最終更新日:2025年1月30日
自動車保険を選ぶとき、「何を基準に選べばいいの?」「難しくて選べない……」などと思われる方もいるのではないでしょうか。そのため、自動車保険をなんとなく選んでしまったり、おすすめされたプランにそのまま加入する、ということも珍しくありません。
しかし、自動車保険は上手な選び方をすれば、保険料をできるだけおさえながらご自身に適切な補償を付けることが可能です。この記事では、必要な補償の決め方や保険料をおさえるためのポイント、自動車保険のおすすめの選び方を紹介します。
「自動車保険」と聞いたとき、どんな保険をイメージするでしょうか。
実は自動車保険(広義)は強制加入か任意加入かで分けられます。
具体的には、「強制保険」と「任意保険」の2つであり、強制保険は「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」、任意保険は「賠償責任保険」「傷害保険」「車両保険」で構成されます。
なお、本記事では、自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は「自賠責保険」、任意保険は「自動車保険」といいます。
自動車保険の種類
自賠責保険は、自動車が急速に普及した頃に多くの事故被害者を救済する目的でできたものであり、必ず加入しなければならないことが法律で定められています。自賠責保険に加入しないまま運転すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられ、免許停止にもなります。
しかし、自賠責保険が強制加入だからといって補償が十分であるとは限らず、下図の「自賠責保険と任意保険の補償の違い」をみると、「相手への補償」の中の「人への補償」の欄に自賠責保険は「△」の印が付いています。
自賠責保険と任意保険の補償の違い
※(傷害の場合)120万円まで (死亡の場合)3,000万円まで (後遺障害)4,000~75万円まで
なぜ「△」なのかというと、補償はあるものの補償金額に上限額があるということを示しているからです。ここで、ご自身が自動車事故を起こし相手に損害を与えた場合の補償金額をみてみましょう。
具体的には、事故の相手方が死亡した場合には3,000万円、後遺障害を負わせた場合には4,000万円~75万円、傷害を負わせた場合には120万円という補償の上限額が、自賠責保険には設定されています。
なお、自賠責保険の保険料は、車種や契約期間によって一定の保険料が決められています(詳しくは後述します)。
自賠責保険だけでなく、自動車保険についても上図をみてみましょう。自動車保険(上図では「任意保険」と記載)に関しては「相手への補償」だけでなく「自身への補償」についても「〇」の印が付いています。
たとえば、昨今、数億円もの賠償額になる人身事故が多発していますが、自賠責保険だけでは補償に上限額があるため、支払うべき賠償金の全額を賄いきれず、その残額の支払いを自己負担しなければならなくなり、生活が破綻してしまう可能性もあります。
しかし、自動車保険に入っておけば、保険金額を“無制限”にすると自賠責保険で不足する金額に備えることもできて安心です。また、自動車保険に加入していれば、事故でご自身の車を損傷させた場合の車の修理代や、事故でケガを負った場合の医療費、仕事を休んでいる間の収入減もカバーできます。
したがって、車を運転するなら、基本的には自動車保険には加入するものと考えた方が良いでしょう。
加入する自動車保険を選ぶ際は、以下のポイントを意識して、ご自身の状況やニーズにあった商品を探してみましょう。
【自動車保険の補償を選ぶポイント】
以下で、自動車保険の選び方のポイントを順番に紹介します。
自動車保険は名前のとおり、自動車に関わるさまざまなリスクを補償するための保険です。リスクごとに分けた結果、自動車保険はおもに7種の補償から選べるしくみになっています。
具体的には、「対人賠償責任保険」「対物賠償責任保険」「人身傷害補償保険」「搭乗者傷害保険」「自損事故保険」「無保険車傷害保険」「車両保険」の7種です。
自動車保険の7種の補償は、おもに「相手への賠償」「ご自身への補償」に大別され、それぞれ「人」と「もの」に対する補償に分かれます。具体的には下図のとおりです。
任意保険で補償される内容
事故を起こし相手にケガをさせた場合など、「相手への補償」のうち「人」に関する部分は、「対人賠償責任保険」でカバーできます。「自賠責保険も同じ補償なのでは」と思う方もいるかもしれませんが「半分正解」です。
相手が亡くなった場合やケガをした場合に、自賠責保険の補償上限額を超える額について補償するのが「対人賠償責任保険」です。たとえば、死亡事故の場合3,000万円までは自賠責保険で補償されますが、3,000万円を超えた部分は対人賠償責任保険の補償範囲となります。
続いて、上図の「相手への補償」のうち「もの」に関しては「対物賠償責任保険」で補償されます。車や壁など他人のものを壊し、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。
この①②の2つが自動車保険に加入するおもな目的とされています。実際の賠償額が数億円に及ぶケースも多い現状を踏まえて、いずれも保険金額を“無制限”で契約するのがポイントといえます。
上図の「自身への補償」のうち「人」に関する補償は4種あります。
まず、契約した自動車に乗っている方がケガをしたり、後遺障害を負ったり死亡したりした際に、保険金を受け取ることができる「搭乗者傷害保険」があります。
加えて、ガードレールや道路標識にぶつかったなど相手がいない事故による傷害をカバーする「自損事故保険」と、ひき逃げなどで事故相手がわからないケースでも泣き寝入りしなくて済むように、ご自身の保険で死亡・後遺障害をカバーする「無保険車傷害保険」の3点セットで以前は契約されていました。
しかし、「人身傷害補償保険」には、「搭乗者傷害保険」、「自損事故保険」、「無保険車傷害保険」の3つの保険の補償内容が含まれています。そのうえ、ご自身の過失分まで保険金として受け取ることができるため、最近では「人身傷害補償保険」を主軸にするケースが増えています。
上図のうち、「自身への補償」の「もの」に対する補償は「車両保険」です。契約した車両の修理代などを補償します。車両保険を契約する際には「車両保険(一般型)」か「車対車+A(エコノミー型)」のいずれかの種類を選びます※1。
※1 種類のそれぞれの名称は各保険会社の自動車保険ごとに異なります。「一般条件」「一般補償」「フルカバータイプ」「エコノミー」など、保険会社によってさまざまな呼び方があります。この記事では「車両保険(一般型)」「車対車+A(エコノミー型)」と記載しています。
下表にあるように、車両保険の種類はそれぞれ補償範囲に差があり、「車対車+A(エコノミー型)」は補償範囲が狭い分、「車両保険(一般型)」より保険料負担は軽くなります。
車両保険は、自動車保険のおもな7種の補償の中でとくに保険料が高いため、補償範囲の選び方をしっかり検討することが、保険料をおさえるための大きなポイントとなります。
車両保険の種類と補償範囲の違いの例
事故内容 | 車両保険 (一般型) |
車対車+A (エコノミー型) |
---|---|---|
他人の自動車との接触や衝突 | 〇 | 〇 |
火災・爆発・台風・洪水・高潮・騒擾(じょう) | 〇 | 〇 |
飛来中または落下物との衝突 | 〇 | 〇 |
落書きやいたずら | 〇 | 〇 |
盗難 | 〇 | 〇 |
単独事故(自損事故) | 〇 | × |
当て逃げ | 〇 | △ |
地震・噴火・津波 | × | × |
※「当て逃げ」は車対車+A(エコノミー型)では補償対象外となる保険会社もあります。(車両保険は補償範囲によってタイプが異なる)
なお、車両保険の必要性は人によって異なり、「多少の傷ならそのままでも良い」と考える方もいれば、「自己負担で修理するため車両保険は不要」と考える方もいます。ご自身に合った補償を選ぶためにも、車両保険の必要性をしっかり把握したうえでつけるかどうかを判断しましょう。
自動車保険に限らず、保険や金融商品などを選ぶときは「特約」にも目を配ることが重要です。「特約」は、いわゆるメインの補償にオプションで付帯するものであり、自動車保険ではその使い勝手を良くしたり、補償の厚みを増したりすることができるためです。
各保険会社からさまざまな特約が用意されていますが、一般的に用意されている代表的な特約を以下でご紹介します。
【代表的な自動車保険の特約】
セカンドカー割引きとは、2台目以降の車に初めて自動車保険を契約する際、2台目以降の車の等級が優遇される制度です。
通常、等級制度(ノンフリート等級制度)による自動車保険の等級は6等級からスタートします。しかし、セカンドカー割引きが適用される場合は7等級からスタートするため、よりおさえた保険料で自動車保険を契約できます。
自動車事故や日常生活における事故の当事者になった場合に、弁護士に委任する際にかかる費用などが補償されることがあります。
「もらい事故」などご自身に責任がない事故の場合は保険会社の示談交渉サービスを使えないため、この特約が役立ちます。
日常生活上の自動車事故以外の事故で、相手が亡くなった場合やケガをした場合、相手のものに損害を与えたりして法律上の損害賠償責任を負った場合に補償されます。
自動車保険に特約で付帯すると保険金額を“無制限”で契約できたり、示談交渉サービスが付いていたりとメリットがあります。
友人から借りた車やレンタカーなど、他人の車両で運転中に事故を起こした場合に、その車両の持ち主の保険ではなく、ご自身の保険が使えるようにする特約です。ニーズが高いため、記被保険者(ご自身の自動車保険において保険を付ける車両をおもに運転する方)の個人の契約については自動付帯されるのが一般的です。
125cc以下の原動機付自転車や50㏄以下の3輪以上の車両の運転中に事故を起こし、相手が亡くなった場合やケガをした場合、相手のものに損害を与えた場合に補償される場合があります。
補償を受けても自動車保険のノンフリート等級制度には影響が出ないことや、バイク保険に主契約で加入するよりも保険料が一般的にリーズナブルな傾向にあるなどのメリットがあります。ただし、バイク保険に比べると補償内容が限定されていることもあるため、どちらがご自身に合う補償内容かをしっかり確認する必要があります。
車両保険を契約する車両が新車登録から一定期間内(保険会社によって異なる)の場合に限り付帯できる特約です。
全損、あるいは修理費用が新車価格相当額の50%以上となった場合に、車の再購入費用として保険金を受け取ることができます。なお、内外装・外板部品のみの損傷の場合や、盗難の場合には対象とはなりません。
車両保険の保険金支払い時における自己負担額に関する特約です。
保険期間中の最初の事故について、ほかの自動車との衝突・接触事故で、相手を確認できる場合に限り、「1回目の事故:5万円、2回目以降:10万円」などの自己負担額を定めている場合でも、自己負担額を差し引かずに保険金を受け取ることができます。
月々650~850円ほどでドライブレコーダーの貸与が受けられる特約で、現在、大手損害保険会社を中心に取扱われています。貸与されたドライブレコーダーが衝撃を感知すると、前後15秒ほどの画像とGPSによる位置情報が保険会社に報告され、事故報告が完了するというものもあります。
また、安全運転を促すアラート機能や安全運転診断レポートのほか、あおり運転対策機能なども注目されています。
基本的に地震・噴火・津波による損害は車両保険の補償対象外ですが、この特約を付けると、地震などでの全損時に限り、50万円を保険金として受け取ることができます。
自動車保険の補償内容を選ぶ際は、ほかに加入している保険と補償内容が重複していないかチェックしましょう。たとえば、クレジットカードや別の保険に個人賠償責任特約が付帯している場合、自動車保険の対人賠償責任保険と補償内容が重複する可能性があります。
重複を防ぐには、ご自身だけでなく家族の補償範囲もチェックすることが重要です。たとえば、ご自身以外の家族が家族全員を補償する保険に加入している状態で同じ補償の特約を自動車保険に付帯させると、補償内容が重複してしまいます。
自動車保険の加入前は家族全員の保険加入状況をチェックし、補償内容に重複する部分があるようならいずれかの保険の補償を外しましょう。
自動車保険選びでは、ご自身が納得できる事故対応力が保険会社にあるかどうかもチェックしたいポイントです。事故対応力の有無を判断するポイントの例としては、以下の4つがあげられます。
【事故対応力の有無を判断するポイント】
なお、事故時のサービス内容は保険会社によってさまざまです。たとえば、救急車や警察の手配だけでなく、警察への届け出に関するサポートまでおこなってくれる保険会社もあります。ご自身にとって必要なサービスを受けるためにも、具体的なサービス内容は事前に確認しておきましょう。
また、事故時は保険会社の事故受付センターと直接やり取りをすることになるため、顧客対応力もチェックするとより安心です。
自動車保険の保険料をおさえたい場合は、割引きサービスの内容もチェックしておきましょう。一般的な自動車保険は条件を満たすことで適用されるさまざまな割引きサービスを設けており、適用される割引きサービスが多いほど保険料をおさえられます。以下は、自動車保険の割引きサービスの一例です。
【自動車保険の割引サービス】
また、走らなかった分の保険料を翌年にくりこせる「くりこし割引き」や保険契約を継続すると適用される「継続割引き」など、自動的に付帯される割引きサービスもあります。
自動車保険の選び方を考えるうえで理解しておきたいのが、加入方法に「通販型(ダイレクト型)」と「対面販売型(対面型)」があることです。
対面販売型(対面型)は、保険代理店の担当者と代理店の店舗や自宅などの場所で、対面で自動車保険に加入する方法です。保険代理店は保険会社からの委託により、代理店手数料を受け取って保険募集するしくみであり、その分だけ自動車保険料は高くなる傾向があるといえるでしょう。
それに対して、通販型(ダイレクト型)は、インターネットや電話などを通じて保険会社との直接のやりとりで加入するしくみで、対面販売型(対面型)での代理店手数料などといった諸経費などを削減でき(反面、広告費等の諸経費が発生します)、比較的料金負担をおさえた保険料水準になっています。
ただし、これは全体的な傾向の話であって、すべての場合において通販型(ダイレクト型)の方がリーズナブルとはいえません。よって、全体の傾向として通販型(ダイレクト型)で保険料をおさえやすいケースは多いものの、必ずしも対面販売型(対面型)の保険料が高くなるとは限らない点に注意が必要です。なお、おもな違いは以下の表のとおりです。
「通販型(ダイレクト型)と対面型の自動車保険の違い」
対面型 | 通販型(ダイレクト型) | |
---|---|---|
加入方法 | 代理店の担当者を通じて自動車保険に加入する。 | ウェブサイトや申込書類の郵送等によって自動車保険に自分自身で直接加入する。 |
保険料 | 保険会社が代理店に支払う代理店手数料が必要なため、通販型(ダイレクト型)よりも保険料は高め。 | 代理店手数料は不要な場合が多いため、対面型よりも保険料は安め。ただし、事故にあう可能性が高いと判断される条件の場合は、保険料が高くなることも。 |
補償内容の決め方 | 代理店の担当者と相談して決めることができる。 | 基本的に自分で考えて決める(ただし、ウェブサイトや電話で保険会社に問い合わせることはできる)。 |
事故現場へのかけつけ | 代理店の担当者によっては事故現場にかけつけてくれることもある。 | 保険会社の担当者が事故現場にかけつけることはない(一部保険会社ではかけつけサービスを提供)。 |
保険会社との事故後のやりとり | 代理店の担当者を通してやり取りを行う場合もある。 | 契約者が直接やり取りを行う。 |
通販型(ダイレクト型)と対面販売型(対面型)は、保険料水準の違いだけではなく、それぞれの特徴もおさえて選んだ方が良いでしょう。
たとえば、対面販売型(対面型)は、インターネットや電話での申込みでは不安がのこる方、加入手続きのサポートをしてもらいたい方、また担当者に相談して補償内容を決めたい方におすすめです。
一方、通販型(ダイレクト型)は、全体的に保険料をおさえやすいだけでなく、好きな時間にじっくりご自身のペースで検討したり、ご自身で調べて決めたりしたい方に向いています。
上記を参考に、どちらがご自身にあっているのかを考え、加入方法を選んでみてください。
自動車保険を選ぶ際によく目に「ロードサービス」とは「ガス欠で車が動かなくなった」「タイヤがパンクした」「鍵をつけたままドアロックしてしまった」「バッテリーが上がって車が止まってしまった」など、車の“故障”に電話1本で駆けつけてくれる心強いサービスです。
「自動車事故には遭ったことがないけれどロードサービスは複数回利用した」方もおり、カーライフに身近な存在です。
一般社団法人 日本自動車連盟(以下「JAF」といいます)が提供するもののほか、自動車保険に無料の付帯サービスとされていたり、自動車保険の特約(有料)として用意されていたりすることもあります。
ロードサービスは、あくまで故障対応であって事故対応ではないため、ロードサービスを使っても自動車保険の等級には影響はありません。自動車保険には、加入する経路によって通販型(ダイレクト型)と対面販売型(対面型)に大別されますが、現状加入経路ではなく保険会社ごとに内容が異なります。
たとえば、レッカー移動の距離数や、ガス欠の補給可能なリットル数、宿泊日数など、各保険会社でそれぞれ差があるため、どの保険会社の自動車保険にするか絞り込んだうえで悩む方は、ロードサービスの内容を確認して判断してみるのも良いでしょう。
なお、ロードサービスが自動車保険に自動付帯するとは限りません。自動車保険によっては、ご自身で加入するかどうかを選択できる特約として設けられている場合もあります。
各保険会社で用意されているロードサービスのメニューはさまざまです。そこで、以下ではおもなサービスを2つ紹介します。
車が故障等で自力走行不能となった場合、レッカー車が出動し現場から修理工場等まで車を牽引してくれるサービスです。無料で牽引できる上限距離が設定されているため、修理工場を契約者側から指定するなどで上限距離を超える場合は、費用は自己負担になる点に注意が必要です。
キー閉じ込みをしてしまった際のカギ開けのほか、バッテリー上がりの際のエンジンの再始動、パンク時に契約者などが持っているスペアタイヤへの交換作業、ガス欠の際のガソリンお届け作業(ガソリン代は契約者等の負担)などをおこないます。
そのほか、落輪の引き上げ作業や、雪道でのスタックについて走行可能な場所まで引き出す作業、宿泊費用など、各保険会社で異なるメニューを提供しています。上限回数や距離、費用の上限など、無料の範囲が設定されているのが一般的で、内容は保険会社ごとに異なります。
自動車保険選びに迷ったときは、自動車保険の口コミサイトやSNSでユーザーからの評判を調べてみるのもおすすめです。ユーザーからの不満点や評価の高いポイントなど、実際に保険を契約している方ではないとわからない意見は、保険選びの参考となります。
ただし、ユーザーの意見には主観的な内容が含まれている場合もあるため、あくまで参考程度に留めましょう。
自動車保険をご自身で選ぶとき、まず気になるのは保険料ではないでしょうか。「保険料をおさえたい」「見直しのポイントが知りたい」などとお考えの方もいるでしょう。
保険料をおさえるためには、まず自動車保険の保険料の決まり方について概要を知っておくことが重要です。そこで、自動車保険に初めて加入する人が知っておきたい保険料をおさえるポイントを7つ紹介します。
【保険料をおさえるためのポイント】
自動車保険は、安全運転を続けるベテランドライバーほど保険料が安く、運転経験の浅い初心者ドライバーほど保険料が高くなるしくみになっています。
具体的には、自動車保険では保険期間中の事故の有無に応じて保険料の割増し・割引きがおこなわれます。前年度の契約中の事故の有無が翌年度の契約の保険料に反映されるというものであり、この事故情報を「等級」として表示しています。
下図の「等級制度(ノンフリート等級制度)のしくみ」にあるように全部で20等級に分かれており、1年間無事故なら翌年度は1等級アップします。反対に自動車保険を使う事故を起こした翌年度は1~3等級ダウンします。
等級が上がるほど保険料の割引き率が高くなる
出典:一般社団法人 日本損害保険協会 損害保険Q&Aのデータをもとに作成
初めて運転する方の例でいえば、一般的には6等級からスタートし、1年間無事故であれば翌年度は7等級になって割引きされ、3等級ダウンの事故を起こせば翌年度は3等級になって割引きなし(割増しあり)になります。
また、事故がある場合と無事故だった場合で、同じ等級でも割引き率に差があります。たとえば、6等級のときに無事故で翌年度に7等級になった場合と、10等級のときに事故を起こして7等級になった場合では、割引き率に差が出ます。
保険料を安くするには、まずは安全運転を続けることが重要です※2。
※2 ただし、車の事故実績にもとづく「型式別料率クラス」の性質上、安全運転を続けてご自身の等級が上がっても、同じ型式の自動車による事故が増加して事故率が高くなるなどの理由から保険料が上がってしまうケースもありますのでご注意ください。
自動車保険の保険料は、同居の家族も含めて、運転する方の年齢条件を設定すると、設定しない場合の「全年齢補償」と比べて安くなります。自動車の事故率を年齢で見ると、20歳や75歳以上の事故が多く、35歳前後の年齢は事故率が下がる傾向にあります。
そのため、運転する方に年齢範囲に応じた区分を設け、運転者の年齢の幅が狭いほど大きく割引きする制度が導入されています。
たとえば、夫婦2人とも28歳という場合なら、「26歳以上補償」という年齢条件を付ければ、年齢を問わず補償する「全年齢補償」に比べて保険料は割引かれ、安くなります。
出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況 2023年度版」(2024年4月発行)をもとに作成
記名被保険者の年齢層の区分は、「26歳以上補償」の部分がさらに6区分に分かれます。「26歳以上補償」は「30歳未満」、「30歳以上40歳未満」、「40歳以上50歳未満」、「50歳以上60歳未満」、「60歳以上70歳未満」、「70歳以上」に区分されます。
一般的に年齢を重ねるとともに交通事故の件数は減少しますが、60歳を超え、高齢者となると増加に転じます。この点を保険料に反映するため、運転者の年齢区分とは別に記名被保険者の年齢区分を設けています。
保険の対象になる方が少ないほどその保険で保険金請求する確率が減ることから、運転者を限定すると保険料をおさえることが可能です。
運転者を記名被保険者1人に限定するほど、割引率が大きく保険料はおさえられ、対して夫婦、家族、限定なし、というように運転者の対象者が増えるにつれて保険料は高くなります。家族構成と普段の自動車の用途を考えて、運転者を限定することにより、上手に保険料をおさえられます。
補償される運転者の範囲
※上記の範囲は保険会社によって異なります。
自動車保険には、自動車に乗る機会が少ないほど事故に遭うリスクが減少するため、保険料がおさえられる前提があります。
たとえば、自動車保険の使用目的が「業務用」であれば乗車時間は長くなることが予想されますが、「日常・レジャー用」であれば週末やレジャーのわずかな時間だけと限定されるため、保険料はおさえられます。同様の理由で、走行距離が長いものより短い方が保険料をおさえられる保険会社もあります。
自動車保険の使用目的と保険料
また、車の型式によっても保険料が変わります。具体的には、自動車の型式ごとに事故リスクを区分した「型式別料率クラス」が適用されているからです。構造や性能など自動車ごとの特性やその自動車を運転するユーザーも型式ごとに差があり、リスクが異なります。
そのため、一般的には普通乗用車よりも軽自動車の方が保険料は安くなります。
自動車を購入することを検討している方は、車の選び方や使い方を工夫することで、さまざまな要素から自動車保険料をおさえられる点を覚えておきましょう。
自動車保険のおもな7種の補償の中で、保険料負担がとくに大きいのは車両保険です。補償範囲をしっかり検討することが、保険料をおさえるための大きなポイントです。
自動車が古くなれば車両保険そのものを付帯しないという方法もありますが、車両保険は補償範囲の違いによって2つのタイプ(「車両保険(一般型)」と「車対車+A(エコノミー型)」)が用意されていることが一般的です。
そのため、車両保険で備えておくなら、2つの補償タイプのうち、補償が限定される「車対車+A(エコノミー型)」を選ぶのも一策です。自損事故や当て逃げの補償がない代わりに保険料をおさえられます。
さらに、車両保険で設定する自己負担金額(免責金額)を高めに設定すると保険料がおさえられます。事故が起きたときに自己負担の金額が増えてしまいますが、少額の損害であればわざわざ自動車保険を使いたくないという方や、運転技術に自信がある方はメリットと感じる場合もあります。
運転免許証を返上する高齢者の方や、自動車が不要な利便性の高い地域に移り住んだ方など、自動車を手放す方もいるかもしれません。そこで保険料の負担をおさえる方法として、利用しなくなった自動車保険を引継ぐ方法もあります。
たとえば同居の親子間の場合、等級の高い親などから車もしくは車両入替手続きを用いて自動車保険を引継ぐことができれば、保険料負担をおさえることができます。以下のように、等級の高い親の自動車保険を同居の子どもが引継ぎ、親は新たに自動車保険に加入する場合のケースをみてみましょう。
同居の親子間における等級の引継ぎ
親の等級を引継ぐことができれば、親の保険料は自動車保険の新規加入で等級が下がり高くはなるものの、年齢条件により子どもが新規加入する場合に比べれば負担をおさえられることがあります。したがって、車両入替と等級引継ぎをあわせて利用することで、保険料の総額をおさえられる可能性が出てくるのです。
自動車保険の保険料をおさえたい方は、現在の補償や特約が本当に必要かどうかを確認しましょう。
たとえば、契約当時にファミリーバイク特約を付帯させたが現在はバイクに乗っていない場合、ファミリーバイク特約は不要です。不要な補償や特約がある場合は外すことで保険料をおさえられます。
ほかにも、保険の支払い方法を長期にする方法も保険料をおさえる手段のひとつです。
保険会社によっては、長期契約した自動車保険の保険料を一括で支払うと、同じ条件で1年契約した場合よりも、トータルの保険料がおさえられる場合があります。
また、保険料の払込み方法については、1年ごとに保険料を支払う「年払い」や半年ごとに保険料を支払う「半年払い」を選択することで、毎月保険料を支払う「月払い」よりトータルの保険料をおさえられるのが一般的です。
自動車保険の保険料は、「一般的な金額はいくら」と一言で表すにはとても難しいです。なぜなら、仮にまったく同じ条件の車について複数の保険会社で保険料を試算しても、それぞれ保険料が異なる場合があるためです。
試算したい自動車保険が「通販型(ダイレクト型)か対面販売型(対面型)か」で保険料は異なり、「保険料の決定に年間走行距離を反映しているかどうか」によっても異なります。
また、「ゴールド免許割引き」が設定されていても保険会社によって割引率が異なるため、実際に保険料を試算してみなければわからないことがあります。
そのため、ご自身に必要な補償を備えつつ、できるだけ保険料をおさえた自動車保険を探したいという場合には、実際に保険会社に見積もりを取ってみるのが良いでしょう。
なお、各保険会社に電話で問い合わせをしたり、各保険会社のウェブサイトでひとつずつ見積もりを取ったりする方法もありますが、手軽に調べられるのは一括見積もりサイトを使うことです。
一括見積もりサイトは、インターネットから入力をするだけで複数社の見積もりが取れるため、手間も少なく合理的です。
また、見積もり結果から保険料の相場感がつかめるほか、保険会社ごとのサービスや補償内容の特徴も比較できます。選択肢を効率的に絞ることができるため、「自動車保険に加入するならどこがいいか」と悩む時間も減らせます。
ご自身にあった自動車保険を選ぶには、補償内容や特約、ロードサービスの内容、事故対応力など、さまざまな要素を把握することが大切です。補償内容の重複に注意しつつ、ご自身の状況に適した自動車保険を選びましょう。
また、自動車保険は、もしものときに備えて必ず入っておきたいですが、さまざまなリスクに万全に備えようとすると、保険料は高くなります。そのため、ご自身にとって必要性が低いと考えられる補償については条件を付ける、不要な補償や特約がある場合は外すなど、保険料をおさえるための工夫もしましょう。
これらの検討は、一見複雑で難しいと感じるかもしれません。しかし、一度取り組むと以後の保険料をおさえる効果があり、家計にゆとりをもたらします。時間があるときに一度、ご自身の自動車保険の補償内容を見直してみてはいかがでしょうか。
生命保険会社に約8年勤務後、住宅建築の建設会社に19年勤務。現在も建設会社で住宅取得資金や住宅ローンアドバイスを行う。また、ファイナンシャルプランナーとして、ライフプランをもとにした教育資金や自営業者の老後資金、保険見直しなどのアドバイスを行う。主婦・母・自営業の嫁・親の介護の経験を活かし、相談を受けている。
(地域密着型・お客様に寄り添うFP)
https://takasugi-fp.com
【保有資格】
CFP®(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー
※CFP®、CERTIFIED FINANCIAL PLANNER®、およびサーティファイド ファイナンシャル プランナー®は、米国外においては Financial Planning Standards Board Ltd.(FPSB)の登録商標で、FPSBとのライセンス契約の下に、日本国内においてはNPO法人日本FP協会が商標の使用を認めています。
※このページの内容は、一般的な情報を掲載したものであり、個別の保険商品の補償/保障内容とは関係がありません。ご契約中の保険商品の補償/保障内容につきましては、ご契約中の保険会社にお問い合わせください。
※税制上・社会保険制度の取扱いは、このページの最終更新日時点の税制・社会保険制度にもとづくもので、全ての情報を網羅するものではありません。将来的に税制の変更により計算方法・税率などが、また、社会保険制度が変わる場合もありますのでご注意ください。なお、個別の税務取扱いについては所轄の税務署または税理士などに、社会保険制度の個別の取扱いについては年金事務所または社会保険労務士などにご確認のうえ、ご自身の責任においてご判断ください。
( 掲載開始日:2021年12月28日 )
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