2017.04.21

東京湾に浮かぶ孤高の無人島「猿島」は、ロマンとラピュタ感のマリアージュ

◇新宿からフェリーも使って約1時間半



変化と浮き沈みの激しい、おもちゃ箱みたいな現代社会を生きる中で、ふいに無人島にでも行きたくなる。


だが、ガチの無人島になんて行きたくない。
それでは無味乾燥なのだ。
結局はカッコつけて、自分探しだ!サバイバルだ!平和ボケした自分への戒めだ!みたいに言い聞かせるのが関の山で、だいたいシンプルな徒労に終わるだけなのである。


そこで考えた。
もはや観光地化している無人島はないのか、と。


無人の観光地って、矛盾しまくっているような気もするが、この際ロジックはどうでもいい。
世の中そういうものだらけだ。
物事の本質をエグったところで、なんの効用もありゃしないのが世の常である。



とかなんとか御託を並べながら血眼で探していると、なんと神奈川県の横須賀に、ちょうどいい感じの条件を満たす島があるという。
その名も「猿島」。

名前だけを聞けば、猿がワンサカいる島なのか?と思うかもしれないが、そうではない。

情報によると、江戸時代から第二次世界大戦終了まで、外敵から東京湾を守るための防衛基地として機能した軍事施設らしい。
当時は一般人の立ち入りを禁止していたが、現在は封鎖が解除され、東京湾に浮かぶ唯一の無人島として観光地になっている。



ちなみにこの島は、仮面ライダーのショッカー基地として、撮影に使用されたこともあり、一部のファンからは聖地的存在として崇められていたりもする。


ということで今回は、そんな孤高のマンキー・アイランドに潜入だ。


Hiho Hiho to サルシマ


猿島へは、東京の新宿から車とフェリーで約1時間30分。


まずは、島への船が出ている“三笠桟橋”へと向かう。

初台南料金所から首都圏高速中央環状線に入り、大橋JCTを東名・都心環状線方向へ進み、首都高速3号渋谷線へ。
用賀出口から出て第三京浜道路を進んで、保土ヶ谷ICから横浜新道に入ったら、藤塚ICで横須賀方面に乗り換える。
そして横須賀料金所から本町山中有料道路をダーっと行って、横須賀市街に入ったらあとは下道を通って目的地へ。



三笠桟橋の近くにはいくつか駐車場があるので、車を停めたら歩いてフェリー乗り場へと向かおう。

三笠桟橋



猿島へのフェリーは、8時台から16時台まで約1時間ごとに出ているが、定員パンパンになった場合は出港時間よりも早く出発してしまうこともあるので注意だ。




この日は、少し時間に余裕があったので、フェリー発着所横の“三笠公園”で暇を潰すことにした。

この三笠公園には、日露戦争時に用いられた旗艦の三笠が記念艦として保存されており、それ目当てに戦艦マニアが遠くからはるばるやってくることも多いという。

三笠公園



感想は、まずデカい。
脇を歩く人と比べてみると、その大きさが伝わるのではないだろうか。



艦内を見学したい衝動に駆られながらも、今回の主役はあくまでも猿島ということで、後ろ髪を引かれながらも、乗船待ちの列に加わることに。




フェリーはこんな感じ。

猿島行きのフェリー



旗艦を見た後なので小さく感じるが、これでも最大200人くらいは収容できるようだ。


出港時間を迎え、いざ猿島へ向け、ヨーソロー。






まあ、フェリーなんぞ人生で数えるほどしか乗らないだろうが、海風が実に気持ちいい。


たそがれること約10分。
ついに猿島に到着。

猿島



うお。
なんや。
人めっちゃ多いやんけ。
橋の上の人々の列エグいやんけ。



そりゃまあ、無人島とはいえ観光地なわけで、それだけ人気ということで、要らぬ邪念を片付ける。




浮き足立って上陸し、早速、探索開始。

猿島



ラピュタの感じがグイグイきてる



やや進むと、レンガ造りの建造物が現れた。


レンガ造りの建造物



島内には同じような見た目の建築物がいくつもあり、それぞれ住居だったり、弾薬庫だったりするらしい。


弾薬庫のそばに居住スペースがあるので、当時ここで暮らしていた軍人さんは、別の意味で眠れない夜を過ごしていたと思う。




さらにしばらく進むと、トンネルが。

トンネル



中はかなり暗くて、いかにも出てきそうな雰囲気だが、昔はトンネルの上に大砲があったらしく、すぐに弾薬を補充できるよう地下に大量の弾を保管していたという。
井戸から水を汲む要領で、弾を引き上げていたのだろう。

それ以外にも司令室などの部屋があるが、一部はいまだ用途が不明なのだとか。
用途不明の部屋と言われると、極秘実験が行われていそうで、妄想が止まらなくなる。



ちなみにこのトンネルには、“愛のトンネル”という別名があり、お祈りすると恋愛運がアップするそうだ。

ご利益のほどは分からないが、とりあえずガチで祈っておいた。





長さ90mのトンネルを抜けると、目の前に三叉路が。

三叉路



少し前から思っていたが、この廃墟感、何かに似ている。



そう、ジブリの『天空の城ラピュタ』に登場する、あのお城だ。

その辺でロボット兵が歩いていても別に違和感はない。
むしろ、ロボットがいないのが不思議なくらいのリアルラピュタ感と言っても過言ではない。


ガイドのオジサンも、ものすごいラピュタっぽくないですかー??と興奮を隠せない様子だった。
オジサンの鼻息のラピュタ感もスゴかった。





三叉路は愛のトンネルを背に、右が展望台ルート。
左が砲座跡ルートだ。



まずは左。
しばらく歩き、砲座跡に。

砲座跡



第一印象は、何これ。
なんの変哲も無い普通の砲座跡だ。
やはり実物がないとインパクトに欠けるのぅ。



しかしご安心を。
実は、あるものを使えば、砲座が現れる仕組みになっているのだ。




こんな感じで。

cybARnetというARアプリ



軽く説明すると、cybARnet(サイバー・エーアール)というARアプリを使うことで、大砲などの兵器を台座に表示させることができるのだ。

なお、これ、developed by 横須賀市だ。
横須賀市も粋なことをするではないか。
当時の空気感はなんとなく味わうことができる。
デジタル技術って、本当に世界の見方を変えるのぅ。




ゴリゴリのPRも済ませて、砲座跡のある広場から下に降りると、“日蓮洞穴”という弥生時代から古墳時代後期に人々が暮らしていたとされる洞窟がある。

日蓮洞穴



残念ながら現在は中に入ることはできないが、にしても1,000年以上前の生活感が少しでも残っているというのは、割とオモロイ。

また、この辺りの磯場は隠れた釣り場として人気で、クロダイやロックフィッシュなどが釣れるらしい。
ということは、釣り竿さえ用意すれば、食料現地調達というサバイバルっぽいこともできるというわけだ。

だが一方で、猿島近海にはヒョウモンダコという、うっかり触ってしまったら死の危険もあるという殺人ダコが生息しているので、一応注意喚起しておく。





来た道を三叉路まで戻り、右の展望台方向へ。

展望台への階段はかなり急で、正直えらくシンドイ。
社会の荒波に揉まれ損ねている怠惰な若造が何を言ってんだバカ野郎!とでもガヤられそうなものだが、登ってみれば分かるさ~とだけ言っておきたい。
というより、わざわざここまで取材で来てること自体、体力とフットワークはだいぶいいんだぜ~とは言っておきたい。


ブツクサ言いながら、頂上へと到着すると、観測所のような建物が。

展望台の頂上



雨風にさらされて、かなり風化しているようだが、味が出ている。




当時の人たちは、こうやって海を眺めていたんだろうなぁ。

展望台からの海



可もなく不可もなくといった印象かもしれないが、風が言いようもなく心地良く、その日のテンションによっては誰もがヤッホー!ウッキー!と叫びたくなるはずだ。





ハメを外してサルに戻った気分で風を堪能した後は、島の入り口に戻ることに。


復路は、来た道を帰ってもいいし、島を一周する形で散策路が作られているので、もう少しネイチャーを楽しみたい人は、そちらの道を通ってもいいだろう。




そうして、島の桟橋に着いたのは午後3時20分。
帰りのフェリーの時間が近づいていたので、そのままサイナラした。


猿島



で、このままでは、なんとなく尻つぼみ感がヤバい気もするのだが、それもそのはずで、猿島にある唯一の飲食店「猿島オーシャンズキッチン」はゴールデンウィークや海水浴シーズンにしかオープンしていないので、今回、旅には欠かせないグルメパートはなし。

ということで、尻つぼみ確定でいいだろう。
否定はしない。



もしシーズン外にどうしてもお腹が減った場合は、島のお土産ショップでカップラーメンやお菓子を食べんしゃい。


あとがき


猿島での滞在時間は、ゆっくりめに回って約3時間だった。

何よりも、新宿から1時間半ほどの距離感で、海も渡り、本格的な廃墟ツアーができるのは大きな魅力。


なお、住む人がいないという意味では無人島なのだが、観光客が多いので純粋な無人島感を求める人にとっては、やや不満が残りがち。
しかしながら、ラピュタ感溢れる場所など国内にそうそうないので、それだけでも十分赴く価値はある。

廃墟マニアに限らず、手軽にロマン的なものが欲しい人は、是非とも足を運びなはれ。



◇text:日下部貴士/A4studio



「猿島」INFO


■住所
神奈川県横須賀市猿島1

■電話番号
046-822-9561
(環境政策部公園管理課)

■営業時間
3月~11月は8時30分〜17時00分
12月~2月は9時30分〜16時00分

■運航日
3月~11月は無休
12月~2月は土日祝のみ

■料金
公園入場料200円とフェリー乗船料1,300円






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