっきり切り替えされて、“別にシートベルトしなくても、たいしたペナルティはない”というカウンターは是が非でも食らいたくなかった。
だから、第二ラウンドは次のラウンドに繋がる前菜のような役割を持たせることにした。

メインディッシュは第三ラウンドなのだから。
そこで決めてやろうと切に思う。



◆ ◆ ◆



実はシートベルト未着用運転による反則金はありません。
ですが、罰則はありまして、以下の通りです。


■運転席、助手席の未着用はどのような状況であってもドライバーが減点1点の対象

■後席シートベルトの未着用は、高速道路を走行時にドライバーが減点1点の対象



ということで、反則金を支払う必要はないので、違反切符の色は白色となります。
反則金が発生しないことから、シートベルト着用義務を軽く見ている人も多いかもしれませんが、ドライバーは確実に減点対象となるので、他の乗員に対してもシートベルト着用を呼び掛けるのが懸命です。


座席毎のシートベルト

シートベルト


Round 3

そろそろ勝敗が決すると思うと、ハラハラドキドキしてきた。
このラウンドでは、シートベルトを着用しないと、いかに悲惨な状況になるかをシンプルに語るつもりである。
おそらく会話時間も2時間は軽く超えてくると思われるので、地味に体力勝負だ。

私は決して負けない。
絶対勝利して、箱根から東京に戻る帰りのドライブでは、彼にシートベルトをスっと着用させてみせる。


前席・後席シートベルト

追突事故を起こした場合に発生する被害例として、怪我、死亡、車外放出、同乗者への加害があります。
現在ではエアバックも車に標準搭載されていますが、命を守るという意味では、エアバッグよりもシートベルトが圧倒的に大切です。

例えば前席に座った状態で事故が起こり、窓やドアに身体が叩き付けられると、仮に時速60kmで車が走行していた場合、高度14m(ビル4,5階相当)から落下して地面に叩き付けられるのと同等レベルの衝撃を受けることになります。
また、事故が起これば、後席も被害は甚大で、前席の人同様の衝撃を受けることはほぼ間違いありません。
後部座席は気を抜きがちなので、怠らずに必ずシートベルトを着用しましょう。

チャイルドシート

また、子供は抱きかかえていれば、どんな状況でも守れると思ったら大間違いで、例えば車が時速50kmで衝突を起こした際は物質重量がおよそ30倍に達し、体重10kgの赤ん坊でも300kgほどになります。
数百kgをしっかり止めて支えられるパワーがあれば話は別ですが、ほとんどの場合、子供は車外へと投げ出されてしまいます。

というわけで、チャイルドシートは子供の命を守るうえで、極めて重要だと改めて意識しましょう。


おわりに │ もうとにかくシートベルトはちゃんと着用してくれぃ │ もうこの設定だいぶシンドイから終わらせてくれぃ


Final Round

どうやって説得したかを述べているとゲロ長くなるので、いろいろ割愛するが、箱根からの帰りのドライブでは、ついに彼はシートベルトをスっと着用した。

もう勝った負けたはどうでもよく、涙が堰を切ったように溢れ出した。
私の存在も無駄じゃなかったと確信しての涙だった。
「調べる女」という格が活きたと感じての号泣だった。
あまりに嬉しくて、まだまだ残っているシートベルトの知識を彼に放出してやろうかとも思ったが、さすがにこの世のものとは思えないほどに疲弊している様子だったので控えた。



シートベルトについて話した時間、計8時間36分53秒。
私の人生の中でも、記憶と記録に残る一日だったと言える。



そして東京に戻った後、夕飯を一緒に食べている時に彼にこう言われた。


―――俺たち別れようぜ。俺たちのシートベルトはもう全く機能してないし、ひもグミみたいに柔らかくて、お前を守れないから。




◆ ◆ ◆




以上、シートベルトは車の乗員を守るうえで最も基本的な重要装置だということが、皆さんの頭に叩き込まれたのではないかと確信しております。
ちょっとそこまでだから、窮屈で肩が凝るから、と未使用のまま車を運転せずに、車に乗った直後にすぐ着用することを心掛けましょう。

ちなみに、シートベルトを着用していて事故に遭った時に適用される保険“シートベルト保険”というものが各クレジットカードに自動付帯されているはずなので、お手持ちのクレジットカードのサービス内容を調べておくと、頭の体操にもなっていいでしょう。



最後になりますが、是非とも「調べる男」「調べる女」になりましょう。
自ら調べ、自ら蓄え、自ら守り、自ら手足を動かし、自ら運を引き寄せ、自ら生きる。
これ結局、人生の成功の法則なのではないかと思うのです。


はい。
スベりすぎて、全身麻痺しているので、さようなら。






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