2017.03.14

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.4 (1/4)

黒船ガールとバスさんぽ



日々変わり続ける大都市・東京。



知っているつもりでも発見の絶えないこの街は、

異国から来た彼女にどんな風に映るのだろう。



路線バスの発着地から終着地まで、

気ままにめぐる東京さんぽ。




S−1(錦糸町駅前-東京駅丸の内北口)都営バス



東京都墨田区は錦糸町。
そこは繁華街でありながら、下町風情も色濃く残る街。


東京の西側で暮らす人間にとってみれば、錦糸町辺りは同じ東京でありながら、どことなくディープな匂いがプンプンして、年季の入り方もカッコよく見えてしまうもの。
逆もまたしかりで、たとえ地理的には近くとも、根付く文化や慣習が土地の表情をガラリと変える。


そもそも外国人に、東京の東と西の微妙なアンビバレンスは、どう映るのだろうか。
冬と春の狭間で、そんなことを考えていた。


9:00 │ 錦糸町駅前/東の副都心

バスストップ


/KINSHICHÔ-EKIMAE


錦糸町駅南口のバスターミナル

錦糸町駅南口のバスターミナル、S−1が発着するのは北口



―――おはようございます!



ぼんやりしていると、後ろから声をかけられる。
振り向くと、金髪レディが人懐っこい笑顔でこちらを見ていた。




彼女はスウェーデン出身のヤンニ・オルソン。

ヤンニ



―――今日はどんなところに連れて行ってくれるか、すっごく楽しみです。ヤンニって呼んでくださいね。




第一印象からして、すでにいい。
春めく絶好の行楽日和が陽気なムードを助長する。





「よろしくね。じゃあ早速バス乗って、東京スカイツリーに行ってみよう」

―――スカイツリー、いいですね!




都営バスS−1系統は、“東京→夢の下町”という愛称のついた定期観光路線バスで、スカイツリーや浅草雷門、上野、日本橋、東京駅などの観光名所を走るお得感あるルートだ。
ただ、通常の路線バスと比べると本数が少なかったり、平日と土日祝でルートが多少変わったりするので、今回はS−1とルートが重なる路線バスも利用しながら進んでいくことにした。

ヤンニ



9:20 │ とうきょうスカイツリー駅入口/634メートルのランドマーク

バスストップ


/TOKYO-SKY-TREE-EKI-IRIGUCHI




―――うわっ、デカい!浅草から見ても相当大きいなとは思ってましたけど、近くに来るとまたスゴい迫力ですね。

「そうだよね。実はこんな至近距離で見るの初めてなんだよね」





停留所「とうきょうスカイツリー駅入口」でバスを降り、目の前にそびえるスカイツリーを仰ぎ見る。


その高さとダイナミズムに圧倒されるのに比例して、どんどん首が痛くなる。

東京スカイツリー



―――東京に遊びに来たのならともかく、東京に住んでいる人はなかなか来ませんからね。


東京暮らしがしっかり板についているような、ヤンニの一言。




「ところで、なんで日本に来たの?」

―――初めて来たのは10年くらい前なんですけど、その時は4歳上の兄と一緒に旅行で来たんです。もともと兄は友だちと中国に行く予定だったのに、友だちが行けなくなって代わりに私が誘われて、なぜか行き先も中国じゃなくて日本に変わってた。当時は日本をよく知らなかったんだけど、1ヶ月くらい旅行したら、すっかり好きになっちゃいました。

「どんなところが?」

―――大阪から入って、京都、姫路、奈良、福岡、別府、日光、東京といろいろ回ったんだけど、どこも現代的なものと歴史のあるもののギャップが面白いというか、共存してる感じがステキだなと思って。その時温泉にも初めて入ったんだけど、今でも大好き。その後スウェーデンに戻って日本語の勉強を始めて、旅行で毎年来るようになって。そのうち住んでみたいと思うようになって、日本の大学に留学して、今はモデルの仕事しながら暮らしてる。その間何度も日本とスウェーデンを行き来してるんだけど、実質的に住んでる期間は3年くらいかな。

ヤンニ



目をキラキラ輝かせ、日本の魅力を語る彼女を見ていると、素直に日本人としての矜持をくすぐられる。





「モデルの仕事はどんなジャンルが多いの?」

―――最近はアウトドア系のお仕事が多いです。たまに東京を出ると、日本の自然もスウェーデンの自然も一緒だなぁってホッとするんですよね。今度GARVYっていうアウトドア雑誌のウェブサイトでコラムの連載始めるので、よかったら読んでみてください。

「アウトドアはもともと好きだったの?」

―――そうですね。でも、私はヨーテボリっていう港町の出身で、スウェーデンの南の方には高い山がないから、登山はやったことなかったんです。日本に来て最初に富士山に登ってから、登山が大好きになっちゃいました。

北十間川

スカイツリーの建設とともに整備された北十間川



「初めて登ったのが富士山っていうのは印象深いだろうね」

―――それから、日本百名山っていうのがあることを去年知って、全部登ろうと決めたんです。まだ5つしか踏破してないから、少なくともあと5年はかかると思ってるけど。

「それは壮大な目標だね」

―――でも本当は私、高いところがあんまり得意じゃなくて。橋渡ったり、階段上ったりするだけでちょっと怖いぐらいからのスタートだったし、正直こんなにハマるとは思わなかった。まあ、今でも山頂で景色眺めたりするとちょっと怖いけど(笑)。あとはね、ボルダリングも趣味でやってる。とにかく身体を動かしてないと落ち着かない。小さい頃は13年カンフーやってたし。

「え、カンフー?」

―――そう。子どもの頃、ブルース・リーやジャッキー・チェンのカンフー映画を兄とよく観てて。香港はまだ行ったことないんですけど。

「スウェーデンでカンフー習うって普通なの?」

―――いえ、空手とかキックボクシングを習う人はまあまあいるけど、カンフーは珍しいですね。今もアクション教室に通ってるけど、ワイヤーアクションすっごい楽しいよ!最高!(笑)

ヤンニ





なんともアクティブ。




そう、アクティブな季節が、もうすぐそこにある。





◇写真:鈴木清美
◇構成:石井ミノル







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