2016.05.09

《企業や組織で起きるは、現代版・お家騒動》殿のご乱心?「もう任せておけんぞ!」

地を固める雨がある。そこから咲く花がある。


こんにちは。
毎度、経済何でも伝道師、ピタゴラです。


本日のテーマは、ここ数年その件数が増加の一途をたどっている、お家騒動についてです。



あい?
お家騒動だぁ~??
どこのお宅で騒ぎがあったんだぁ~い??
といった方もいらっしゃると思いますので、まずは、お家騒動の定義をおさらいです。


お家騒動というのは、平たく言うと、企業や組織内で起こる【内紛】です。

その由来は江戸時代まで遡りますが、当時の大名家では、藩主やその一族、家老など、組織のトップの後継者となりうる立場の人間が、それぞれ派閥を作り上げ、内紛を繰り広げるという事例が多くありました。

そして、歌舞伎や狂言において、そういった内紛を脚色した演目を“お家騒動”というカテゴリにまとめて披露していたので、その余波が現代でも残っているといった感じです。


なぜ、企業のお家騒動は起きるのか?


お家騒動が勃発する理由は企業や組織によりけりですが、基本的には、地位や決裁権を巡る闘争ですね。

企業は“法人”ということからも分かるように、言わば、人間が寄り集まって出来た生き物であって、いくら繁栄しても必ず衰退する時が来ます。
経営やビジネスにおいて、右肩上がりで昇り続けるなんてことは、100%あり得ません。
成長停滞やそれに準じる不穏な空気や歪みに対して、人間の思惑がゴッツゴツに入り組んだ時、ひいては、体裁上も含め組織の転換期だと判断されるフェーズにおいては特に、お家騒動は起こりやすくなります。

なお、ご想像通り、表立って報道されていないにしても、大小様々なお家騒動が、常にどこかの企業や組織で起こっていると言っていいでしょう。



ところで、かつて一世を風靡し猛威を振るった平家も、貴重な教訓を文献として残してくれています。
以下は、しとどに有名な、誰もが一度は読んだことのある平家物語の冒頭の一節です。

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祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす
驕れる者久しからず ただ春の夜の夢の如し
猛き人もついには滅びぬ ひとへに風の前の塵に同じ

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要約します。


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祇園精舎の鐘の音は、この世の全ての物事が、常に変わりゆくことを教えてくれる響きがある。
沙羅双樹の花の色は、隆盛を極めている者であっても、いつかは滅びゆく理を表している。(※釈迦が死んだ時、四方を囲っていたシャラの木が枯れて、白く色が変わった)
奢り高ぶっている者も、決して長くは続かない。
それは短く浅い、春の夜に見る夢のようだ。
勢い盛んな者も、やがて滅んでゆくだろう。
それは、風に吹き払われる、塵と同じだ。

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形あるものはいずれ滅びますが、その過程では必ず、組織の存続を巡った人間同士のぶつかり合いが起きているのです。
そんな歴史は繰り返します。


いや、もう前段はいいから、企業のお家騒動の具体例を教えてくれ。


そうですね。
グッイグイ引っ張って、失礼いたしました。

現世に起こった実例を覗いてみましょう。

【CASE1】プレナス(ほっともっと)×ハークスレイ(ほっかほっか亭)


■時期:1999年4月~
■理由:商標権を巡った企業間の対立



持ち帰り弁当の「ほっともっと」や、定食処「やよい軒」を運営している、『株式会社プレナス』が1999年4月、当時経営再建中だった『株式会社ダイエー』から、『株式会社ほっかほっか亭総本部』の株式44%と、『株式会社ほっかほっか亭(東部エリア地域本部)』の全株式を取得しました。
プレナスは、九州を拠点とし、西日本で力を持っていた企業でしたが、これにより、東日本へ進出する機会を得た訳ですね。

そして、2004年3月には、プレナスが「ほっかほっか亭」を吸収合併することになりますが、2006年6月には『株式会社ほっかほっか亭総本部』が、『株式会社ハークスレイ』の傘下に入ることになります。
その後、プレナスが『株式会社ほっかほっか亭総本部』に「ほっかほっか亭」の商標使用料の支払いを求めた折、総本部側は“無償の独占使用権”を保有していると主張し、商標権使用料の支払いを拒否し続けたことで、両社の対立は激化していきます。
プレナスが損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起することに始まり、それから双方が訴訟を起こし合い、争いは泥沼化。
結果的には、2008年2月にプレナスが、「ほっかほっか亭」のフランチャイズ解約を総本部側に通知し、組織が二分され、現在に至ります。


【CASE2】大塚家具


■時期:2009年3月~
■理由:経営方針を巡った親子派閥間の対立



事の発端は、2009年3月に開催された、株式会社 大塚家具の株主総会です。
創業以来社長を務めてきた大塚勝久氏が会長に退き、その後任に、勝久氏の長女で、富士銀行(現みずほ銀行)出身の大塚久美子氏が社長に昇格する人事が決定されました。

そして、久美子氏は、父親の勝久氏が築いてきた接客サービス手法を、“現代にはフィットしない、客足を遠のかせる原因になっている”と、真っ向から反対する施策を採ることによって、業績改善を果たしていきました。
しかしながら、久美子氏の経営方針に対して、自ら築いたものを否定されたように感じたであろう勝久氏は、2014年7月の取締役会において、久美子社長の解任を提案します。
結果として、久美子氏は降格となり、再度、勝久氏が社長として現場に立つことになりました。

ここからは皆さんご存知の通りで、勝久氏が再登板するものの、業績は思ったようには伸びず、2015年1月の取締役会にて、久美子氏の社長復帰および勝久氏の会長専任が決定しました。
ところが、その後の取締役会で、双方が双方を組織から外すよう、新たな組織改変を提案したことで、事態は一気に泥沼化していきます。
最終的には、企業の所有者である株主に是非を問う流れとなり、2015年3月27日に開かれた株主総会において、久美子社長の提案が委任状を含めた有効株式数の過半数の支持を得て、可決されたことで、勝久会長は会長職を解任され、取締役からも外されることになりました。


【CASE3】ロッテグループ


■時期:2015年1月~
■理由:日韓を股に掛けた兄弟間の闘争



父親と次男が結託し、長男を組織から追い出す。
そんな文字通りのファミリー・ストーリーが展開されたのは2015年1月のことです。

騒動の主因は、ロッテグループの経営体制にあって、ロッテにとって韓国は非常に大きく重要なマーケットなのですが、代表取締役会長の重光武雄氏の長男(宏之氏)が日本ロッテグループ、次男(昭夫氏)が韓国ロッテグループの指揮権を執っていたところに端を発します。

その後、長男が次男の経営する韓国ロッテの株式買い増しを行い、次男の経営権を意図的に奪おうとしたことが、父親の怒りを買い、結果的に長男が経営から外された、という事例です。


【CASE4】クックパッド


■時期:2015年11月~
■理由:創業者と経営陣の経営方針の違い



こちらが直近に発生し、大きく話題となっているお家騒動ですね。
食を中心にレシピサービスのさらなる発展を主張するクックパッド創業者(佐野陽光氏)と、食やレシピサービス以外にも多様なサービスを充実させるべきだと多角経営を進める経営陣(穐田誉輝社長ら)との対立が、2015年11月に表面化しました。

その後2016年1月に、佐野氏が株主提案として、現経営陣の刷新と自身の社長職への復帰を求めましたが、それに対して取締役会が提案を棄却したことで、争いが激化していきます。

当時社長だった穐田氏は、サービス多角化に向け、家計簿アプリ<Zaim>運営会社への出資や、結婚式場口コミサイト<みんなのウェディング>運営会社の買収などを積極的に進めていましたが、それに対して佐野氏は、自らが作り上げたレシピサービスへの投資集中を主張していました。

そして、この度2016年3月24日の定時株主総会にて、佐野氏ら9人の取締役選任議案が可決され、佐野氏側が提案したメンバー6人が選ばれ、取締役の3分の2を占める結果となりましたね。
同時に、穐田前社長は退任し、佐野氏側の岩田執行役が新社長に就任する運びとなりました。

という訳で、株主たちからは、クックパッドは手広いサービス形態ではなく、食分野を軸にしたブレない経営を期待されている、ということに他なりません。


最後に


お家騒動を引き起こす要因と仔細はそれぞれではありますが、企業や個人の繁栄と、国や社会全体の幸せを願っているというのが大前提にあってしかるべきで、実際、経済活動を行う人間は皆そういう想いをベースに、日々仕事を遂行しているはずです。
そういう意味では、私利私欲が暴走するパターンを抜きにして考えれば、お家騒動というのは、半ば自然現象なのかもしれません。


先日、日本有数の大企業、セブン&アイ・ホールディングスでも大きな動きがありました。
10年以上務めたCEO職を退くことになった鈴木敏文氏は、オムニチャネル戦略など抜本的経営改革を実践しながら、大きな実績を残していたにも関わらず、事実上の解任という形になりました。

この事例は、業績面とは別のところでの世代交代の波が、社会全体にジワジワ押し寄せて来ていることをも如実に表しています。
お家騒動はその見た目上、経営方針や文化の違い、感情のもつれによることが多い訳ですが、その裏ではまた別のパワーも働いていて、時代が変われば、経済や企業、組織を引っ張り、商材を提供する中心世代も、はたまた商材を消費する中心世代も変化していくのです。
要するに、旧態依然とした経営体質の維持ではなく、加速度的な新陳代謝と権限委譲が進むという、不可抗力的なメッセージも読み取れると思います。


当然ながら、こういった一種のパラダイムシフトは、今後ますます勢いを強めていくでしょう。


そんな中、株主総会等で起案される内紛事案には意識的に目を向けると、リアルな組織経済のダイナミズムに触れることができるのでオススメです。



ということで、今回はこの辺で。






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