(公開日:2024年10月29日)
自分の車が損害を受けたときに備えて検討する自動車保険の「車両保険」。車両保険がないと、万が一事故を起こした場合には車の修理が自己負担になるため、加入しようと考えている方も多いことでしょう。
車両保険に加入する場合には、ご自身で車両保険金額(保険金の限度額)や補償の範囲、免責金額(自己負担額)を設定する必要があります。しかし、自動車保険に初めて加入するという方やインターネットで加入する場合には「車両保険金額をいくらに設定すればよいの?」と疑問に思うかもしれません。
この記事では、車両保険金額の目安や決め方について解説します。車両保険に加入する判断の基準や知っておきたいポイントも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
車両保険とは、偶然の事故によってご自身の車が損害を受けた場合の修理費などを補償する保険です。保険のタイプにより、ほかの車との衝突や接触、台風や洪水などの風水害、盗難による被害以外にも、単独事故や車庫入れの失敗による損傷をカバーします。
自動車保険には、相手方への補償やご自身・同乗者への補償などがありますが、車両保険は車両に特化している点が特徴です。たとえば、車同士の事故で契約車両が壊れたり、落書きやいたずらをされたりした場合にも補償の対象となるケースがあり、万が一の車の損傷に備えられます。
なお、各保険会社によって異なりますが、車両保険にはおもに「車両保険(一般型)」と「車対車+A(エコノミー型)」の2種類が用意されています。それぞれの補償範囲の違いは下表のとおりです。
車両保険の種類と補償範囲の違いの例 | ||
---|---|---|
車両保険 (一般型) |
車対車+A (エコノミー型) |
|
他人の自動車との接触や衝突 | 〇 | 〇 |
火災・爆発・台風・洪水・高潮・騒擾(じょう) | 〇 | 〇 |
飛来中または落下中の物との衝突 | 〇 | 〇 |
落書きやいたずら | 〇 | 〇 |
盗難 | 〇 | 〇 |
単独事故(自損事故) | 〇 | × |
当て逃げ | 〇 | × |
地震・噴火・津波 | × | × |
車両保険金額とは、車両保険で支払われる保険金の限度額です。車両保険に加入する際は車両保険金額を設定し、車が事故などで損傷を負った場合は車両保険金額の範囲内で保険金が支払われます。
車両保険金額は、ご自身で自由に設定できるわけではなく、保険会社が提示した金額の範囲内で受けたい補償内容にあわせて設定します。保険会社は車両保険金額の範囲を、市場販売価格相当額を基準に設定するため、車の初年度登録年月日や用途、車種や型式、グレードや仕様などで車両保険金額は異なってきます。
そして、保険会社が車両保険金額を「100万円から200万円まで」と提示した場合、「120万円」や「180万円」のように保険会社が提示する範囲内の希望する金額を車両保険金額にすることとなります。
「車両保険金額」と聞くと、車両本体の価格だけをイメージするかもしれません。車両保険金額には、車両本体の価格をはじめ、以下の付属品も含まれます。
「付属品」に含まれるものとは | ||
---|---|---|
付属品に含まれるもの | (例)警告反射板・非常用信号用具・消火器・カーステレオ・カーナビゲーション・時計・クーラー・タイヤチェーン・潤滑油・バッテリーの電解液・冷房用フロンガス など |
|
付属品に含まれないもの | (例)ガソリン・ボディカバー・洗車用品・クッション など |
(出典)一般社団法人 日本損害保険協会Q&Aをもとに作成
上表のように、カーステレオやカーナビゲーションなどの付属品は、車両保険金額に含まれますが、以下の費用は車両保険金額に含まれないことがあります。車両保険金額を検討する場合には注意しましょう。
【車両保険金額に含まれないもの】
なお税金は、消費税は含まれますが、自動車税や自動車重量税などは含まれません。そのほか、自賠責保険料や登録費用などの費用も車両保険金額の対象外です。
一般的に、保険会社は、以下の要素を基準に車両保険金額の範囲を計算します。
【車両保険金額の範囲を設定する要素】
車両保険金額は車の時価(市場販売相当額)をもとに、各保険会社が定める自動車保険車両標準価格に記載された価格で算出されます。したがって、車両保険金額の範囲は保険会社により異なります。各保険会社で「車両価格表」が用意されており、そこで具体的な車両保険の金額の上限がわかります。
また、購入から1年未満の新車も中古車も同様に、設定できる金額は車種や型式、年式などによって決まっており、基本的にはその金額の範囲内で設定します。ただし、中古車は経年による消耗なども考慮されるため、新車と比較すると車両保険金額の範囲は低くなる傾向にあります。
前述のとおり、各保険会社ではそれぞれ「車両価格表」を用意しており、その車両価格表を参考に車両保険金額を「〇〇万円~○○万円」などと幅を持って提示します。しかし車両保険に初めて加入する場合、その幅のなかでの金額について、「いくらにすれば良いだろう」と悩んでしまうかもしれません。以下では、3つのケースに分けて車両保険金額の目安を紹介します。
【車両保険金額の設定の目安】
それぞれのケースについて、詳しくみていきましょう。
新車(購入後1年未満)の場合には、車の購入にかかった費用が車両保険金額の目安となります。
車両本体の価格と付属品、消費税を含めた金額を目安に、車両保険金額を設定しましょう。新車を購入した場合の車両保険金額の一例は次のとおりです。
新車(購入後1年未満)の項目別車両保険金額の例 | ||
---|---|---|
項目 | 金額 | |
車両本体の価格 | 200万円 | |
付属品 | カーナビゲーション | 10万円 |
ETC車載器 | 10万円 | |
そのほかの付属品 | 20万円 | |
車両本体価格と付属品にかかる消費税(10%) | 24万円 | |
合計 | 264万円 |
車両保険金額は「本体価格+付属品+消費税」で求められ、上記の場合は264万円が車両保険金額の目安です。
車両保険金額の計算は、ディーラーや販売店から受け取った納品書などを参考にしておこないましょう。計算する際は、納車に関する費用や自賠責保険料などを金額に含めない点に注意してください。
市場販売相当額は減価償却の考え方にもとづき、購入後年数が経過すると共に低下します。
契約継続時に保険会社が提示する車両保険金額の範囲も、1年分の減価償却による価値低下が反映された金額になります。そのため、契約を継続する場合は、前年度の車両保険金額を参考に1年分の価値低下を考慮して金額を設定しましょう。
金額の設定に迷ったときは、お持ちの車の車種や型式、走行距離と同じくらいの中古車価格を参考にする方法も選択肢のひとつです。そのほか、満期が近づくと保険会社から送付される書類に、翌年度の車両保険金額の参考が記載されている場合もあります。
中古車を購入して自動車保険の車両保険に加入する場合、そのほかの車と同様に保険会社が提示する市場販売価格相当額を基にした金額の範囲内で車両保険金額を決めます。
中古車では、車の購入価格と保険会社が提示する車両保険金額の範囲に大きな差が出る場合は注意が必要です。車の年式によっては、車両保険金額を数十万円以下にしか設定できないケースも想定されます。
また、保険会社が提示する車両保険金額の限度額よりも、安心できる備えを求める方は「車両全損修理時特約」もあわせて検討しましょう。
車両全損修理時特約とは、車の修理費が車両保険金額を超えた場合に、一定の金額(50万円など)を限度に修理費が支払われる特約で、購入した中古車の車両保険金額が低い場合に役立ちます。なお、補償を拡充する方法には、車両価額協定保険特約で保険金の算定方法を変更する方法などがあります。
自動車保険に加入するとき、「そもそも車両保険に加入するべきか」悩む方もいるかもしれません。判断に悩む場合は、以下のケースを基準に検討しましょう。
【車両保険に加入したほうがよいケース】
時価額の高い新車や高級車を購入した場合、多額のローン残高がのこっている場合も車両保険への加入がおすすめです。車の時価額が高い新車や高級車は、簡単な修理でも修理費が高額になる場合があり、盗難に遭って再度購入する場合の金額も多額になります。
全損するような大きな事故に遭えば、ローンだけがのこる事態も否定できません。車両保険は、事故時にのこったローンの返済にも活用できます。
運転歴の長さは、車両保険の有無を判断するときに大切な項目です。車の死亡事故は、運転免許取得後の経過年数の短い方(大部分が若い世代の方)が起こしているケースが多いです。万一の事故に備えて、車両保険への加入を検討しましょう。
また、通勤や送り迎えで毎日運転するなど、運転頻度の高い場合も車両保険の加入はおすすめです。飛び石やいたずら、落書きなど、運転技術に関係のない急な事故で車が損傷する可能性や修理が必要になる確率も高くなるからです。
最後に、車両保険金額の設定のポイントを2つ紹介します。
【車両保険金額の設定ポイント】
ポイントを事前に把握して、ご自身に適した金額を設定しましょう。
車両保険金額は、前述のとおり一定の範囲からご自身で設定できます。「念のため高く設定した方が良いのだろうか?」と判断に迷う場合もあるかもしれません。
車両保険の設定金額を高くすると、当然ながら車が損傷した際に車両保険が支払われる上限額が高くなるため、事故で修理代が発生した場合も、車両保険金額の範囲内に収まりやすい点がメリットです。
損害保険料率算出機構が公表している自動車保険の概況(2023年度)によると、支払い1件あたりの修理費は増加傾向にあります※。
また、交通事故や台風、盗難などの被害に備えたい方に、高めの車両保険金額の設定はおすすめの方法です。一方で、車両保険金額を高く設定すると保険料も高くなるため、安心への配慮と保険料のバランスを考えて設定しましょう。
※出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(2023年度)」
免責金額とは、事故などの際に発生した修理費のうち、ご自身が負担する金額のことです。車両保険では5万円や10万円など免責金額を設定でき、免責金額を高く設定すると保険料の負担を軽減できます。
そのため、自動車保険の保険料をおさえたい場合には免責金額を高く設定する方法は有効な選択肢です。ただし、車両保険で事故による保険金を受け取る場合は、修理代などから免責金額が差し引かれる点に注意しましょう。
事故時の負担を重視する場合は、「免責金額なし」や低めの金額設定がおすすめです。
自動車保険は保険会社やプランによって異なり、補償内容や保険料にも違いがあります。ご自身で納得できる自動車保険が見つける場合には、複数の自動車保険を比較して検討することがおすすめです。
自動車保険を比較・検討する場合は通常、各保険会社のサイトで必要事項を入力し、見積もりを出してもらいます。しかし、希望する補償内容の自動車保険を絞り込み、それぞれの保険会社に見積もりを依頼すると多くの手間と労力がかかります。
上記のような場合には一括見積サイトの利用がおすすめです。一括見積もりサイトでは、一度の必要事項の入力で複数の保険会社に見積もりを依頼できるためとても便利です。保険料や補償内容も比較しやすいため、ご自身に合った自動車保険を選びやすくなります。
車両保険の金額は、事故などで車両保険を使う場合に支払われる保険金の上限額です。市場販売価格相当額を基に設定された金額の幅のなかから、ご自身の状況にあわせて選択します。
なお、車両保険へ加入する際には、ご自身の運転歴や運転頻度、契約する車の購入価格やローン残高などを考慮して判断しましょう。保険料をおさえたい場合は、免責金額や補償範囲の検討をするほか、自動車一括見積もりなどを利用して、複数の自動車保険を比較・検討してみるとよいでしょう。
ファイナンシャルプランナー。2006年11月 卓越した専門性が求められる世界共通水準のFP資格であるCFP認定※を受けると同時に、国家資格であるファイナンシャル・プランニング技能士1級を取得。2017年10月 独立。主に個人を相手にお金に関する相談および提案設計業務を行う。個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン住宅購入のアドバイス)の他、資産運用など上記内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)を行う傍ら、執筆・監修業も手掛ける。これまでの執筆・監修実績は3,000本以上。
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においてはFinancial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの掲載開始日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
(掲載開始日:2024年10月29日)
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