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BACK NUMBER
/MIKAWASHIMA-EKIMAE
バスは日暮里から北東へ進み、荒川区三河島に到着。
三河島は戦前より、韓国最南端の済州島(チェジュトウ)からやって来た在日韓国および朝鮮人の居住地として知られ、新大久保のような観光地的な空気感は弱いものの、駅周辺には焼肉屋や韓国料理店が点在し、なるほど東京最古のコリアンタウンらしき佇まいである。
三河島駅前から、北の尾竹橋通り沿いの細い路地に入ると、“三河島こりあんマーケット”と呼ばれる市場を発見。
その突き当たりには、創業60年以上の老舗韓国食材専門店『丸萬商店』が。
ここは、コチュジャン、辛ラーメン、韓国海苔といった日本でも馴染みある食材の他、トッポギ、キムチ、牛や豚の内臓など幅広く取り揃える、三河島の食料庫的なスポットである。
―――辛ラーメンって、辛いラーメンですか?私、ラーメン大好きなんですよぉ。
小さく歓声をあげるケイリーンと、ラーメンの話で盛り上がる。
彼女の出身地であるアメリカのミネソタ州にはラーメン屋がなく、ラーメンというのは、外でヌードルを買ってきて、自らスープを作って食べるものだという。
それゆえ、東京に来てからは、ラーメン屋のクオリティの高さに驚愕したらしく、以来ラーメンを食べ歩くのが日課なのだとか。
そんなラーメン愛に感嘆していると、ケイリーンはタレントの仕事の中でも食レポが特に好きなのだと語り始めた。
―――私、最初は魚が苦手だったんですよね。小さい頃に魚の骨が喉に刺さって、それがトラウマになって、魚を見たら吐き気するようになっちゃって。でも、それじゃダメだと思って、お刺身から始めたんです。それで今はもう克服しました。干物も焼いて食べちゃいますし。
「それなら、好き嫌いが多い日本人より、よっぽど食べられてるよ」
―――今は好き嫌いはないですね。だから、どんなジャンルの食レポも挑戦したいんですよ。最近はNHK WORLDの仕事で、京都と福井に行きましたよ。
「何を食べたの?」
―――万願寺とうがらしと若狭のぐじ、ですね。福井は、船の上に8時間くらい乗ってのレポートだったんだけど、船酔いしちゃいました(笑)ビデオ回ってるときは元気にしてたんですけど、映ってないときはずっと倒れちゃって。
「8時間はハードだね」
―――次回は、日本には売ってないような超強力な酔い止め薬があるらしいので、それゲットして頑張ろうと思ってます!
そう言って、コテコテのファイティングポーズをとる女戦士。
さて、それから、三河島一の賑いを見せる荒川仲町通り商店街まで足を伸ばす。
日本の日常雑貨を扱うお店も多い商店街だが、韓国の食品はもとよりチマチョゴリを売る衣装店、キムチ専門店などがそこかしこに並び、やはり漂うコリアンムード。
中には、韓国で流れている番組をDVD-Rで販売するお店もあったが、最近はYouTubeなどネット動画の台頭でどんどん売れなくなってきているという。
―――アメリカではNetflixが大人気で、韓国のドラマも流行ってて、結構観てました。一方で、レンタルビデオ店はなくなっていってる感じで、そういう流れは世界共通ですね。私は日本のドラマが好きなんですけど、アメリカではコピーライトの関係であんまり観ることができなくて、韓国ドラマをたくさん観ました。『コーヒープリンス1号店』とか好きでしたよ。
「あのドラマ面白いよね。韓国には行ったことあるの?」
―――1回しか行ったことないんですけど、ミネソタ州の友人が韓国で英語の先生をしてたりするので、話はよく聞きます。しかも、その先生のお給料がスゴくいいんですって(笑)まあ、食文化も面白い国なので、また行きたいなって思ってます。
そんな具合に歩きつつ喋りつつの仲町通りは、お店の名前に目を留めれば“済州島”が付いているところも多く、ビビンバが食べられる喫茶店や、韓国人向けの民泊があるなど、幾分この街のルーツを感じさせてくれる。
やがて、どうにも腹が減ってきたということで、オモニの特製スープが評判だという韓国料理店『華花』へ。
ちょうどランチ時に入店したのだが、店内はサラリーマンやOLで埋め尽くされていて、その人気ぶりが伺われる。
そして、2階の座敷でくつろぎながら、ケイリーンはお店のイチオシだというコサリスープをオーダー。
済州島の土着料理らしきこのメニューは、わらびを贅沢に使っていて、健康と美容にも良いらしい。
―――おおお!辛い!でも韓国の人って肌綺麗ですもんね!食べ切らないと!
「あはは。食レポできる余裕ある?」
やや悶絶した表情を浮かべながら、結構な食いっぷりを見せつけるケイリーン。
―――え~っと、このゼンマイと、辛いスープの調和が、見事です!って、もう、辛~い!!
え~っと、こちらの辛い辛い無茶振りにも即座に応えてくれるアメリカンガールは、甘~い!!!
はい。
そんな調子で、次に向かうは三ノ輪橋。
お目当ては、鉄道オタク垂涎スポット、都電荒川線の三ノ輪橋停留所である。
◇写真:鈴木清美
◇構成:前田レイ
アメリカ、ミネソタ州出身。デザイン事務所で働く傍ら、タレントとしてテレビ番組などに出演。その他、ドラマ台本の英文翻訳も手掛けている。