2016.11.07

黒船ガール×路線バス:CITYSCAPE vol.1 (2/4)




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10:10 │ 数寄屋橋/姿を変えて架かる橋

バスストップ


/SUKIYABASHI



有楽町からわずかな距離ではあるが、バスに乗って数寄屋橋へ。


さっきまでいた薄暗いガード下とは異なる都会らしい開けた景色を、ジェリーは車窓から眺めている。



一度は消え、高速道路として生まれ変わった“橋”

一度は消え、高速道路として生まれ変わった“橋”



数寄屋橋というだけに、ここには昔、江戸城の外堀を渡る橋が架かっていたそうだ。

そもそも“数寄屋”は茶室を意味するが、一説によると織田信長の実弟で、千利休にも学んだ茶人・織田有楽斎長益(おだ うらくさい ながます)がこの辺りに住んでいて、数寄屋をいくつも建てたことが語源になっている。


外堀は1964年の東京オリンピックが開催される数年前に埋め立てられ、同時に橋もなくなってしまった。
来る2020年に再びオリンピックを控えた東京は変化の真っ只中にあるが、今観ている風景がなくなっているかもしれないと考えると少しばかり感傷的になってしまう。


しかし、橋は完全になくなってしまったわけではない。
現在この地には、“新数寄屋橋”なるものが架かっているからだ。




―――どこに橋があるの?

尋ねるジェリー。




「ジェリーの頭の上だよ」



彼女が見上げる視線の先には、高速道路が走っている。
時代が変われば橋の概念も変わるということに感動を覚えつつ、数寄屋橋という名をこんな形で残そうとした人の粋を感じた。


10:30 │ 銀座四丁目/大都会のエアポケット

バスストップ


/GINZA-YONCHÔME



曜日を問わず、時間を問わず、いつも賑わい、そしてキラキラと輝いている街、銀座。

賑わっているのは相変わらずだが、外国人の姿はここ数年で明らかに多くなっている。


それでもジェリーはかなり目立つようで、露骨に凝視したり、振り返る人が後を絶たない。
彼女自身、そんな好奇な目にさらされることにはすっかり慣れてしまったのか、あるいはモデルをやっているだけに見られるのもある種の快感なのか、意に介する様子は全くない。



高級店が軒を連ね、客を選ぶような街にも、連れて行きたいところがある。
ある意味では、非常に銀座らしいとも言える場所。


銀座四丁目の交差点を走るバス

銀座四丁目の交差点を走るバス



その異空間は、松屋銀座の裏手にひっそりと佇む。
ビルの一角に設えられた、赤い鳥居。


銀座の表通りから外れて細い道を歩いていると、こうした数畳分ほどのこぢんまりとした神社に出会うことが度々あるが、朝日稲荷神社はさらにちょっと変わっている。

通りに面したところにあるのは拝殿で、通常の形式ならその奥に本殿があるものだが、朝日稲荷神社は同じビルの屋上に本殿が鎮座しているのだ。
地上の拝殿と屋上の本殿はパイプで繋がっていて、その中に土を詰めて無理やり地続きにしているだけでなく、拝殿にはマイク、本殿にはスピーカーが設置され、地上にいながら本殿もお参りできる設計になっている。


日本有数の地価を誇る銀座を守り続けてきた神社らしい知恵が凝縮されているというわけだ。


銀座三丁目のビルの屋上にある朝日稲荷神社を参拝

銀座三丁目のビルの屋上にある朝日稲荷神社を参拝



エレベーターで8階へと上がり、さらに非常階段をのぼると、ビルの谷間に本殿がある。

思いがけず現れた光景に、目を輝かせるジェリー。




「お寺とか神社は好き?」

―――好きだよ。スピリチュアルなものが好きっていうか、スピリチュアルな感覚を大人になっても大事にしてる日本人が好き。


「どういうこと?」

―――フランスだと大人が幽霊を信じてるなんて言うと、子どもっぽいってバカにされちゃうからね。日本はそんなこと言っても変に思われないし、別に普通でしょ?


「そうかもしれないね」

―――水木しげるの妖怪なんかもすごく好き。見た目がかわいいっていうのもあるけど、妖怪って、こういうことはしちゃダメっていう教訓があるでしょ。それがステキだなって。




たしかに彼女の見解は鋭い。
こんな風に妖怪や幽霊を褒められると、日本人として誇らしくなってしまう。


朝日稲荷神社




神社を参拝したあと、バス停に向かいながら再びトーク。




「ジェリーは東京でどの街が好き?」

―――下北沢とか新宿かな。




彼女の意外な発言には、いい加減驚かなくなってきたけれども、またしても斜め上を行くディープな答え。




―――新宿は皆危ないって言うけど、全然そんなことないよ。私が住んでたフランスの方がよっぽど危ないよ(笑)


「でも、どんなところが好きなの?」

―――人間らしい街って感じがするから。逆に表参道みたいなスノビッシュなところは、あまり好きじゃないな。日本に来て最初の3ヶ月は大阪に住んでたんだ。だから大阪行くと、今でも“ただいま”って気持ちになるの。大阪はロックな感じがして好き。アメリカ村は90年代のファッションが残っててカッコいいし。


歌舞伎座には「入ったことはあるけど観たことはない」とジェリー。いつか観劇するのが夢

歌舞伎座には「入ったことはあるけど観たことはない」とジェリー。いつか観劇するのが夢



スノビッシュが嫌いで、古いものや人間らしいものが好きというのが、またいい。
話を聞けば聞くほど、一見クールな彼女のパーソナリティに興味が湧いてくる。




―――大阪って外国人はそんなに多くないけど、普通に扱ってくれる感じが居心地がいいの。京都とか奈良を歩いてると、当たり前のように観光客だと思われちゃうからね。本当は日本に住んでいてもね。


東銀座にあるバナナジュース専門店で

東銀座にあるバナナジュース専門店で





日本に遊びに来ているわけではなく、ちゃんと暮らしているプライドと覚悟のようなものが垣間見えてドキリとした。



◇写真:鈴木清美
◇構成:石井ミノル







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