2017.03.21

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.4 (2/4)




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10:30 │ 浅草雷門/東京随一の観光地

バスストップ


/ASAKUSA-KAMINARIMON





―――次はどこ行くの?



スカイツリーを後にしてバスに乗っていると、ヤンニが尋ねてきた。




「浅草だね」

―――やった!浅草大好き!スウェーデンから家族とか友だちが遊びに来ると、必ず連れて行くんだ。


ヤンニ



うむ。
やはり浅草は、外国人ウケがいいらしい。


バス停「浅草雷門」に降り立ち、雷門に目をやると、自撮り棒を手に記念撮影にいそしむ観光客で溢れていた。





―――やっぱりスゴいなぁ!けど、“雷門”ってなんでこんな名前なの?

「雷門の正式名称は“風雷神門(ふうらいじんもん)”っていうんだよ。提灯の横に、ふたつ像が立ってるでしょ。向かって右側が風神で、左側が雷神だね」



前日に仕入れた知識を、訳知り顔に解説。

ちなみに、“雷門”と書かれた大提灯は、高さ3.9m、直径3.3m、重さは約700kgもあるようで、およそ10年ごとに新調されているらしい。
門と提灯自体は1960年に再建されたもので、寄贈者は当時の松下電器産業<現在のPanasonic>の創始者、松下幸之助。
膝の痛みに悩んでいた氏が、浅草寺に祈願したところ治癒したために、そのお礼として寄贈したらしい。
ゆえに、提灯の下部には、“松下電器”と刻まれている。


ヤンニ



―――せっかくですから、仲見世を通っていきません?私が浅草に来たらいつも行ってる揚げ饅頭屋さん、教えてあげますよ。



ん、これもしかしたら、比較的よくありがちな、案内する側よりも案内される側の方が実は詳しいパターンじゃないのか。
まあ、それはそれでいいとして、少し掘り下げてみよう。




「ヤンニ、浅草のどんなところが好きなの?」

―――え、こんな独特なところ、東京には他にないじゃないですか。古いものが残ってて、お店もたくさんあって、ワクワクしちゃう。



たしかに、鎌倉や京都まで足を伸ばせば、神社仏閣はたくさんあるわけだが、この浅草の浅草寺を中心とした町の雰囲気は国内でも唯一無二と言える。



「浅草には美味しいお店がいっぱいあるけど、日本食は好き?」

―――大好き!好きな日本食TOP3をあげるなら、ラーメン、寿司、天丼ですね。


小舟町大提灯



「なかなかガッツリ系だね。日本酒なんかも、イケるくち?」

―――好きですねぇ。普段飲むのはビールなんですけど、今日はよく働いた! ってときは、寿司とか刺し身をつまみながら、日本酒をちびちび呑んじゃいます。温泉に行ったりしたときも。

「それもう日本人の舌だね。しかも若干オジサン寄りの(笑)」

―――気付いちゃいました?よく言われるんですよね、オジサンぽいって(笑)。でも、日本酒は純米でいいやつじゃないとダメですね。

「じゃあまあ、お昼ちょっと早めに天丼でも食べちゃおう。この近くに有名なお店あるから」

―――超ウレシイ!!


ヤンニ




浅草寺の近くにある天丼の老舗、大黒屋天麩羅本店は、行列のできる店として有名だが、開店直後だったのかスムーズに案内してもらえた。

流れを考慮しつつ、オヤジノリに拍車をかける意味でも、天丼が来るまでビールを飲みながら待つ。





「逆に日本の食べ物で、コレないわ~って思ったのはある?」

―――パン屋さんに初めて入ったときはビックリしました。パンの中にソーセージとか、焼きそばとか、カレーとかいろんなものが入ってるから、何を買えばいいのか迷っちゃって。で、ソーセージも麺も何も飛び出してないし、普通の白パンに見えたから、メロンパンを買ったの。そしたらスゴい甘くて、またビックリした。

「面白いね(笑)。いわゆる惣菜パンとか甘いパンって、スウェーデンにないの?」

―――ないですね。基本的にパン屋さんで売ってるのは、食事と一緒に食べるようなシンプルなパンだけ。甘いのはパンじゃなくて、お菓子。ちなみに、シナモンロールってスウェーデン発祥なんですよ。知ってました?

おみくじ

おみくじを引く。“待ち人が来る”に半信半疑



「それは知らなかったね。スウェーデンってなると、IKEAとかVOLVOとか、日本でも人気のビッグネームしか思い浮かばないな。ムーミンはフィンランドだしね」

―――いえ、ムーミンの作者トーベ・ヤンソンは、フィンランドとスウェーデンのハーフですよ。

「あ、そう!?スウェーデン独特のカルチャーって何かある?」

―――フィーカって知ってます?

「知らない」

―――スウェーデンでは男の子が女の子とデートしたいときに『ご飯食べに行かない?』とか『飲みに行かない?』って誘うのは、ちょっと重いんですよね。けど、『フィーカしない?』だったらOK。

「なんか割と妄想が膨らむ表現だね」


ヤンニ



―――どんな妄想してるんですか?フィーカは、甘いものと一緒にコーヒーを飲みながら、コミュニケーションをとる時間のことです。

「なるほど、日本の『お茶する』みたいな感じ?」

―――う~ん、それとはちょっと違うんですよね。上手く翻訳できる言葉がないから、ニュアンスを伝えるのが難しいけど、例えば何か相談事があるときも『フィーカしよう』ってなるし、私がスウェーデンに帰ると、必ず友だちから『フィーカしよう』って連絡がくる。会社でも、金曜日の14時はフィーカの時間って決まってるところもあるくらい。そういう場合は14時になったら皆一斉に仕事やめて、1時間ほどゆっくりフィーカをする。まあ、その前にランチもしっかり食べてるんだけどね(笑)。そこではコーヒー飲むだけじゃなくて、コミュニケーションをとることが大事で、フィーカはスウェーデン人にとって欠かせない習慣。だから、スウェーデンのコーヒー消費量は、世界でもかなり多い方なんだよね。



12:30 │ 浅草一丁目/フィーカする?

バスストップ


/ASAKUSA-ICCHÔME




天丼で満腹になったはずなのに、せっかく浅草に来たわけだし、甘いものは別腹だし。
ということで、仲見世で揚げ饅頭と芋ようかんを購入。



もちろん浅草寺でお参りも済ませたので、次の場所へ向かうことに。


ヤンニ

以前一緒に仕事をしたという薬師丸ひろ子さんのブロマイドを見つけて興奮





「あ、ちょっとその前に、揚げ饅頭と芋ようかんでフィーカしようよ」

―――いや、その使い方はちょっと違うかな(笑)






いやはや、真の異文化交流は、だいぶ手ごわい。





◇写真:鈴木清美
◇構成:石井ミノル







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