2017.12.15

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.9 (4/4)




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16:10 │ 松陰神社前/ 学べばすなわち

バスストップ


/SHÔIN-JINJYA-MAE







バスは、学芸大学駅から松蔭神社前へ。



フィン



世田谷区若林の松蔭神社前には東急世田谷線の駅もあり、そこでは2両編成の路面電車、俗に言うチンチン電車が走っているが、何の気なしに見ていると、あまりの牧歌的なカットに、ここは本当に東京なのかという気分になる。
一方で、商店街に並ぶ小粋な飲食店に目をやれば、洗練された何かに引っ掛かる。

まあ、とかく面白いバランス感覚を持った街である。




―――小さくて可愛い電車!



初めて世田谷線の車両を見たフィンも声を上げる。




―――それに、この辺はのんびりしてて、いい感じですね。

「そうだね。この松陰神社通りは、お年寄りから子どもまで皆が安心して歩けるバリアフリー商店街を目指してるらしい」

―――たしかに、ファミリーをよく見かけますね。

松陰神社通り



かように、まったりとした商店街をそぞろ歩き。




―――あ、楽しそうな本屋さんがありますよ〜。

「お~」




見ると、全面ガラス張りのアーバンな書店が。


フィン



この垢抜けた古書店『nostos books』は、かつて八百屋だった店舗をリノベーションしたものだという。

店内には、写真集にデザインブックにエッセイなど、興味深い本が多様にズラリ。




―――ロンドンの書店みたい。



フィンはそう言いながら、外に出してあるビジュアルブックをパラパラとめくる。
父親がカメラマンということもあり、アートな書物を見ると、嬉しいような懐かしいような気持ちになるそうだ。




その後も、おでん屋を冷やかしてみたり、パンの香りに釣られてみたりしながら、やがて目的地の松陰神社。

松陰神社



松陰神社は、明治維新の頃の精神的指導者として有名な吉田松陰が祀られている、教育と所縁が深い神社で、学問成就や合格祈願にご利益があるとされている。




―――なんか、今まで見た日本の神社の中でも、特にレベルが高いような気がするんですけど。

「オーラあるよね、石造りの鳥居も立派だし」


フィン




ふと、吉田松陰に関する知識をひけらかす。



「松陰ってアメリカとかヨーロッパに興味があって、ペリーが来航したときなんか、小舟を盗んで黒船に忍び込んで、そのまま連れて行ってもらおうとしたらしいよ。結局、失敗したんだけど」

―――へぇ、やりますね!

「そんな感じだから牢屋に入れられたりもしたんだけど、出てきてからは、叔父が作った松下村塾を継いで、初代総理大臣になった伊藤博文とか山県有朋も育てたっていう。松下村塾は今の政治にも影響与えてるし、とりあえずバイタイリティがスゴい男だったんだよ」

―――なるほど。だから、こんな立派な建物を造ってもらえるんですね。





そんなことで、境内へ入り、しっかり参拝。

参道を歩き、手水を済ませ、深々とお辞儀と、学問の神に礼を尽くす我々なのであった。



フィン




16:50 │ 世田谷区民会館/ゆるりと駆け走る

バスストップ


/SETAGAYAKUMIN-KAIKAN





終点間近の車内では、生真面目なお喋りに花が咲く。




―――モデルとかって若いうちしかできないから、貴重な経験だと思って今はやってますね。最近刺激的だったのは、w-inds.のミュージック・クリップの仕事で、作品を皆で創っていくプロセスに感動しましたよ。

「好きな音楽の仕事だったっていうのも大きいんじゃない?」

―――そうですね。w-inds.の皆さんとも少し話す機会があったんですけど、プロは集中力がスゴいと思ったし、出来上がった映像も素晴らしかった。そういう現場を経験したことで、将来は音楽に関わる仕事がしたいって、改めて感じました。

「具体的には、どんなことがしたい?」

―――イギリスの音楽を日本に紹介したり、日本の音楽をイギリスに紹介するみたいな仕事はしたいかな。どういう形がいいか、まだ考えてる段階なんだけど。

「そのためにも、日本語学校に行ったりしてるんだよね」

―――うん。ビジネス関連でまだまだ勉強しなきゃいけないことも多いけど、頑張りたい。





そして、バスは終着駅に。


世田谷区民会館



アットホームでモダンな佇まいが印象的な世田谷区民会館。

コンサートホールとしても人気を博す世田谷の名所を前に、どことなくの心弛び。





「お疲れ。今日どうだった?」

―――いや、日本でこんなに長い時間バスに乗ったことはなかったけど、いろんなところに行けるもんですね。たまにはバスでゆっくり遠くへ行くっていうのもいいかも。






同感。

こんな心地、悪くない。


フィン






◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ







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