最終更新日:2025年1月30日
「車両保険」とは、ほかの車との接触や衝突、自然災害、盗難、いたずらなど、偶然の事故でご自身の車が損害を受けたときに備える自動車の任意保険のひとつです。加入するかどうかはご自身で選ぶことができますが、補償が幅広くなるぶん保険料も高くなるため、本当に必要かしっかり検討することが大切です。
この記事では、車両保険の必要性とともに、保険金額の決め方、車両保険の補償範囲や新車・中古車それぞれの場合の考え方などについてわかりやすく解説します。
さらに、車両保険を使わずに自己負担で修理するほうが良いケースや免責金額を設定して保険料をおさえるためのポイントなどについてもご紹介します。
車両保険とは、自動車の任意保険の補償のひとつで、ご自身の車が偶然の事故によって損害を受けた場合に補償される保険です。
具体的には、契約している車が事故などで損害を被ったときに修理費用を補償してもらえたり、車の損傷が激しく修理できない場合に車両保険から支払われる保険金を車の買い替え費用にあてたりすることができます。
補償の範囲は、ほかの車との衝突や接触などの交通事故だけではなく、電柱やガードレールへの衝突や接触などの単独事故(自損事故)も含まれます。
そのほかにも、火災、盗難、落書き・いたずら、台風・洪水といった自然災害など、さまざまな偶然の事故による損害が補償されることがあります。また、被保険者の過失によって発生した偶然の事故も補償の範囲に含まれることがあります。
車の修理に使える任意保険には、車両保険のほかにも「対物賠償責任保険」があります。しかし、対物賠償責任保険はご自身の車の補償はできません。
対物賠償責任保険が交通事故の「相手の自動車・もの」に対する損害の補償であるのに対し、車両保険は「ご自身が契約している車」に対する損害の補償となります。したがって、ご自身の車の修理費などを保険でカバーするためには、車両保険への加入が必要になります。
車の修理に使える2つの保険
車両保険では、補償範囲の違いによっていくつかのタイプ(種類)が用意されています。一般的には、「車両保険(一般型)」と「車対車+A(エコノミー型)」の2種類のタイプに分かれます。※1
では、2種類のタイプがある場合どちらを選べばよいのでしょうか?一般的には、「車両保険(一般型)」は補償範囲が広いタイプであり、「車対車+A(エコノミー型)」は補償範囲が限定されたタイプとなります。
【車両保険の2種類のタイプ】
具体的には、単独事故(自損事故)や当て逃げなどによる損害が補償範囲となるかが大きな違いとなります。単独事故(自損事故)は、「車両保険(一般型)」では基本的に補償されますが、「車対車+A(エコノミー型)」では、補償の対象外となります。また、当て逃げは保険会社によって対応が異なるため、加入前に確認してください。したがって、「車両保険(一般型)」は「車対車+A(エコノミー型)」に比べて保険料が高くなります。
加入に際しては、どちらがご自身に適切な補償かを考慮して選択する必要がありますが、結果として「車対車+A(エコノミー型)」の補償範囲で十分ということであれば、保険料をおさえることも可能になります。
※1 2種類のそれぞれの名称は各保険会社の自動車保険ごとに異なります。「一般条件」「一般補償」「フルカバータイプ」「エコノミー」など、保険会社によってさまざまな呼び方があります。この記事では「車両保険(一般型)」「車対車+A(エコノミー型)」と呼びます。
車両保険の種類と補償範囲の違いの例
事故内容 | 車両保険 (一般型) |
車対車+A (エコノミー型) |
---|---|---|
他人の自動車との接触や衝突 | 〇 | 〇 |
火災・爆発・台風・洪水・高潮・騒擾(じょう) | 〇 | 〇 |
飛来中または落下物との衝突 | 〇 | 〇 |
落書きやいたずら | 〇 | 〇 |
盗難 | 〇 | 〇 |
単独事故(自損事故) | 〇 | × |
当て逃げ | 〇 | △ |
地震・噴火・津波 | × | × |
※ 「当て逃げ」は車対車+A(エコノミー型)では補償対象外となる保険会社もあります。(車両保険は補償範囲によってタイプが異なる)
車両保険は車両保険(一般型)と車対車+A(エコノミー型)、どちらを選べばよい?
車両保険は、保険料が高いとよく言われます。購入して間もない時期では、車両保険を外すだけで保険料負担が半額以下で済む場合もあります。
そのため、車両保険は付けたいものの保険料負担を少しでもおさえたいというニーズに応えるために、保険会社各社では「車両保険(一般型)」のほかに限定補償の「車対車+A(エコノミー型)」のタイプを用意しています。
「車両保険(一般型)」と「車対車+A(エコノミー型)」のおもな違いは、一般的に「単独事故(自損事故)」「当て逃げ」の補償が含まれるかどうかになり、それによって保険料負担が変わります。
運転技術がある程度高い人であれば自動車以外の他物との事故である「単独事故(自損事故)」の可能性は低いかもしれません。
ただ、「当て逃げ」に関しては、たとえ相手を特定できたとしても、ご自身の過失がゼロの場合は保険会社の示談交渉サービスが使えず、ご自身で交渉する負担が生じます。
修理代を回収するまでの手間と時間を考えると、暮らしにおける車の重要度が高いほど、車両保険は「車両保険(一般型)」での契約が安心だといえるでしょう。
なお、車両保険の補償対象外になっている地震・噴火・津波による被害を受けた際にも補償が欲しい人向けに、全損時に50万円を受け取ることができる特約を等級に関係なく年払保険料5,000円で提供している保険会社もあります。ただし、この特約は「車両保険(一般型)」にしか付けられないことがある点はあらかじめ知っておくと良いでしょう。
自動車保険によって異なりますが、車両保険にはさまざまな特約が付帯できます。代表的な特約は下表のとおりです。
車両保険に付帯するおもな特約
特約の種類 | 概要 |
---|---|
新車特約 | 事故により新車が保険金額の一定以上の損害を受けたときに、新車保険金額を限度に保険金が支払われる |
車両全損時臨時費用補償特約 | 事故により全損になったとき、車両保険金額を超える一定額以下の保険金が支払われる |
車両超過修理費用特約 | 事故による修理費用が車両保険金額を上回るときに、一定額を限度として差額が支払われる |
※保険会社により特約の名称は異なります。
知って上手に選びたい!新車特約などの特約について
車両保険の特約として注目したいものが3つあります。1つ目は「新車特約※2」です。たとえば、購入時には300万円した車でも、1年経てば250万円というように、時価がどんどん下がり、車両保険では事故時の時価以上の保険金を受け取ることができません。
車両保険で補償される上限額(車両保険金額)は、事故を起こしたときの車の市場価格がベースになるからです。しかし、新車特約を付けた場合は、この例では新車の購入価格である300万円を上限に補償されるため、新車を再度購入することができます。高額な新車を購入したときは、新車特約の付帯を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし、新車が大破したり大きな損傷を受けた場合のみ対象だったり、利用時には3等級ダウンになるなどの注意点がありますので、契約している保険会社の適用条件などを確認の上で付帯するようにしましょう。
2つ目は、「代車特約(レンタカー費用特約)※2」は、事故などでご自身の車を修理に出すことになった際に、修理期間中にレンタカーを利用するなどで要した費用を補償する特約です。
車が欠かせない暮らしをしている人で、事故や故障でしばらく使えなくなったときに家族など車を借りられるあてがない人は検討してみてもよいでしょう。
最後に、「車両全損時臨時費用補償特約※2」。この特約も最近人気があります。車両保険金額の10%(上限20万円)が支払われ、廃車や買い替え時の諸費用にあてることができます。
※2 保険会社により特約の名称は異なります。
車両保険へ加入をすると、補償が幅広くなるぶん保険料は高くなります。そのため、「車両保険はいらない」「車両保険をつけない」「車両保険は無駄」などと考える方もいるかもしれません。
なお、損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」※3によると、車両保険の加入率は全国平均で46.6%です。また、用途・車種別にみると自家用普通自動車は63.0%、自家用小型自動車は52.5%です。マイカーを持っている方の過半数が車両保険に加入していることがわかります。
※3 参考:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2023年度版」(2024年4月発行)」
では、具体的に車両保険に加入したほうが良いケースとはどのようなケースなのでしょうか。
【車両保険に加入したほうがよいケース】
以下で詳しくみていきましょう。
新車時は時価額がもっとも高いタイミングのため、新車購入時の加入は保険金の支払限度額が高くなります。
修理や買い替えに必要な費用を保険でカバーするためにも、時価が高い新車時に車両保険に加入することがおすすめです。また、新車は修理費用も高くなる傾向にあることも、車両保険に加入するほうがよい理由のひとつです。
高級車を購入するときも、車両保険を検討してみてください。少しの修理であっても、高級車は部品代も高く、修理費が高額になる恐れがあるため、保険に加入したほうが安心でしょう。
事故を起こしたとしても、自動車ローンの返済が免除されるわけではありません。ローンの返済額に加えて修理代もかかり、金銭的負担が大きくなります。たとえ車が全損しても、ローンの返済は続きます。
そのため、自動車ローンが残っている場合も、車両保険を検討すべきケースといえます。自動車を担保としてローン契約をしている場合は、ローンの返済ができなくなると車を失うことにもなりかねません。大切な車を保持するためにも、車両保険への加入を検討してみてください。
免許を取得したばかり、または運転頻度が低いなどの理由で運転に自信がないときは、「事故を起こしてしまうかもしれない」と不安になるかもしれません。
その場合は、車両保険に加入することで少しでも不安を軽減できるでしょう。もちろん運転に自信があっても、過信は禁物です。万が一に備えて車両保険に加入したうえで、慎重な運転を心がけてください。
貯蓄が少ない、まとまった費用をすぐには準備しづらい、という方にとっては、修理代や治療費などの急な支出は避けたいものです。事故にあった場合に備えるためにも、車両保険に加入しておくことをおすすめします。
また、対人事故や対物事故が発生したときは、想像以上に高額な損害賠償や慰謝料などがかかる恐れもあります。自動車保険の保険金額や保険金が支給される条件を見直し、万が一のケースにも備えることが大切です。
運転頻度が高い方は、事故のリスクも高くなります。
また、飛び石やいたずら、落書きなど、ご自身の運転技術に関係のないことが原因で車が損傷する恐れもあります。車を日常的に使う方も、車両保険を検討してみてください。
自然災害によって車に被害を受けたときも、車両保険で補償されることがあります。台風や洪水、高潮などの自然災害の被害を受けやすい地域に住んでいる方は車両保険への加入のご検討をおすすめします。
ただし、加入前に車両保険の支払条件もチェックしましょう。災害によっては補償対象外となるため、地域特有のリスクに備えられないケースも想定されます。
車両保険の必要性は?事故の相手方が無保険だった場合も想定しよう
交通事故の怖いところは、自分の運転技術がどれだけ高くても、事故に巻き込まれてしまう可能性がある点です。そのため、車のハンドルを握る以上は、自分が加害者になる場合だけでなく被害者になる場合も考えて、自動車保険で備えておくことが重要です。
自分の車が他人の車から損害を受けた場合を例に考えてみましょう。車両保険に加入していれば、修理代等は速やかに支払われます。これが、車両保険に加入していない場合は、修理代は自己負担した上で、事故相手と交渉して過失割合を決める手間がかかります。加えて、事故相手が無保険で十分な賠償資力もない場合には、残念ながら損害賠償してもらえない可能性もあります。
車両保険の保険料負担が重いのは、裏を返せば、それだけ車両が被害を受けるリスクが大きいということです。車は私財の中でもかなり高価なものなので、日々の暮らしに欠かせない場合は特に車両保険の必要性は高いと考えます。
前述のとおり、車両保険は「車両保険(一般型)」と「車対車+A(エコノミー型)」2種類のタイプに分かれており、それぞれの補償範囲は一部異なるものの、さまざまなケースで補償されます。ここでは、車両保険が適用されるケースについて具体例をもとに解説します(なお、保険会社や契約内容によって適用されるケースは異なることもありますのでご注意ください)。
【車両保険が適用されるケースの具体例】
ご自身の過失で車同士の事故を起こしてしまった場合にも車両保険は役立ちます。一般的に、車同士の事故であっても、相手の車に100%の責任がある事故の場合、ご自身の車の損害額については相手の対物賠償保険から支払われます。
しかし、車同士の事故では、双方に責任(過失)が発生することも多く、ご自身の修理費の全額が相手の対物賠償保険から支払われるとは限りません。そのようなときに役立つのが車両保険です。
車両保険に入っていれば、ご自身の過失で自己負担になる車の修理費用(ご自身の過失割合)も補償してくれるからです。以下の例をみていくとわかりやすいでしょう。
ご自身にも過失のある車同士の事故の例
【前提条件】
※上記は契約している保険金額の上限を超えていない場合。「免責金額」を設定している場合は、免責金額内の修理費用は自己負担。
上記は、車同士の事故が起きてしまい、ご自身の車の修理費用が50万円になったケースです。過失割合が「自分:相手=40:60」という前提で考えた場合、相手の負担額は30万円となり、残りの20万円は自己負担となります。
このような場合には車両保険で20万円(免責金額を除く)が支払われるため、自己負担を回避できます。車同士の事故で修理費用を自己負担できない場合には、あらかじめ車両保険への加入を検討すると良いでしょう。
日本は、地震や台風をはじめとする自然災害が多発しやすい地域です。自然災害によって、自宅の建物への被害だけでなく、車への被害も起こることが想定されます。
たとえば、台風による強風でものが飛んできて契約している車が傷つくことや、ゲリラ豪雨で車が水没することなども考えられるでしょう。
車両保険は、自然災害で発生した車両の損害についても補償の対象となることがあります。野外に駐車している、駐車している場所の近くに河川があるなど、自然災害のリスクがある場合は車両保険への加入を検討する必要があるかもしれません。
ただし、同じ自然災害でも、車両保険は、全ての自然災害による損害を補償の対象にしているわけではありません。一般的には地震・噴火またはこれらによる津波で生じた損害は補償の対象外となっています。
これは、一度に巨大な損害を発生させる恐れがあるため、適切な保険料を設定できないためです(保険会社のなかには一時金を支払う特約を用意しているところもあります)。
車両保険で補償される自然災害・補償されない自然災害
自宅の敷地外の駐車スペースに駐車しているというような場合、契約する車が人気車種の場合、契約する車が高級車である場合などは、盗難やいたずらのリスクが高くなります。
盗難やいたずらのリスクに備えたいというときも、車両保険への加入を検討するメリットがあるといえるでしょう。車両保険に加入しておけば、契約している車がいたずらで傷ついたときや、盗まれたときに、保険金を受け取ることができます。
車両保険は、車が全損してしまった場合にも役立ちます。なぜなら車が全損した場合、車両保険から車両の時価額に応じた補償金額の全額が支払われるからです。なお、自動車保険における全損とは「物理的全損」と「経済的全損」に分かれます。
車が修理不可能になるほどの損害を受けた状態を「物理的全損」、修理費用が車両保険金額を上回ってしまった状態を「経済的全損」といいます。全損と判断されると、免責金額を設定していても自己負担は発生せず、車両の時価額に応じた車両保険の保険金額の全額が支払われます。
運転に自信がない場合も、車両保険への加入を検討するメリットが大きいと考えられるでしょう。運転に不慣れだったり、運転技術が乏しかったりする場合、事故を起こしてしまう可能性が高いからです。
車両保険に入っていない状態で何度も事故を起こすと、修理費用による経済的な負担は大きくなってしまいます。さらに、運転に不慣れな方は、車同士の事故だけではなく、車庫入れなどに失敗して車を傷つけてしまうといった自損事故が起きる可能性も高まります※4。
車両保険が役立つタイミングのひとつが、このような相手がいない事故である単独事故(自損事故)を起こしたときです。相手の車の修理代には対物賠償保険が使えますが、ご自身の車の修理代には「車両保険」しか使える保険がないからです。
※4 単独事故(自損事故)を補償の対象としているのは、一般的に車両保険のなかでも補償範囲が広い「車両保険(一般型)」と呼ばれる車両保険のタイプの場合になります。保険会社によって補償対象が異なりますので、詳細は各保険会社にお問い合わせください。
以下の場合は、車両保険が適用されない恐れがあります。
【車両保険が適用されないケース】
なお、適用されないケースも、保険会社や契約内容によって変わります。自動車保険に加入する前に確認しましょう。
車両保険を使う場合には、どのくらいの保険金を受け取ることができるのでしょうか?車両保険は契約している車が損害を被ったときに、車両保険金額の範囲内で保険金が支払われる保険です。したがって、支払われる保険金の「上限金額」が決められているのが特徴です。
そのため、車両保険への加入時に、支払われる保険金の上限金額である「車両保険金額」を決めなければなりません。
支払われる保険金の上限は「高ければ高いほうがよいのでは?」と思うかもしれませんが、契約者が上限を自由に決めることはできません。車両保険金額は、契約車両の時価で判断されます。
具体的な金額の幅は保険会社により異なりますが、車両保険金額をできるだけ高く設定したい場合は、複数の保険会社から見積もりをとり、比較するとよいでしょう。
以下では、「新車の場合」と「中古車の場合」に分け、車両保険金額が決まる具体的なしくみを解説しているのでご覧ください。
新車を購入した場合は、購入時に支払った金額を車両保険金額に設定することが一般的です。これには、車両本体価格のほかに、付属品の金額や消費税などを含みます。
「付属品」に含まれるもの・含まれないもの
付属品に含まれるもの | (例)警告反射板・非常用信号用具・消火器・カーステレオ・カーナビゲーション・時計・クーラー・タイヤチェーン・潤滑油・バッテリーの電解液・冷房用フロンガス など |
---|---|
付属品に含まれないもの | (例)ガソリン・ボディカバー・洗車用品・クッション など |
出典:一般社団法人 日本損害保険協会 Q&Aを基に作成
また、納車整備費用、消費税以外の税金(自動車税・自動車取得税・自動車重量税)、自賠責保険料・諸費用などは、購入時に支払った金額に含まれません。
そのため、全ての費用が含まれるわけではない点に注意が必要です。また、減価償却の考え方により、契約2年目以降は、車の価値が下がるため、設定できる車両保険金額も前年より低くなります。
ただし、契約期間中に車両保険金額が下がることはありません。車両保険金額が下がるのは、自動車保険の満期により更改するときです。翌年の車両保険金額は、一般的に更改の案内書類などに記載されています。
中古車を購入した場合は、車の型式や契約時点の時価相当額などを基に算出された一定の幅(例:150~180万円など)の中で車両保険金額を設定します。
車両保険金額の一定の幅を決めるのは基本的には保険会社です。ほとんどのケースでは、中古車の購入価格はその一定の幅の中に入りますが、購入価格や希望額が幅の中に含まれない場合は別途、保険会社に相談してみましょう。
車両保険の保険料の相場は一体いくらくらいなのでしょうか。
一般的に車両保険の保険料は、新車や中古車、普通自動車・軽自動車といった種類から車種や年式、車の安全性、過去の事故リスクなどから総合的な基準で算出されます。そのため、車両保険の保険料の金額の平均はいくらなのか、多くの人はどのくらい払っているかということをみても、そのまま参考にできるわけではありません。
一般的には、各保険会社は車の市場販売価格相当額を調査した「車両価格表」を作成しており、その金額をもとに適正な保険価額で保険金額を設定するようにしています。
月々(年間)の保険料の相場は、同じ車種でも型式などのさまざまな条件によって異なります。また、同じ補償内容でも、保険会社が異なると保険料も異なります。そのため、ご自身にあう保険を見つけるためにも、一括見積もりサービスを利用してみるとよいでしょう。一括見積もりサイトであれば、前提条件に沿った自動車保険の保険料を一目で把握できます。
なお、自動車保険に車両保険をつけるかどうかで、保険料が年間数万円~十数万円程度変わることもあります。ぜひ一度、一括見積もりサイトで保険会社や条件ごとの保険料の差を調べてみてください。
自動車保険に車両保険を付帯するときには、「免責金額」を決める必要があります。免責金額とは、車両保険を使うときに契約者が負担する金額のことです。「修理代の自己負担金額」と言い換えることもできます。
保険会社では、一般的に契約者の保険料負担を軽減するために免責金額を設定して契約することができます。具体的には、免責金額を設定していない場合に支払われる保険金から、免責金額を差し引きした金額が保険金として支払われます(ただし、全損の場合は、免責金額を差し引かずに保険金が支払われます)。
「車両保険には入りたいけれど、保険料が上がるのが気になる」「保険料はできるだけおさえたい」という方は、免責金額を設定するとよいでしょう。
なお、車両保険の免責金額の設定方法は保険会社によって異なります。たとえば、車両保険の適用を受ける回数によって変わる「増額方式」の場合、2回目以降の免責金額は初回よりも高くなります。
また、車両保険を使う回数にかかわらず、同額の免責金額を支払う「定額方式」を選択できるケースもあります。免責金額について、詳しくは以下をご覧ください。
たとえば、「車両保険金額100万円、免責金額5万円」と設定した場合で考えてみましょう。このケースで、「修理費用30万円」の単独事故(自損事故)を起こした場合、支払われる保険金は「免責金額5万円を差し引いた25万円」です。
しかし、同一のケースで「修理費用2万円」の自損事故を起こした場合には、車両保険から保険金として支払われる金額は「0円」です。免責金額より修理費用のほうが少ないため、修理費用は保険金からは支払われず、自己資金で修理をすることになります。
したがって、免責金額を低く設定すれば、契約者が支払う保険料は高くなりますが、車両保険を使うときに保険会社から支払われる保険金額が多くなります。一方、免責金額を高くすれば保険料は安くなりますが、車両保険を使うときに保険会社から支払われる保険金額は少なくなります。
このように免責金額の設定次第で保険料を調整できるため、「支払う保険料を少しでもおさえたい」という方は「免責金額を高く設定する」という方法も検討してみるとよいでしょう。なお、設定できる免責金額は保険会社で異なりますので、詳しくは各保険会社へ確認をしてみましょう。
運転技術に自信があれば、免責金額で保険料を調整してみても
ご自身の運転技術が高く、単独事故(自損事故)を起こす可能性が低いと考える方は、前述のとおり、あえて「免責金額を高めに設定」してみる方法を検討してみてはいかがでしょうか。なぜなら、相手がいる事故で相手にも過失がある場合には、免責金額を設定していても、相手からの損害賠償金が免責金額より先に充当されるからです。免責金額よりも損害賠償金が上回れば、免責金額を自己負担しなくて済みます。
車両保険が保険料に占める割合は高いですが、免責金額の使い方を工夫して、うまく保険料を調整するとよいでしょう。免責金額を見直すだけでも保険料の見直し効果は大きくなります。
また、保険会社各社で設定できる免責金額に差があるため、自動車保険の一括見積サイトなどで試算して、ご自身の希望に合う条件のところを探してみると良いでしょう。
車両保険に加入する前におさえておきたいのが、等級との関係です。なぜなら、車両保険を使用すると等級がダウンするからです。
等級とは、等級制度(ノンフリート等級制度)に基づき、事故歴に応じて保険料の割引・割増率を決定するしくみです。等級(ノンフリート等級)は1~20等級に分かれており、新規契約は基本的に6等級からスタートします。
1年間、保険金支払い事故を起こさなければ、次年度は等級がひとつ上がることになりますが、逆に保険金支払い事故を起こすと等級は下がります。保険料の割引率は等級が上がるほど(つまり20等級に近づくほど)大きくなり、3等級以下は保険料が割増しとなります。
保険金支払い事故は、ノンフリート等級が3等級下がる「3等級ダウン事故」とノンフリート等級が1等級下がる「1等級ダウン事故」、ノンフリート等級に影響しない「ノーカウント事故」に分かれます。
当て逃げなどで車両保険を利用した場合は3等級ダウン事故、飛び石でフロントガラスが割れたなど不可抗力の事故で車両保険を使った場合は1等級ダウン事故に該当します。
なお、飛び石やいたずらなどご自身に過失のない事故であっても1等級ダウン事故に分類される点に注意が必要です。等級が下がると翌年の保険料は高くなります。受け取ることができる保険金の額と翌年の保険料増額分を確かめてから、車両保険を使うか検討しましょう。
等級と保険料の割引き・割増し率
出典:一般社団法人 日本損害保険協会 損害保険Q&Aのデータをもとに作成
事故や損害状況によっては、車両保険を使わないほうが良いケースもあります。代表的な例としてあげられるのが、受け取ることができる保険金よりも翌年以降の保険料負担が大きくなるケースです。
先述したとおり、車両保険を使うとノンフリート等級が1等級または3等級ダウンするので、翌年以降の保険料はアップします。翌年以降の保険料がどのくらい上がるのか気になる場合は、保険会社に相談するとよいでしょう。
等級ダウン事故とあわせておさえておきたいのが、無過失事故特約です。無過失事故特約とは、ご自身に過失のないもらい事故で車両保険を使った場合にノーカウント事故として扱われる特約です。つまり、同特約が適用されれば、車両保険を使っても翌年の等級は下がりません。
ただし、無過失事故特約が適用されるのは、一定の条件を満たす場合のみです。具体的には、原付・自動二輪車を含む車との接触または衝突事故であること、ご自身に過失がないこと、相手の車と運転者を確認できることなどの条件を満たさなければなりません(詳しい条件は、契約する保険会社でご確認ください)。
たとえば、自転車にぶつけられた場合は、ご自身に過失がなくても無過失事故特約を適用できません。自転車にぶつけられた事故で車両保険を使うと、翌年の等級は3等級ダウンします。
もしものときに頼りになる特約ですが、さまざまな事故に適用できるわけではない点に注意しましょう。
また、7等級以上に適用される「事故あり係数」が適用され、無事故の場合よりも割引率が下がる点にも注意が必要です。車両保険を使う前に、保険会社に一度相談してみてください。
車両保険金額は自動車の時価で算出されます。
そのため、自動車を乗り換えない限りは1年ごとに保険金額が下がることが一般的です。
地震・津波・噴火により車が損傷したときは、車両保険では補償されません。
ただし、保険会社によっては地震・津波・噴火による被害に適用される特約を提供していることがあります。万が一に備えるためにも、特約の種類や補償内容を確認してみてください。
車両保険を使うかどうかは慎重に判断。迷ったら保険会社に相談を
車両保険は対象になるすべての補償に使ったほうがいいわけではなく、車両保険を使わない方が良いこともあります。
たとえば、車両保険を使ったほうがよいケースとして、「洪水や豪雨などによる自然災害」があります。この場合は、通常の事故(3等級ダウン)とは異なり、1等級ダウンで済む場合が多いです。そのような場合には保険を使用したほうがよいケースといえるかもしれません。
とくに、洪水や豪雨による冠水などで自動車が水没した場合には、修理費用が高額になり全損扱いになることもありますので、保険を使うメリットが大きくなります。
一方で、「盗難」「いたずら」などによる修理の場合も同様に1等級ダウンとなります。
しかし、単一パネルの軽度の損傷のみなど被害が少額だった場合などは、1等級ダウンによる以後の保険料負担の増加の方が大きくなる可能性があるため、慎重に判断したほうがよいケースでしょう。迷ったら、契約している保険会社に相談してみましょう。
ところで、車両保険は、契約できる保険金額が年々少額になり、”やめどき”を迷う人が少なくありません。そんなときは、まずは「車両保険(一般型)」から「車対車+A(エコノミー型)」に変更したり、免責金額を大きくしたり、他社への乗り換えなどで段階的に保険料における車両保険の比重を落としながら見極めていく方法もあります。
最終的に、保険金額が数十万円になるなど預貯金と変わらない状況となったら外すなどの目安を決めて、保険料との費用対効果を吟味して判断してみるとよいのではないでしょうか。
自動車保険は、同じ条件・同じ補償内容であっても保険会社によって保険料が異なります。納得できる保険料で自動車保険に加入するためにも、複数の保険会社で見積もることがおすすめです。
一括見積もりサイトなら、同じ条件設定で複数の保険会社の保険料をまとめて見積もり依頼ができるため効率的にご自身にあう自動車保険を探すことができます。ぜひご利用ください。
車両保険は、契約している車が事故などで損害を被ったときに、修理費用などを補償してくれる保険です。補償範囲はタイプによって異なりますが(「車両保険(一般型)」と「車対車+A(エコノミー型)」)、一般的に車同士の事故、飛び石、盗難、いたずら、火災、台風、洪水などで車が損害を被ったときにも保険金が支払われ、幅広いリスクに備えられる点がポイントです。
車両保険に加入すると、契約者が支払う保険料の負担額が上がるため加入を迷う方もいるかもしれません。しかし、保険料の金額だけで「加入する」「加入しない」を決めるのではなく、補償内容などを理解した上で、その必要性を検討することをおすすめします。
もし保険料の負担が大きいことが気になる場合は、補償範囲が狭い「車対車+A(エコノミー型)」に加入したり、免責金額を高く設定することなどを検討したりしてもよいでしょう。
また、保険会社各社で設定できる免責金額に差があるため、自動車保険の一括見積もりでの試算をおこない、ご自身の希望に合う条件のところを探してみるのもひとつの方法です。
車両保険の保険料は、免責金額を見直すだけでも保険料の負担軽減効果が大きくなります。
生命保険会社に約8年勤務後、住宅建築の建設会社に19年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。また、ファイナンシャルプランナーとして、ライフプランをもとにした教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスを行う。主婦・母・自営業の嫁・親の介護の経験を活かし、相談を受けている。
(地域密着型・お客様に寄り添うFP)
https://takasugi-fp.com
【保有資格】
CFP®(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においては Financial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの最終更新日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
( 掲載開始日:2022年12月28日 )
2412695-2512
最短5分から
1番安い自動車保険を見つけよう!