2016.12.14

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.2 (2/4)




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10:30 │ 京急蒲田駅/環八通りを東へ

バスストップ


/KEIKYU-KAMATA-EKI



バスは京急蒲田駅から日ノ出通りに出た。


JR蒲田駅周辺の雑多な感じとは異なり、日ノ出通り(環八通り)は道幅が広く、開けた雰囲気だ。


サラフィナ



X JAPANのhideと石ノ森章太郎が好きというサラの振り幅に圧倒されながらも、俄然興味も湧いてくる。

車内が空いているのをいいことに、彼女を質問攻めに。




「それにしても、日本に8年も住んでるって長いよね」

―――最初は2、3年住んで日本語を勉強して、上手く話せるようになったらアメリカに戻って通訳になろうと思ってたんです。でも3年経ったくらいで気づいたら英語を話す友だちしか周りにいなくて。日本語を話さなくても日本で暮らしていけるような状態になっちゃってて。これはよくないと、もうちょっと勉強しようと思ったら、8年経ってましたね。

「はしょりすぎてるね(笑)それで、今も日本語の勉強はやってるの?」

―――はい、日々勉強です!




サラの話す日本語は、程よく丁寧で自然。
そのうえ話すだけでなく、読み書きもある程度は出来るという。


サラフィナ



「モデルの仕事はいつから?」

―――16歳からです。当時も、日本とか韓国に仕事で来たことがあるんですよ。あとは日本のブランドがアメリカでファッションショーをやるときに、日本語を少し話せたからモデルに選ばれたりもしてました。最近はモデル以外にも、日本のミュージシャンのために英語の歌詞を書く仕事も時々やってます。

「へぇ、そういう仕事もあるんだね」




そんな話をしているうちに、バスはあっという間に次の目的地に到着。


10:45 │ 糀谷駅/下町風情漂う商店街

バスストップ


/KÔJIYA-EKI



サラフィナ



バス停「糀谷駅」で降り立ち、糀谷(こうじや)商店街へ。


このエリアについて、ちょっとだけ説明しておこう。

今回バスで巡っている大田区は、昭和22年に大森区と蒲田区が合併した際に、それぞれから一文字取って誕生した。
江戸時代には、この辺り一帯は農漁村で、糀谷や羽田地区では海苔の養殖が盛んに行われていたらしい。
綺麗に整備された環八沿いの風景を見る限り、農漁村とか海苔の養殖とか言われてもイメージが湧きにくいけれども、糀谷商店街は少々趣が違っていて、下町の風情が漂っている。
和菓子屋、おでん種がズラリと並ぶ練り物屋、駄菓子屋、理髪店、スナックなど、古きよき商店街になくてはならない店が揃っている感じがいい。

サラフィナ



「日本の食べ物で一番好きなのは?」

―――そうですねぇ、お吸い物かなぁ。



おっと、さすがは8年選手だ。




「じゃあ、好きな寿司ネタは?」

―――炙りえんがわ。

「だいぶカッコいいね(笑)」

―――日本に来て魚が好きになったんです。あん肝も好きで、これからの時期、やっと食べられるからすごく楽しみです。あと、鮎の塩焼きが大好きです。高級なところも含めて、いろんなところで食べたけど、フジロックフェスで売ってた500円の塩焼きが、今までで一番おいしかったですね。




炙りえんがわ、あん肝、鮎の塩焼き。
外国人、そして若者らしからぬ激渋チョイス、恐れ入る。


魚の話をしていると、偶然にも鮮魚市場の前を通りかかり、吸い込まれるように中へ入る。


糀谷商店街の鮮魚市場で、キンメダイの目にビックリ

糀谷商店街の鮮魚市場で、キンメダイの目にビックリ



―――うわっ!こういうところ、久しぶりに来ましたっ!



豊富な魚と活気溢れる店内に、クールなサラが興奮する。




「和食も作ったりするの?」

―――作りますよ。サラ風和食ですけどね。お味噌汁は自分で作るし、天ぷらを揚げたりもします。あとは、一回だけですけど、かまぼこも作ったことありますよ。できれば味噌を自分で作ってみたいんですよねぇ。




なるほど、オーケー、分かった。
サラ風和食、レベル高すぎ。


11:50 │ 観音堂脇/公園で寿司ランチ

バスストップ


/KANNONDÔ-WAKI



鮮魚市場で寿司やお惣菜などをたっぷり買い込み、バス停「観音堂脇」から徒歩数分の萩中公園へ。


天気もいいことだし、ピクニック気分でランチをすることに。
アジに、焼きサバに、えんがわに、青空の下で食べる寿司は最高だ。

大好物の寿司を頬張る

大好物の寿司を頬張る



「でも、8年も日本に住んでて、たまにアメリカに帰るとどんな感じ?」

―――逆カルチャーショックを受けますね。

「たとえば?」

―――“空気を読む”が通じなかったりとか。


大好きだという柳の木と戯れる。表情も自然と穏やかに

大好きだという柳の木と戯れる。表情も自然と穏やかに



「そうなんだ。最初会ったときから、日本人っぽい雰囲気は感じてたよ」

―――アメリカ人の友だちとおしゃべりしてて、時間がないときに「ちょっと忙しい」って言ったりすると、「ちょっと!? じゃあ、ちょっとは時間あるんでしょ!?」ってそのまま話を続けられたりしますね(笑)。あと、英語が出てこない自分に驚きます。「なんか飲む?」って普通に日本語で言っちゃったりして。「What?」って聞き返されて、「Do you wanna drink?」って言い直したりとか。




その他にも、“コンビニ”や“スーパー”などの和製英語を違和感なく使っていたり(※コンビニ:convenience store、スーパー:supermarket)
今や寝言も日本語なのだとか。


電車?トラック?

萩中公園の“ガラクタ公園”には、使い古されたいろんな乗り物が展示されている。サラがクールだというのはそろそろ撤回しようか



―――最後のエビ、どうぞ。



お皿に寂しそうに残っていた“遠慮のカタマリ”を、ジャパニーズナイズされたアメリカ人に勧められてしまった。





◇写真:鈴木清美
◇構成:石井ミノル







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