2018.01.17

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.10 (2/4)




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11:10 │ 東京タワー/自然体の引力

バスストップ


/TOKYO-TOWER






日比谷から南下するバスの車内、カーリーが意外な過去を話し始める。


カーリー




―――私、カナダ時代に鉱山でバイトしてたんですよ。毎朝4時に起きて、5時にキャンプ場から鉱山まで、バスに揺られて移動して。

「それ、スゴいね。なんでやろうと思ったの?」

―――父も義理の母も、鉱山での仕事をしてたんですよね。





聞けば、大学の学費を払うために、カナダのブリティッシュ コロンビア州の鉱山で働いていた時期があったのだという。

ブリティッシュ コロンビア州は、太平洋とロッキー山脈に囲まれたカナダ西海岸に広がる超絶雄大な州。
その面積は日本の約2.5倍で、かのグレイシャー国立公園を擁し、樹木が茂る温帯雨林、砂漠地帯、氷河を抱いた山岳地帯など、変化に富んだ美しい景観を有する地域として、つとに有名。
そこでは1860年代以降のゴールドラッシュを皮切りに、金や銀を掘り起こすワークがずっと存続しているらしい。

当のカーリーも、ネイティブアメリカンの父や彼女を実の娘のように可愛がってくれる義理の母に感化され、鉱山で働いてみようと思ったとのことだが、生半可な心持ちでこなせる仕事ではないことは容易に想像がつく。





そのうちに、バスは東京タワーに到着。





―――うわぁ、東京タワー久しぶり!やっぱりカッコいいね!


カーリー

記念写真パネルの前でご機嫌ポーズ



雲ひとつない日本晴れの中、赤いシンボル塔は今日も昂然とそびえ立つ。

東京都港区芝公園にある高さ333m、この総合電波塔の存在感は、竣工半世紀以上経った現在でも一向に錆付くこともない。





それから地上150mの大展望台へと上がる途中、またもや話題は鉱山に。



「かなりキツい環境だったんじゃない?」

―――そうですね。リゾートバイトみたいなもので、期間中は鉱山の近くでキャンプするんです。朝の4時に起きて5時にバスに乗り込んで、5時半に鉱山到着。それから12時間、ずっと働きっぱなし。2週間働いて2週間休んでっていうのを3ヶ月続ける感じ。

「女子、ほとんどいないでしょ」

―――300人ほどいる中で、女性は20人くらいかな。まあ、女ってだけで、嫌がられたりしたこともありましたね。はじめはペンキ塗り、掃除、洗濯とか、ほとんど雑用だけだったんだけど、ちゃんと仕事できるようになりたいって上司に言ったら、機械の操作法とかも教えてくれて。最終的には、一通りの仕事ができるようになりました。




そう言ってカーリーは屈託なく笑うが、この華奢なオナゴのどこにそんなパワーが潜んでいるのか、シンプルに感心してしまった。




―――それで、そのときは重いモノも結構持ってて、背中ムキムキだったんですよねぇ(笑)そのときの写真、ないかな?ヤバかったよ、あの頃の私の背中の筋肉。


カーリー



そして、エレベーターが展望台に到着し、ドアが開くと、目の前に広がるは堂々たる東京パノラマ。


なお、ここに来るのは初めてではないが、何度来てもそのダイナミズムに慣れることはない。





―――あ、富士山さっきまで見えてたらしいけど、雲に隠れちゃったみたいですね。それでも、かなり遠くまで見渡せますね。

「うん、天気いいし圧巻」


東京タワーからの絶景

地上150mからの絶景



「どう、東京タワーからの眺めは」

―――でも、カナダのバンクーバーにちょっと似てますね。




カーリー



そんな具合に、のらくらと常設の土産屋を見て回るなど、プレーンな観光を満喫する。



真下がダイレクトに見えるスケルトン窓“ルックダウンウィンドウ”を前にしても、高所は全然平気だというカーリーは全く動じず泰然自若。
むしろキャッキャ楽しそうに、鉱山仕込みのタフネスが遺憾なく発揮されていたのだった。


ルックダウンウィンドウ

高所恐怖症の人は要注意



その後、タワー内にあるダイナーでランチ。






月並みながら、ベーコンレタスサンドを注文。

ベーコンレタスバーガー




そこでたちまち、話は食に及ぶ。




―――白ご飯、お味噌汁、ほうれん草のおひたしとか、和食はだいたい好き。あとは、小さい頃からタイによく行ってたから、タイ料理も大好き。

「カナダの料理はどんなものがある?」

―――美味しいもの、いっぱいありますよ。私はヘラジカの煮込みが好き。ヘラジカを野菜と一緒に煮込んでスープみたいにして食べるのが、ホント最高。

「ヘラジカ!?あの大きい角を持ったアレを食べるんだ」

―――そう、食べる。


カーリー



―――あと、お父さんはネイティブアメリカンって説明したけど、厳密に言うとタルタンっていうカナダの先住民族なんですよ。綴りはTahltan。ヘラジカの狩りは、タルタンしか獲っちゃいけない地域があるんです。

「お父さん、狩りするんだ」

―――うん、ライフル持って熊と闘ったりもしますよ。夏は家族全員でキャンプを1ヶ月ぐらいするんです。ネイティブアメリカンのやり方で罠を仕掛けてサーモン釣ったり、いろいろ楽しいですよ。キャンプしてる近くまで熊が来ちゃうこともありますけど。

「ものすごいネイチャーだね」

―――キャンプの写真見ますか?インスタにアップしてるんですけど、あ、これ弟です。お父さんにそっくり(笑)歳が離れてるから甘えん坊だけど、とにかく可愛い。




ノリノリな彼女のインスタを見せてもらうと、プロフィールには、ネイティブアメリカンやTahltanの文字が。
そして、並んだ写真には、カナダの自然の中で家族と共に笑顔を浮かべる伸びやかな様子がたくさん映っていた。


概して、自然体を地で行く類まれな魅力が横溢する。
羨望なのか嫉妬なのか、それっぽい感情が湧き起こるほどに。





みたいなことで今度は、ネイチャーからアーバンに面舵いっぱい。
シロガネーゼ蔓延る高尚な街、白金台へ向かうとする。





バスへと乗り込み、ふとカメラを向けると、即座に変顔を披露してくれるカーリー。

このアドリブのきく感じ、こういうことなのである。


カーリー






◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ





KARLEE RAE OPAL

カーリー・レイ・オパール

カナダ出身、日本育ち。父がネイティブアメリカン、母がヨーロッパ系カナダ人。ファッションモデルの他、『えいごであそぼ with Orton』(NHK Eテレ)にレギュラー出演するなど多方面で活躍中。







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